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少子化の影響で、この学校でも年々、空き教室が増えている。取り壊しの決まっている旧校舎を閉鎖してなお、二棟ある本校舎の内、一棟の三階四階の大部分が使われていなかった。
遙が林田によって引きずり込まれたこの教室は、旧校舎からの引越しの際に出た不用品の一時保管場所となっていた。学校机や椅子だけでない。古い体育マットもあった。この春完成したばかりの新校舎へ引越しした、保健室の古い什器や器具を中心に、雑然と置かれている。そして、何かの作業で使ったのであろう、竹棒や麻縄も見えた。これらは来年、旧校舎の取り壊しと共に、廃棄されてしまう運命にある。
普通の人間にとっては、何の変哲も無い空き教室の光景。しかし、ある性向を持つ者に掛かれば、情欲を掻き立てるに充分な空間だ。従って、林田が卑俗な妄想の中で、遙を凌辱する舞台も、この場所である事が多かった。
男にとって幸運だったのは、空き教室が、女子更衣室の隣に位置していた事だ。盗撮カメラは電波で映像を飛ばすタイプのものだったが、録画機を設置するのに、隣接した部屋は都合が良い。しかも、隠す場所が幾らでもある。彼は、数々の赴任先でこの犯罪行為を行ってきたが、これほど仕事し易い環境は他に無かった。
早速、空き教室の鍵の管理を申し出た。転勤早々で、訝しがられやしないかと思ったが、あっさり了承される。すでに、全く使われておらず、不用品置き場と化した空き教室の鍵の係りなど、関心を示す者など無い。スペアキーは事務室にあったが、念のため、ここの鍵だけは、隙を見て別のものにすり替えた。同時に、無許可で内鍵を設置する。これで、万一にも作業中、誰かが入って来る事は無い。保管されている什器類を廊下側に移動し、窓を塞いだ。外から中を伺えないと同時に、多少の防音効果も期待する。
以降、教室は完全に彼の占有物となっていた。そのうち頑丈な支柱を設置し、新たな犠牲者を恥ずかしい緊縛姿で吊ってやりたい。居心地の良い空間で、そのように楽しく思い描いたりもした。
土曜日、人気のない校舎4階。荒々しく短い開閉の音を残し、教え子と担任教師は揉み合いながら、その教室の中へと飲み込まれていった。
「一体、何ですか?」
声にトゲがあった。遙は、強引に教室に連れ込まれた事に、あからさまな嫌悪の表情を浮かべている。ただでさえ遅れて登校したのだ。はやく練習に合流しなければ。とも思っていたが、なにより、目の前の男がセクハラ教師である事に、彼女は不機嫌になっていた。
「何を見た?」
休日登校で、部活か。熱心だな。といった担任教師らしい前置きは一切無い。
幾分声が上滑っていた。教え子を、さらに教室の奥に突き押し、自らは振り向き鍵を掛ける。
この時はまだ、遙は林田の質問の意味が分からない。「はぁ…」と答えた。彼が女子更衣室から出てくるところを見ていないのだから、当然である。見慣れぬ内鍵にも、不安を覚えていない。
「とぼける気か!見ただろ?」
一度目より、やや強い調子で担任教師が問い詰めた時、彼女は、この男が(生徒に見られて不味い事を、やっていたのだ)と気付く。これほどまで強く、詰問せねばならない理由。
遙の頭の中で検証が始まっている。先程、林田と遭遇した場面が、高速でリプレイされていた。
自分から見て更衣室は、四階の一番奥に位置する。階段を昇り廊下へ出た時、彼はその隣、この教室付近を歩いていた。階段は東西に2箇所あったが、対に位置する階段は、それら二つの部屋の手前にある。だから、更衣室か、この教室から出て来たところではなかったか。普段から出入りの無い、空き教室に用事とは考えづらい。つまり。
そこまで考えが及んだところで彼女は、決して有ってはならない結論に行き着いた。
第六話へ続く
文章 やみげん
写真 杉浦則夫
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