先生は理事長を見返って、口角を上げた。
「岩城先生……。
下ろして」
「じゃ、いい子でモデルになる?」
先生は、おどけた仕草でカメラを構えた。
理事長が顔を背けた。
「ほら、まだ素直じゃない。
やっぱりお仕置きが必要ね」
先生は壁際のシンクに歩み寄ると、透明な大きな箱を持ち上げた。
大きさは、40センチ、いやもう少しあったかな?
サイコロみたいな立方体。
上部の一面だけが空いてるから……。
つまりは箱ね。
「何だと思う?
これ、水槽なのよ。
フレームレスで綺麗でしょ。
アクリル製だから、軽いし。
部屋の奥で見つけたの。
これもきっと、理事長室のお下がりね。
世話をサボって、魚が死んじゃったのかしら。
で、現像用のバットにでも使えるかと思って、洗っておいたわけ。
まさか、別の用途があったとはね」
先生は両手で水槽を掲げたまま、歩き出した。
マジックボックスを抱えるマジシャンのようだった。
理事長の脇で立ち止まると……。
水槽を床に置いた。
そのまま、水槽の傍らにしゃがみこむ。
熟れた桃みたいなお尻を、縄がT字に区画してた。
先生は、床の水槽を、位置を確かめるように滑らせた。
水槽は、吊るされた理事長の真下で止まった。
先生は水槽から手を離すと、理事長を見あげた。
口角が上がってた。
理事長の目は、明らかに怯えてた。
「岩城先生……。
何をするつもり?」
「とってもいいこと」
先生は、ゆっくりと起ちあがった。
視線が、理事長の体を這いあがる。
「ほんとに綺麗な体。
匂いもいいし」
先生は、理事長の脇腹に鼻先を付けた。
理事長が身を捩ると、見事な腹筋が浮きあがった。
「いったいこの身体で、何人の男を言いなりにさせて来たのかしら?
そうそう。
あの現場監督も、色仕掛けで丸め込めばよかったのに。
理事長が勝手な命令を言い放って出てくとき……。
あの現場監督、凄い目で理事長の後ろ姿を見てたわ。
怒りももちろんだったでしょうけど……。
わたしには、それ以外の情動も感じられた。
そう。
理事長のお尻に、食いこむみたいな視線だった。
あのとき、彼の頭の中では……。
このお尻に、おちんちん突っこんでたのかも?
ほら、この張り」
「触らないで!」
「さすがですわね。
逆さに吊られながらも、まだ命令口調。
生まれながらに染み付いた性格は、変えられないってことかしら。
そうだ。
あの現場監督、ここに呼ぼうかしら。
携帯番号、聞いてあるのよ。
誰かさんのおかげで、頻繁に連絡が必要だったから。
番号変えて無ければ……。
まだ繋がるわよね。
美里ちゃん。
わたしのスカートから、携帯取って」
「止めて!」
「こんな姿、見せたくない?
ふふ。
この格好じゃ、頭ごなしに命令できないものね。
でも、もし彼が理事長のこの姿みたら……。
ほんとに、どうするかしら?
そうそう。
ここに呼びつけておいて……。
わたしたち2人は、隠れてるの。
入ってきた現場監督は、驚くわよね。
あの憎っくき敵が、逆さに吊るされてるんですもの。
どうするかしら?
まずは……。
乳首を捻りあげる?
こんなふうに」
「ひぃっ。
い、痛い」
「あんまり暴れると、縄が切れるって言ったでしょ。
縛られたまま頭から落ちたら、無事には済まなくてよ。
それから監督は……。
どうすると思う?
美里、あなたならどうする?」
いきなりそんな問いを振られても、答えるすべもなかった。
こんなシチュ、考えたことさえ無いんだから。
「ほら、質問に答える」
「わかりません」
「つまらない子ね。
ちょっとは、想像力を働かせなさい。
わたしが監督だったら、そうね……。
やっぱりまず、ちんちん出すかしら。
ジッパー開けて。
いえ。
それじゃ、つまらないわ。
やっぱ、下半身は素っ裸よ。
作業着のズボンと、パンツを脱ぐ。
シャツの下に、引き締まったお尻が見える。
きっと、割れ目にまで毛が生えてるわね。
で、前の方は……。
シャツの合わせ目を分けて、男根が屹立してる。
亀頭は天井を指し、電球の明かりが映るほど張り詰めてる。
で、そのちんちんを……。
突っこむのよ。
この憎らしい口に」
あけみ先生は、理事長の顔に手を伸ばした。
逃げる唇に指を入れ、ほっぺたを吊り上げる。
理事長は、懸命に首を振って逃げようとする。
「人形との違いは、まさにここよね。
これが醍醐味。
抵抗するものを屈服させる悦び。
現場監督は……。
逃げまわる顔を、両手で挟みこんで固定するわ。
でも、口を閉じられてたら、突っこめないわよね。
どうするかしら。
鼻を摘むとか?
こんなふうに」
理事長は苦しげに首を振った。
でも、あけみ先生の指からは逃れられなかった。
「ほら、口が開いた。
ここで突っこむ。
でもねぇ。
ほんとに綺麗な歯並び。
歯茎もピンクで健康そのものよね。
きっと、噛む力も強いでしょうね。
この歯で挟まれたら、ヤワな海綿体なんてひとたまりもないわ。
千切れちゃうよね」
「男女間の行為の一つにイラマチオってのがあるけど……。
美里、知ってる?
知らないの?
ほんと、奥手ね。
男性が、ちんちんを女性の口に突っこんで、腰を振るわけよ。
女性の頭を手で固定しておいて、挿出は男性が行うの。
この行為を……。
レイプ系のAVで見ることがあるけど……。
現実に出来るとは思えないわ。
だって、噛まれたらひとたまりも無いのよ。
虎の口の中に頭を差し入れる芸があるけど……。
あれと同じくらい危険なこと。
実際、こんなことがあったんだって。
新婚夫婦の初夜。
新婚旅行の初日のホテルよ。
昔のことだから、婚前交渉も無くて……。
しかも、童貞と処女。
新郎の頭は、ついに出来るという興奮で、沸騰しまくり。
やらしい知識だけは、山のように仕入れてあったから……。
いきなり新婦の口に突っこんだ。
経験が無いから、加減ってものがわからないでしょ。
ま、ひょっとしたら、新郎くんのが短かったからかも知れないけど……。
先っちょが、ノドの奥まで届いたのね。
そうなると……。
新郎の陰毛が、新婦の鼻の穴を刺激するわけ。
新婦は、懸命に我慢したんだけど……。
とうとう、堪え切れずに……。
大くしゃみ。
くしゃみすると、どうなると思う?
口が閉じるのよ。
ちんちん咥えたままね。
結果は……。
あまりにも悲惨。
阿部定よ。
新郎くんのちんちんは……。
千切れちゃったの。
新婦のまんこを、一度も堪能することなくね。
つまり。
女性の口中をちんちんで犯すなんて芸当は……。
絵空事ってわけ。
ほほ。
また脱線したわね。
何言おうとしてたんだっけ?
そうそう。
下半身丸出しにした現場監督の話よ。
彼は、新郎くんと違って、ある程度経験は積んでるだろうから……。
天敵の口に、いきなりちんちん突っこむなんて真似はしない。
でも、この顔見たら……。
入れたくなるわよね。
どうすると思う?
首ばっかり振ってないで、ちょっとは考えなさいよ」
「つまり、口は意志で閉じるものだから……。
その意思が働かないようにすればいい。
すなわち。
気絶させればいいわけ。
こんなに無防備にぶら下がってるんだから……。
簡単なことよ。
首を締めればいい。
こんなふうにするのかな?」
あけみ先生は、両手を理事長の首に回した。
「や、止めて!」
理事長が身をうねらせる。
縄を渡した梁が軋む。
あけみ先生の両手に、力がこもった。
「う。
うぐ」
理事長の全身が、海老のように跳ねた。
あけみ先生が、両手を離した。
「げほ。
げほ」
理事長が激しく咳きこむ。
「苦しい?
おかしいなぁ。
気持よくなるはずなんだけど。
気管を塞いじゃうからかな。
頸動脈だけ押さえればいいのか。
ま、いいわ。
気持よく失神されたんじゃ、面白くないから。
でも、あの現場監督は、力がありそうだったから……。
締められたら、あっという間に気絶できたかもよ。
そうそう。
手じゃなくて、タオルで締めればいいんだ。
あの人、いつも首にタオル巻いてたものね。
汗臭いタオルを、この華奢な首に巻いて……。
思い切り締める。
もう、悦びの局地なんじゃない?
脳天から沸騰するような激情に駆られて……。
渾身の力を籠めるわね。
たちまち理事長の瞳が裏返る。
頭の重みで、口が開く」
本作品のモデルの掲載原稿は以下にて公開中です。
「結」 「岩城あけみ」
《説明》
杉浦則夫の作品からインスピレーションされ作られた文章作品で、長編連載小説のご投稿がありました。(投稿者 Mikiko様)
本作品は7/13まで連続掲載、以後毎週金曜日に公開される予定となっておりますので、どうぞお楽しみに。
前作を凌ぐ淫靡と過酷な百合緊縛!「川上ゆう」さん、「YUI」さん登場予定作品です。
時を越え、再び出会った美里とあけみ。現在に戻った美里は、さらなる花虐へと誘われていく…。