放課後の向うがわⅡ-12


「理事長。
 すっごく綺麗ですよ。
 男の人だったら、今の姿見るだけで、射精しちゃうかも」

 理事長は、あけみ先生に嬲られても、もう声も出ないようだった。

「どーれ、写真の出来はどうかな」

 先生は、わたしの持つカメラから、フィルムを抜き取った。

「いい感じじゃない。
 なんか、別世界の人みたい。
 ほら」

 印画紙の中に、理事長の姿が貼り付いてる。
 昔の人が、魂を吸い取られると思った気持ちが、良くわかった。
 二次元の世界に閉じこめられた理事長は、まるで魂のコレクションみたいだった。

「理事長、ご覧になります?
 ほら」

 あけみ先生が、理事長の顔の前にフィルムを翳した。
 理事長は、苦しい息の中で、新月のような目を開いた。
 細く覗く瞳が、小刻みに震えてる。

「やめて……。
 撮らないで」
「どうして?
 こんなに綺麗なのに。
 逆さまになると、人は綺麗になるのかしら?
 理事長、今まで見た中で、一番綺麗ですよ。
 もう、犯しちゃいたいくらい。
 あの現場監督が見たら、あっという間に暴発ね。
 理事長。
 ほんとは理事長も、あの監督に興味があったんじゃありません?
 浅黒くて、引き締まってて。
 興味がありすぎて、逆にあんなにツンケンしちゃったのかしら?
 ふふ。
 子供みたい。
 ほんとは、無理難題を投げつけて、背を向けて帰るとき……。
 背中に、監督の視線を感じてた。
 衣服を灼くような熱い視線を。
 で、理事長室に帰ると……。
 もう我慢出来ない。
 監督の視線に灼かれた衣服が、我慢出来ないほど熱い。
 もちろん、その場に脱ぎ散らかすわ。
 一糸残らず」

「全裸になりたくて、しょうがないのよね。
 だって、そんなに素敵な身体してるんですもの。
 わたしだったら、見せたくて見せたくて、どうしようも無いかも。
 きっと、ストリッパーになってるわね。
 理事長も、ほんとはそうなんじゃありません?
 この学園、経営が苦しいんでしょ?
 いっそ、何もかも無くして、身ひとつになって……。
 落ちるとこまで落ちたい。
 そんな気持ちもあるんじゃありません?」

 あけみ先生は、腰をかがめ、理事長の顔を覗きこんだ。
 理事長の目は、再び閉じてた。
 耳の後ろから頬に貼り付いた髪が、震える目元まで届いてる。

「ほんとに可愛い。
 舐めちゃいたいくらい」

 あけみ先生の口から、舌が零れた。
 驚くほど長い舌だった。
 口から内臓が出てきたみたい。
 厚みのある舌が宙を舐めながら、理事長の顔に近づく。
 もちろん、先生が顔を近づけてるんだけど……。
 わたしには、舌だけが伸びてくように見えた。

「あ」

 理事長の身体が、小さく跳ねた。
 あけみ先生の舌が、頬に届いたの。

「まぁ、敏感。
 お顔まで性感帯なのかしら?」
「……、止めて」
「ふふ。
 ほんとは、舐められるの、大好きなくせに。
 知ってるのよ、わたし。
 でも、ま、いいわ。
 お楽しみは取っときましょう」

 あけみ先生は屈めてた腰を伸ばすと、理事長の顔を見下ろした。
 理事長の頭は、先生の股間をまともに見る位置で逆さに下がってる。
 いったいどんな気持ちで、股縄に括られた股間を見てるのだろう。
 苦しくて、何が見えてるかわからなかったかも知れないけど。
 その理事長の頭を、あけみ先生の両手が包んだ。

「不思議よね。
 普段見慣れてるものでも、角度を変えるだけで、こんなにも違って見えるんだもの。
 こうして見ると、人の頭って、穴だらけよね。
 ま、骨格模型を眺めれば、当り前なんだけど。
 わたしが男だったら……。
 この穴、ひとつずつに、ちんぽ突っこむかも。
 でも、気持ちいいのは、口だけよね。
 ていうか、ほかの穴には入りっこないか。
 鼻の穴なら、なんとかいけるかな。
 やっぱ、骸骨の方がいいかも。
 女性の頭蓋骨を犯す女性。
 絵にならない?
 ほら、牡丹灯篭。
 相手の女性、お露さんだっけ?
 新三郎の元に、夜な夜な通ってくる。
 お露さんは、この世のものじゃなかったのよね。
 なら2人は、どうやってヤッてたのかしら?
 きっと、新三郎は、お露の頭蓋骨を犯してたのよ。
 だって、おまんこの位置には、穴なんて無いんですもの。
 骨盤の穴じゃ、大きすぎるものね。
 その点、頭蓋骨なら、手頃な穴がたくさん空いてる。
 そのひとつひとつに、ちんちん突っこんで……。
 思い切り射精してたのよ。
 一晩に、何回も。
 それじゃ、精を吸い取られるはずだわ。

 あ、そうそう。
 忘れてた。
 理事長室での、一人エッチの話が、途中でしたわね。
 現場監督の視線で燃えあがった身体を、ひとりで慰めるお話。
 どう?
 ほんとに、してたでしょ?
 オナニー。
 まぁ、首なんか振って、素直じゃないわね。
 したに決まってるわ。
 素っ裸になって。
 そうそう、あの黒いソファーでやったのよ。
 背もたれの高い、フカフカのソファー。
 女王様みたいにそこに座って、わたしに命令してくださいましたよね。
 考えてみれば、あのソファーって、オナニーに最適じゃないかしら。
 もちろん、背もたれに包まれるように座って……。
 両脚は、大開脚。
 思いっきりおっ広げて……。
 中心の、熟れ崩れたまんこを、欲しいままに嬲りたおすわけね。
 はしたない声を、噴水みたいにふきあげながら。

 どんなヤラシイ場面を想像してるのかしら。
 そうね……。
 きっと、現場監督に縛られちゃってる場面だわ」

 場所は、半分廃屋みたいな倉庫。
 工事用の資材なんかが、乱雑に投げこまれてる。
 組み立てられたままの、鉄管の足場とか。
 可哀想に……。
 拉致されて、連れこまれちゃったのよね。
 で……。
 その、ジャングルジムみたいな足場に、縛りつけられてるの。
 大股開きで。
 そう、ソファーの格好と同じね。
 同んなじ格好を想像してるわけ。

 頭の中のシーンでは……。
 足首を吊るされて、両脚は頭より高く上がってる。
 宙吊りよ。
 もちろん、両手は後ろで束ねられてるから……。
 恥ずかしい姿は、隠しようもない。
 肛門まで、白日のもとに曝してる。

 そこに、現場監督の登場。
 理事長のあまりにも身勝手な言動に、ついに切れちゃったのね。
 で、ついに直接行動に出たわけ。
 吊るされながらも、「こんなことしてタダで済むと思うの!」とか、毒づいたでしょうね。
 もちろん監督だって、タダで済むとは思ってないわ。
 だからこそ、溜まりに溜まった思いの丈を、存分にぶちまけようとしてる。

 監督が、理事長の目の前で作業ズボンを脱ぐ。
 作業着の裾から覗くブリーフは、スパナを呑んだように膨れてる。
 それを見た途端、理事長の口から雑言が途絶えた。
 視線は、白い稜線に釘付けになる。
 その視線を確かめながら、監督はブリーフを捲り下ろす。
 転げ出すわ。
 生々しく太い一物が。
 地面から生えた子供の腕みたいに、天を指して突きあがってる。
 膨れた亀頭は、子供が握った拳のよう。
 張り詰めた表皮に窓からの光が映り、てらてらと照り輝いてる。
 黒々と穿たれた射出口が、びくびくと鼓動してる。
 そこから噴き出す精液を想像しただけで……。
 理事長のまんこは、溶け崩れそうになる。
 雫を垂らすまいと、懸命に肛門を締める。
 でも、内襞も一緒に絞られて、ヤラシイ感覚が一層高まってしまう。

「ぐ」

 歯を食いしばって、表情を殺す。
 欲しがってる顔なんて、絶対できないものね。

 でも、興奮しきってる監督は、理事長の本性にまでは気づいてない。
 灼けた鉄棒みたいな陰茎を握りしめ、にじり寄ってくる。

「来ないで!」

 理事長の悲鳴は、陰茎に対する恐怖じゃない。
 イヤらしく溶け崩れてるまんこを、見られたくないから。
 もちろん、監督が言うこと聞くわけないわ。

「あんたを犯すことを、何度想像してきたことか。
 その澄まし切った顔に、精液をぶち撒ける夢を、何度見たことか」
「こんなことして、タダで済むと思うの!」
「もちろん、思わないよ。
 だから今日は、存分にさせてもらう」

 監督は、握りしめた陰茎を、ゆっくりと押し下げる。
 亀頭から発せられるレーザー光が、理事長の額から正中線を灼き下がってくる。
 青龍刀のように反り返った陰茎が、青眼の位置に定まった。
 膨れた射出口から、スパイラルが覗いてるようにさえ見えた。

「くく」

 我慢し切れずに垂れた雫が、会陰を伝い肛門に届くのがわかった。
 知られてしまう。
 こんな格好にさせられながら、イヤらしく興奮してることが。
 ここで理事長は、信じられない行動に出た。
 腹筋をプルプルと震わせると……。
 尿道口を開いたの。
 排尿を始めたのよ。
 つまり、まんこのヌラヌラを、おしっこで隠そうとしたわけ。
 おしっこを見られるより、性癖を悟られる方を恥と思ったのね。
 誤算は、思いのほか大量のおしっこが噴き出したこと。
 膀胱が膨れたまま拉致されたのね。
 おしっこは、天井に向けて噴きあげ、放物線を描いた。

「あっ」

 監督は、思わず飛び退った。
 おしっこが、コンクリートの床を叩く。
 サイダーみたいな飛沫が、監督の毛脛に黄色い玉を結ぶ。
 それを一瞬見下ろした後……。
 監督は、放物線の奇跡に脚を踏み入れた。
 理事長の体内を巡った重たい液体は、数珠玉を連ねたように宙に放たれ……。
 窓からの明かりを映して輝き……。
 監督の陰茎に降り注ぐ。
 監督は、陰茎を扱きながら、満遍なくしぶきを塗りたくる。
 水流は、まだ止まらない。


本作品のモデルの掲載原稿は以下にて公開中です。
「結」 「岩城あけみ」

《説明》
杉浦則夫の作品からインスピレーションされ作られた文章作品で、長編連載小説のご投稿がありました。(投稿者 Mikiko様)
本作品は7/13まで連続掲載、以後毎週金曜日に公開される予定となっておりますので、どうぞお楽しみに。
前作を凌ぐ淫靡と過酷な百合緊縛!「川上ゆう」さん、「YUI」さん登場予定作品です。
時を越え、再び出会った美里とあけみ。現在に戻った美里は、さらなる花虐へと誘われていく…。