先生は、長い旅から帰ったように、ほっと息を継いだ。
「理事長。
いかがでした?
面白い話だったでしょ?」
「お願い……。
もう、下ろして……」
「乗りの悪い人ね。
長話したら、ノド乾いちゃった。
理事長。
プールのお水、ちょっといただきますわね」
あけみ先生は、水槽を抱えこむように、その場にしゃがみこんだ。
折り畳まれた両脚は、水槽を挟んで大きく開いてる。
相臀の尖りが床を指し、Wの文字を象ってる。
その中央を、区画線のように縄が渡ってた。
先生は、両手を水槽の縁にかけ、顔を水面まで突っ伏した。
水を飲んでるらしい。
お尻が少し上がり、股間まで覗けた。
捲れあがった陰唇が、縄を咥えこんでる。
猿轡された口元みたいにも見えた。
「ぷふぁ」
先生が、ようやく顔を上げた。
「あー美味しい。
ちょっとだけ、理事長のお化粧の味がしますけど」
先生は水槽を抱えたまま、理事長を見上げた。
「理事長も、お飲みになります?
ノドが乾いたでしょ?」
理事長は、顔を歪めただけで応えなかった。
「素直じゃないわねぇ」
先生は、声とともに起ちあがった。
両手が押し離した水槽が、水面を揺らすほどの勢いだった。
「嫌でも飲んでもらいますわ。
でも、一回頭が沈んだせいで、だいぶ水が減っちゃったわね。
ちょっと足そうか。
美里ちゃん、水道。
あ、待って。
いいこと、思いついた。
美里、こっち来て。
あなた、おトイレ行きたくない?
おしっこよ。
出ない?
仕方ないわね。
じゃ、わたしがしようか。
水飲んだら、少し催したみたいだし」
先生は、その場で股縄を解き始めた。
「股縄で不便なのは、おトイレなのよね」
そう言いながらも、先生の指先は滞りなく動き、瞬く間に縄は解かれた。
白い肌には、縄目がくっきりと印されてた。
先生の手の平からは、縄が、呪文が解けたみたいに下がってる。
先生は、無造作に縄を束ねると、自らの首に掛けた。
縄の首飾りを下げた先生は、古代の女王のようにも見えた。
「さてと。
どうしようかな。
おトイレはあるんだけど……。
邪魔者がぶら下がってるのよね。
美里、ちょっと水槽押してみて」
満々と水を湛えた大きな水槽は、ちょっと押したくらいでは動かなかった。
「ダメみたいね。
いいよ。
無理に動かしたら、また戻すのがタイヘン。
邪魔者は、わたしが抱えればいいんだから」
先生は、水槽ににじり寄ると、理事長の身体を抱えた。
「ふふ。
暖かい。
理事長、生きてますね。
人肌って、どうしてこんなに愛しいのかしら」
先生は、水槽を跨ぐ形で歩を進めた。
理事長の身体が斜めに傾ぎ、頭が水槽を外れた。
代わりに、先生のお尻が水槽の真上を占めた。
「理事長、そんなに動かないの」
理事長は、懸命に首を動かそうとしてた。
だって、顔が、先生の股間に埋もれたから。
「そんなに動かないでって。
また、気分出ちゃうじゃありませんか。
暴れると、このまま出しちゃいますよ」
暴れるなと言っておきながら、先生は理事長の頭を両腿で挟みこんだ。
真後ろに立つわたしには、先生のお尻から、理事長の額が覗いて見えた。
大人を産み落とす、グロテスクな出産シーンのようだった。
「あー。
このまま、後ろから犯されたら最高よね。
美里、あなた、ちんぽ持ってない?
わたしが魔法使いだったら、すぐさまあなたにちんぽ生やすんだけど。
あぁっ。
理事長、顔動かさないでって。
感じちゃうじゃないの。
ほんとに、このまま出しちゃおうかな。
ほほ。
うそうそ。
だから、そんなに暴れないの」
先生は、理事長を抱えたまま、ゆっくりと腰を落とす。
理事長の額が、先生のお尻に隠れた。
「美里、前回って。
位置を見てちょうだい。
ちゃんと便器に、照準合ってる?」
言われるままに、理事長の背後に回る。
後ろから見たオブジェは、いっそう異様なフォルムだった。
先生の上体は、理事長の体に隠れ、ほとんど見えない。
でも両脚が、理事長の頭から、左右に開いて出てる。
一瞬、千手観音の姿が脳裏に浮かんだ。
手じゃなくて、脚を頭から生やした観音様。
「どう?
合ってる?」
見えなかった。
黒い瀧のように落ちる髪が、先生の股間を隠してたから。
「髪が……」
「あ、そうか」
先生は、理事長の頭を探ると、髪を束ねて持ちあげた。
「あ」
見えた。
お臍は、理事長の頭に隠れてたけど……。
下腹部の中央を真っ直ぐに下りる縄目の跡は、くっきりと見えた。
そして、その下。
さっき縄を解いたときには、萎んだ花のようだった陰唇が……。
捲れあがって開いてた。
湯煎した肉のような襞々から、雫が垂れてる。
真っ赤な膣前庭まで覗いて見えた。
「どうよ?
位置」
「あ……、いいと思います」
「ちゃんと見ててよ。
わたしのおまんこが、おしっこ出すとこ」
先生の太腿に、強張りが走った。
膣前庭がうねり、黒々と穿たれた尿道口が、息づくように膨れた。
刹那……。
溶け崩れた花芯が、水流を噴き出した。
水流が水槽の縁を叩き、プラスチッキーな音が立った。
先生は、すぐさま腰を引き、角度を調節した。
音は、水が水を穿つ、くぐもった響きに変わった。
水の柱が、水中に突き刺さってる。
生まれた無数の小さな泡が、先を争って水面に向かった。
透明なフレーム越しに見えた、不思議な水の饗宴。
でもそれは、あっという間に終わった。
「あー、出た。
どう?
ちょっとは、色、着いて見える?」
あけみ先生は、理事長を抱えたまま上体をひねり、水面を覗きこんだ。
「ほとんど、わかんないわね。
こんなことなら、アリナミン飲んどけば良かった。
ビタミンB2剤飲むと、おしっこが黄色くなるの知ってる?
栄養ドリンクでもいいのよ。
おしっこプレイするときには、やっぱり濃いヤツがほしいものね。
ま、出しちゃったものは、しかたないっと」
先生は、理事長を抱えながら後退した。
理事長の身体が鉛直になったところで、身を離す。
位置の戻った反動で、理事長はふらふらと揺れた。
「あー、気持ちいぃ。
おしっこの雫が、太腿の内側を伝うのって、ほんとゾクゾクものよね。
虫が這ってるみたい。
美里も今度、やってごらん。
パンツ穿かないでトイレに行けばいいのよ。
でもって、拭かないで起ちあがる。
ツツーって、雫が伝うから。
背筋までゾクーって来る。
駅のトイレとかがいいのよ。
その後、太腿を濡らしながら街を歩くの。
雨の日なら……。
トイレ使わないで、歩きながらおしっこしてもいいわ。
地面が濡れてるから、ぜったいバレないわよ」
先生は、膝を割って開いてた両腿を、ぴったりと閉じた。
両膝が着いた。
足先は少し開いたままだったから、下半身は細身のX型に窄まった。
先生は、お尻を突き出すようにしながら、両腿を摺り合わせ始めた。
「あぁぁ、いぃ。
おまんこが、いくらでも雫を垂らすわ。
このままイッちゃえそう」
上体を屈めた先生は、顔だけ持ちあげ、理事長を見た。
「でも……。
お待ちかねですよね。
あんまり、待たせちゃ悪いから……。
お楽しみは、取っときましょう」
先生の両脚が、真っ直ぐに伸びた。
スカートの似合いそうな、綺麗な脚だった。
その脚で踵を返すと、先生は作業台の脇に戻った。
「理事長。
わたしのおしっこ入りのプール、味わっていただきますよ」
先生は、手を掛けたハンドルを、ゆっくりと戻した。
吊るされた理事長が、下がっていく。
理事長は顔を歪め、腹筋を使って上体を起こそうとした。
そこで、理事長の下降は止まった。
先生を振り返ると、ハンドルの手が止まってた。
慈母のようにも見える微笑みを湛え、じっと理事長を見てる。
「く……」
理事長の体側に浮きあがった腹筋が、さざ波を立て始めた。
「あぁ」
力を使い果たした上体が戻り、理事長は真っ直ぐに下がった。
その瞬間を、先生は逃さなかった。
ハンドルが一気に廻り、理事長の頭は水没した。
「ごぼ」
理事長の腹筋が、再び収縮したけど……。
もう、間に合わなかった。
水没した顔面はフレームに阻まれ、逃げ道は無かった。
はかない抵抗を、2,3度繰り返した後……。
理事長の腹筋が伸びた。
耳の下まで浸かった顔が、わたしの方を向いてた。
両目は、筆で描いたように閉じてる。
上唇は捲れてた。
齧歯類みたいな綺麗な白歯が覗いてる。
背中から見える手の指は、眠る赤ん坊のように空気を握ってる。
本作品のモデルの掲載原稿は以下にて公開中です。
「結」 「岩城あけみ」
《説明》
杉浦則夫の作品からインスピレーションされ作られた文章作品で、長編連載小説のご投稿がありました。(投稿者 Mikiko様)
本作品は毎週金曜日に公開される予定となっておりますので、どうぞお楽しみに。
前作を凌ぐ淫靡と過酷な百合緊縛!「川上ゆう」さん、「YUI」さん登場予定作品です。
時を越え、再び出会った美里とあけみ。現在に戻った美里は、さらなる花虐へと誘われていく…。