食虫花 ~美少女・内山遙~7


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第七話【尋問】

麻縄を手にしてからの林田の行動は、素早かった。何度もシミュレートしたのだ、抜かりは無い。遙の腕を取り、後手にしたかと思うと、見る間に縄を掛けていく。想像を超えた、担任の異様な行動。彼女は混乱し、どう反応してよいものか戸惑っている。
やや小振りの乳房を挟んで、きつく掛けられる縄が少女の胸を圧迫していった。

「変態教師…最低」
乱れた髪の奥から、キッと刺す目は怒りに満ちていたが、内心は、牙を剥いた担任教師に恐れおののいている。泣き出しそうな自分が居た。遙はそれを悟られまいと、目一杯の虚勢を張る。
「早く!縄、解いて!大声出すわよ!人を呼ぶわよ!破滅させてやる!」
ふん。出せるものなら出してみろ。男には余裕があった。
初動で暴れるなり、悲鳴を上げるなりしなかったのを見て、(助けを呼ぶタイミングを逸したな)と、ほくそ笑んだに違いない。教育者としては甚だ不適格であったが、思春期から青年期へ移行途中の、少女達の複雑な心理を熟知している。どれほど毛嫌いしようと、対峙しているのは、顔見知りの教師なのだ。遙が、校舎の外に届くほどの大声を出すには、よほどの勇気が伴うはずであった。一見、大胆に見えても、教え子凌辱計画は、彼なりの理屈で緻密に組み立てられたものだった。
万一、騒がれても良い。今朝、中庭をはさんだ別校舎の職員室で、数人の同僚を見かけたが、おそらくこちらの校舎の中には二人きりだ。隣の校舎、職員室の在る一階では、ここ四階で起こっている異変に気付くのは、至難であろう。

それでも彼女が、とっさに悲鳴を上げ、助けを求めていれば、あるいは違った展開になっていたかも知れない。なぜならこの時、ちょうどバレー部の練習が休憩に入り、何人かが体育館の外で、たむろしていたからである。体育館は、四階から見下ろせる位置にあった。
「自分で何とかしてみせる」そんな遙の負けず嫌いの性格が、災いしていた。

「そうか、破滅させるのか…」
助けを呼べるものなら呼んで見ろ。教師はいきなり教え子のブルマを摺り降ろした。「ヒッ!」呑んだ息が、辛うじて小さな悲鳴となる。
「こんな格好で先生と二人きりと知れたら、お友達はどう思うかな?どう見てもSMプレイだな」
噂に尾鰭が付いて、学校に居られなくなるぞ。奴らは面白おかしければ何でも良いのだ。俺も破滅だが、お前も道連れにしてやる。
「それに…お前」
大学生と付き合ってるそうじゃないか。自分の彼女が中年男とSMプレイとは。恋人もきっと悲しむと思うぞ。(そんな事、何で知ってるの?)それまで強気だった、遙の顔が曇る。
「そいつとは、今まで何回SEXしたんだ?」
「あんたに関係ないでしょ!」
無礼な言葉遣い。自分の置かれた立場が理解できていないのか。まぁ良い。じっくり教えてやるさ。
「どこの大学かは知らんが、女子高生を喰うとはとんでもない奴だ!それこそ淫行条例違反だな」
「彼とは一度もそう言う事はありません!」
「嘘を吐け!」
そんなやり取りが数分続いた。

「本当の事を言え!」「ネタは上がってるんだ!」「バカにしてるのか!ああん?」
遙が卑猥な質問を拒絶する度に、床を打つ竹棒の音が教室に響く。
それに合わせ、威勢とは裏腹に、ビクッビクッと反応する教え子の姿が、担任教師には、たまらなく愉快であった。
元々、この男はそういった“嗜好”なのだ。単に女を抱くだけでは満足しない。相手の抵抗が大きければ大きいほど、支配の過程を楽しめる。かといって、自立した成人女性を標的にするわけでもなく、矛先は弱い女生徒達に向けられた。そこに林田の屈折がある。そういった意味で遙は、男の欲望を満たす条件が揃った、まさに格好の獲物と言えた。

(そうだ、これだ!求めていたのはこの感じなのだ)

第八話へ続く

文章 やみげん
写真 杉浦則夫
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