ウソをつくわたしとヨダレ垂らすイヌ
めくるめく八月の何もない夜
いつものようにいつもの時間に起きる。いつものリズムでタンタンと
仕事にいく準備をするがいつもと何かがちがう事を体ではなく感覚が
悟っている、そんな気がした。
全ての用意を整えエブリリトルシングのあの冬の歌を口ずさみながら
クローゼットからデタラメな柄のジャケット手に取った時にハッとした。
開けっ放しの窓から吹込む風がいやらしい色の口紅のついた吸い殻を
運ぶのはそれから5分後のことだった。
赤い屋根は遠くの方からでも目に付くからと言う理由でその赤い屋根の
隣に住む事にした。赤い屋根の住人とは一度もお目にかからないうちに
あの娘は黄色いスカートを穿いてどこかへ行ってしまった
近いようで遠いどこかへ。
習慣とは怖いもので、何かが欠けてしまいそうな時はあの赤い屋根を
眺めてしまう。
15段しかないこの階段を全部あがりきる頃には息が少しだけきれていた、
鼻の下に少し汗をかき、額からはめんたいこの匂いがほんのりとしていた。
なんだかやになっちゃうわ。