川上先生は、生徒たちに遠巻きにされながら、机に座らされてる。
椅子じゃなくて、机よ。
田の字形にくっつけられた4つの机が、先生の舞台。
もちろん、衣装は縄だけ。
飴色の縄目が、白い肌を、お餅みたいに括ってる。
お臍の下の肉が、羽二重のような膨らみを見せてる。
本人が何と思おうと、このぷっくりしたお腹が、川上先生の最大のチャームポイントよ。
「さ、先生。
そのまま、机の上に寝てください。
ゆっくりでいいのよ。
そうそう。
よく出来ました。
それじゃみなさん、授業を続けますよ。
ほら、遠巻きにしてないで、こっち来て。
あ、日本史の先生、踏まないようにね。
はい。
みなさん、集まりましたか。
どう?
川上先生。
素敵よね。
みんなの憧れの先生だもんね。
その先生が、素っ裸で、みなさんのためにモデルを務めてくださってるの。
男子生徒だったら、感激のあまり、きっともう射精しちゃってるわね。
さてと。
それじゃ、川上先生に注目。
って、すでにガン見してますね。
いいですか。
これが、成人女性の身体です。
自分や友達の裸とは、ちょーっと違うでしょ。
お母さんの裸は……。
最近見ないか?
もう、お風呂別々よね。
小さいころの記憶を思い出してみて。
やっぱり、どこか違うでしょ。
お母さんだから、当然、経産婦だもんね。
子供を産んでない成人女性の裸を見るのは、初めて?
最近は、銭湯とか行かないものね。
どう?
綺麗なものでしょ。
これが、精子が入るのを待ってる身体よ。
川上先生?
そんな切なそうな顔されたら……。
男は、入れる前に出しちゃいますよ。
あら、山下さん。
どうしたの?
もう、自分の弄ってるの?
困った人ね。
若い子は、一旦タガが外れると怖いわ。
それじゃ、そのままでもいいから……。
とにかく、川上先生に注目。
どう、この顔?
自己犠牲に殉じる、敬虔な信者みたいよね。
でも、ほんとは悦んでやってるのよ。
ほら、その証拠に……。
ごらんなさい、この乳首。
ビンビン。
こんなのに吸いついたら……。
赤ちゃんでも、射精しちゃいそう。
はい。
誰か、吸いたい人?」
「はいはいはい」
「まぁ、誰かと思ったら、日本史の先生。
もう生き返りましたの?」
「ゾンビみたいに言わないでください。
心身ともに復活しました。
見てください、この暴れん棒。
背筋運動のように反り返ってます。
準備、オッケーです」
「何の準備ですか?
呆れた先生ですわ」
「ここからは、わたしが授業させてもらっていいですか?
さて、諸君。
さっきから君たちの注目を浴びてる、この生殖器官。
男根と云います。
この棒の部分は、陰茎。
先っちょの剥き出しのところが、亀頭。
わかるね?
男女の交合って云うのは……。
早い話、この男根を女性器に挿しこんで、男性が射精することです。
よく見てごらん。
亀頭の更に先端に、黒い穴が開いてます。
ここから精液が出るんです。
精液を生産するのは、ここ。
わかるね?
これを、金玉と云います。
ゴールデンボール。
非常に重要な器官です。
2つあります。
片方が損傷しても、もう一方で役目が果たせるようにという、神の配慮です。
両方元気なときは……。
一ヶ月交代で勤務します。
町奉行所みたいですね。
もし金玉が3つあったら、どうなるでしょう?
三ヶ月ごとにお勤めが回ってくるわけだ。
これを、三金交代と云います。
って、君たち、冗談だよ。
真面目にメモ取ってどうするの。
普段の授業じゃ、ノートも取らないくせに」
「先生、巻いてください」
「すみません。
それじゃ、突っこませていただきます」
「誰がそんなことしていいって言いました?
そもそも先生は、前戯もなさいませんの?」
「前戯は……。
よほど余裕のあるときに限られます」
「どういうときですか?」
「結婚してから、余裕があったことは一度もありません」
「まぁ。
じゃぁ、奥様には一度も前戯無しに?」
「はい」
「はい、って……。
それじゃ奥様、痛いでしょうに」
「とんでもない。
いつも濡れ濡れです。
家に帰るときは……。
数分前にメールするんです。
アパートのドアを開けると……。
上がり框で、妻が四つん這いで待ってます。
もちろん、全裸です。
あそこは、波間の海藻みたいに濡れてますよ。
もちろん、そのまま突っこみます。
玄関に入る前から、ちんちんは出してありますから」
「夫婦揃って変態と云うことですね」
「否定できません。
最近は、野外での行為に目覚めてしまい……。
自分でも恐ろしくなります。
聞きたいですか?」
「結構です」
「少しだけ聞いてくださいよ。
駅のトイレなんです」
「またトイレですか?
たしか、国語の先生とも……」
「トイレというのは、排泄行為を行う場所です。
そこで精液を排出したくなるのは、自然な反応なんじゃないでしょうか?
むしろ、おしっこだけして出てくるのが、もったいなくてしょうがありません。
駅のトイレなんか、ときどき掃除のおばちゃんが入ってることがありますが……。
あの人のでもいいから、ちょいの間、貸してほしいと思いますよ。
あ、これはもちろん妄想だけです。
教師がそんなことしたら、大変な不祥事ですからね」
「今の先生も、十分に不祥事の対象だと思いますが」
「かたじけない。
話を続けます。
駅のトイレです。
わたしの使う駅は、そこそこ大きい駅ですが……。
もっと山の方に行くと、夜間、無人になる駅があるんですよ。
と言っても、入口が閉じられるわけじゃない。
改札も抜けられます。
妻と2人で、夜中、その駅に行くわけです。
もちろん、電車は終わってますから、車を使います。
2人とも、コートを羽織ってますが……。
下は全裸です。
あ、妻は普通のトレンチコートですが、わたしは違いますよ。
トレンチコートに裸の脛じゃ、まごうかたなき変質者ですからね。
わたしは、くるぶしまで丈のあるベンチコートです。
もう、興奮しっぱなしで、そこらに車止めてヤリたいくらいなんですが……。
必死で我慢します。
で、駅に着くと……。
入場券を買って、自動改札を通ります。
トイレは、改札の中にあるんですよ。
改札は、ゲートが閉じるタイプではないので……。
素通りも可能ですが、もちろん、真面目な教師がそんなことはしません。
そこまで来ると、もう我慢の限界です。
2人して手を取って、トイレに駆けこみます。
バリアフリーのトイレなんで、中は広々としてます。
もう、コートのボタンを引きちぎりながら脱ぎますね。
駅のトイレで、2人して全裸になってることで、脳漿が沸騰するほど興奮します。
便器のフタに手をついた妻を、思い切り後ろから犯します。
尻を叩いてやると、狂ったように悦ぶんです。
打楽器みたいに乱打します。
わたしの腰と手の平、そして妻の尻肉。
互いの肉体によるジャズセッションです。
それに、妻の嬌声とわたしの咆哮が加わる。
誕生したころの人類に戻るんです。
アフリカの大地が見えますよ。
家で、一発ヤッて来てますけど……。
シチュエーションに興奮してるから、すぐに追い詰められます。
本日、最高のフィナーレが近づいてる。
このまま出してしまうのでは、もったいない。
便器を抱えてへたりこんでる妻を、後ろから抱え……。
持ち上げます。
もちろん、繋がったままです。
で、トイレの鍵を開けるんです。
重たいラッチ音が響くと、妻の性器が陰茎を締めあげてきます。
このまま外に出ることを察し、悦びを抑えきれないんです。
もちろん、口ではそんなことは言いませんがね。
扉は、ラッチを外すと自動的に開きます。
出来た隙間は、異界への通路です。
ここを通ったとき、わたしたち夫婦は、人とは別の生き物に変わる。
そう。
変態という、哀しい生き物に。
でも、もう止められません。
2人は、繋がったまま、結界を踏み越え、扉を抜けます。
2匹の変態の誕生です。
その姿を映したい。
この目で見たい。
繋がったまま、二人羽織のように妻を操り、通路を抜けて構内に出ます。
昼間は、大勢の利用客が足早に交錯するパブリックスペースです。
そこに、全裸で……。
しかも、妻と性器を結合させて立ってる。
もう限界です。
肛門を引き絞り、歯を食いしばって耐えます。
妻を抱えたまま、待合室に向かいます。
待合室は、夜間、施錠されてて入れません。
なぜそこに向かったかと云うと……。
構内と待合室の間仕切りが、ガラスなんですよ。
つまり、わたしたちの姿を、すべて映してくれるんです。
妻が、ガラスに両手を付くと同時に、わたしは腰を振り立てます。
もう、堪えるつもりはありません。
妻の突っ張った腕はすぐに崩れ、顔面がガラスに貼りつきます。
整った容貌の妻が、ガラスでひしゃげた顔を無防備に見せてる。
愛しさ一杯です。
わたしは、喉も裂けよとばかりに咆哮しながら……。
思い切り精を放ちます。
妻も、大口を開けて絶頂を歌いあげます。
のどちんこまで見せながら、並んで口を開ける姿は……。
まるで、産卵する鮭のつがいのようです。
生命の務めを果たす悦び。
あの絶頂は、まさに神の寿ぎです。
そう、思いませんか?
あの感覚を思い出したら、もう我慢できません。
川上先生、入れてもいいですか?」
「呆れた先生ですわ。
長々と夫婦の変態話を語った挙句、そんなことが許されると思ってますの?」
「妄想では、すべてが許されるのです」
「あら、そうでしたわね。
それなら、これはわたしの妄想ですから……。
わたしの思い通りなんだわ。
ちちんぷいぷい」
「先生、ずいぶん古典的な呪文ですな。
歳がバレますよ。
せめて、テクマクマヤコンにしてください。
あ、あなたいったい何をなさったんですか!
足が、足が動かない。
ていうか、足の指が、床に潜りこんでる!」
本作品のモデルの掲載原稿は以下にて公開中です。
「川上ゆう」 「結」 「岩城あけみ」
《説明》
杉浦則夫の作品からインスピレーションされ作られた文章作品で、長編連載小説のご投稿がありました。(投稿者 Mikiko様)
本作品は毎週日曜日に公開される予定となっておりますので、どうぞお楽しみに。
前作を凌ぐ淫靡と過酷な百合緊縛!「川上ゆう」さん、「YUI」さん登場予定作品です。
時を越え、再び出会った美里とあけみ。現在に戻った美里は、さらなる花虐へと誘われていく…。