「すっかりイキが悪くなっちゃったわね。
これじゃ、市場でも売れ残りだわ。
最初におしっこ入れれば良かった」
「せ、先生」
わたしは、思わず声をあげてた。
このままだと、ほんとに理事長は死んでしまう。
そう思ったの。
「ふふ。
人間って怖いわね。
ぜんぜんそんな気は無かったのに……。
走り出したら、自分を止められなくなる。
ありがと。
止めてくれて」
先生は、大きくハンドルを回した。
カチカチと響くブレーキ音が、頼もしく聞こえた。
理事長の頭が、水中から抜き上げられた。
「がふっ」
理事長は大きく口を開き、空気を貪った。
水を孕んだままの髪が、火炎みたいに逆立ってる。
黒い滝のようにも見えた。
滝を流れ落ちる水が、水槽に飛沫を散らす。
「そろそろ、限界みたいね」
理事長は、腹部を痙攣させながら呼吸をしてる。
「理事長、よく頑張りましたわね。
今、下ろしてあげますよ。
美里、理事長を引っ張って。
身体の位置を水槽から外すのよ。
カメラ、置いていいから」
引っ張ってと言われても、どこに手をかけていいかわからない。
まさか、頭を掴むわけにもいかないし……。
「縄があるでしょ。
クビの後ろに回ってるとこ。
そう。
そこに指、引っ掛けて。
綱引きみたいに、後ろ体重。
よしよし。
じゃ、下ろすわよ。
手を緩めたら、また水の中だからね」
わたしは踵で踏ん張りながら、全身の体重を後ろにかけた。
理事長の身体が降りるたびに、一歩ずつ下がる。
「そうそう。
その調子」
こうして理事長は、ようやく逆さ吊りから解放された。
長い苦痛から解き放たれた理事長は、床に仰のきながら、微笑んでるようにさえ見えた。
束ねられた両腕が、背中の下になってたけど……。
それまでの苦しみに比べれば、どうってことないみたいだった。
全身の力が緩み、お腹だけが起伏してる。
下腹部を回る縄に乗りあげた肉が、影を孕んで息づいてる。
弛緩した理事長の両腿は、僅かに開いてた。
あんまり見ては悪いような気がしたけど……。
どうしても視線が切れなかった。
わたしの視線は、理事長の股間に縫いつけられた。
「気がついた?
でも、わたしが剃ったんじゃないのよ。
最初から無かったの。
つるつる。
そういう変態趣味でもあるのかと思ったけど……。
どうやらこれも、ヨーロッパかぶれみたいね。
向こうの女性って、下の毛、剃っちゃってる場合が多いのよ。
日本でも、先端的な子の間では流行ってきてるみたい。
ハイジニーナ脱毛って、聞いたことない?
ハイジって云っても、アルプスの少女のことじゃないわよ。
『hygien(ハイジーン)=衛生的』ってのが語源。
エステとかに、あそこの毛を永久脱毛しちゃうコースがあるみたい。
でも日本だと、温泉とかがあるしね。
まだまだ普及は難しいんじゃない」
先生は、理事長の脇にしゃがみこんだ。
股間を覗きこむ。
気配を感じたらしい理事長が、両腿を閉じようとした。
「隠すことないじゃありませんか。
こんなに綺麗なのに。
欧米人は色素が薄いから……。
剃りあげた大陰唇も、周りの肌と同色の場合が多いみたいだけどね。
でも、アジア人が成人すると、どうしても色素が沈着しちゃうのよね。
永久脱毛が、イマイチ流行らないのは、そういう体質も影響してるのかしら。
剃っても、けっして少女のようには見えないのよ。
大陰唇が、薄茶色に着色しちゃってるから」。
「でも、稀にいるみたいね。
大陰唇の色が、ほかの肌の部分と変わらない人。
まさに理事長が、そのおひとりってわけですね。
こんなおまんこしてたら、見せたくてしょうがないわよね。
だから剃ったんでしょ?
つるつるに。
あちらのヌーディストビーチで、見せまくってるんじゃありません?
日本には、どうしてそういうパブリックスペースが無いんだろうって、ムカツイてるとか?
あ、そんなことないか。
むしろ、日本にはあったんだわ。
昔から。
お風呂文化。
幕末に来航した外国人は、混浴風呂に仰天したらしいですもの。
明治以降、欧米化を進める中で、混浴文化も圧殺されていったけど……。
まだ、細々とは残ってる。
そう、山の温泉宿とか。
理事長も、ひょっとして隠れ温泉ファンだとか?
こんな体が、突然湯煙の中に現れたら……。
男性客は、びっくり仰天だわ。
たちまち、ちんぽがおっ起っちゃって……。
お湯から出れなくなる。
お湯に入った理事長は、その様子を見下ろしながら……。
しゃなりしゃなりと、歩きまわる。
ひとりひとりの前で立ち止まり……。
腰を突きつける。
見上げる男性からは、無毛のまんこが丸見え。
ひととおり岩場を巡ると……。
理事長はお湯を上がる。
男性客の視線が、背中から尻に纏わりつくのがわかる。
理事長は振り向くと……。
流し目を巡らせ、視線の束を絡め取る。
そして、根こそぎ抜きあげる。
釣りあげられた男性客は、もう股間を隠そうともしない。
露天の空を突きあげるちんぽを揺らしながら……。
亡者の群のように、お湯から上がってくる。
男性客に囲まれた理事長は、石張りの真ん中に身を横たえる。
ほら、今みたいな格好。
もちろん、縄は打ってないでしょけど。
滴るお湯を、ピチピチの肌が弾く。
取り囲む男性客が、間合いを詰める。
男性客の脚の柱が、隣と接するほどに狭まる。
そう。
無数の白い柱。
建築物?
いえ。
それは、檻よ。
まだ発見されてない、古代の遺跡。
白いエンタシスの檻。
不思議な意匠。
そう、檻を成す柱の付け根からは……。
ことごとく突起が突きあがってる」
「湯気を上げる柱に囲まれた理事長は、ゆっくりと両脚を持ち上げる。
膝裏を掬い取り、長い両脚を自らの上に畳みこむ。
もちろん、股間は剥き出し。
股間どころじゃない。
綺麗に剃りあげた肛門まで、湯気の中に晒してる。
突然、檻が崩れた。
股間の延長線上にいた男性客が、理事長にのしかかるように腰を落とした。
理事長の真上から、しゃがみこむ。
片手で自らの陰茎を掴み、切っ先を押し下げる。
その延長線上に開くのは……。
もちろん、理事長のおまんこ。
そう。
泥を噴きあげる温泉のように、無数の泡が生まれてる。
男性は一気に尻を落とし、陰茎を突き刺す。
『わひぃ』
理事長の口から、はしたない嬌声が噴きあがる。
男性は、激しく尻を振り立て始める。
陰毛に覆われた男性の恥骨が、理事長の陰核を容赦なく叩く。
『はひ。
はひぃっ』
理事長は顔を持ちあげ、居並ぶ男性を見回しながら、歓びの声を振り撒く。
湯気が、ピンク色に染まる。
男性の檻が、一気に崩れた。
理事長にのしかかり腰を使う男性の後ろに、もうひとりが重なる。
その男性の陰茎は、目印のように赤く縁取られた肛門に突き立った。
ズブズブと埋もれていく。
渾身の嬌声を噴き上げようとしたけど……。
出来なかった。
すでに、声の出口を塞がれてたから。
そう。
もう、ほかの男性の陰茎が、口の中に突っこまれてたの。
『ふが。
ふががががが』
太い陰茎が、口中を犯す。
男性の陰毛が、鼻に入るほど突きこまれる。
『げふ』
吐き出せない。
一気に涙が滲み、視界が霞む。
男性は、容赦なく挿出を進める。
『ぶふ』
鼻汁が噴き出る。
上下する陰茎に、カエルの卵のように貼り付く」
「『ごぼ。
ごぼぼ』
理事長の腹筋が浮き上がり……。
口の端から、吐瀉物が噴き零れる。
苦痛と悦楽に翻弄され、脳漿が沸騰する。
握りしめた両拳の中にも、陰茎は一本ずつあった。
汗を噴き出す脇の下にも挟まってた。
もちろん、お腹の上に乗りあげた男性の陰茎は、乳房の谷間で擦られてる。
突き上げた足裏にも感じる。
熱い肉棒が、足裏の襞を研ぎ下ろしてる。
全身を犯される歓びと苦痛。
声に出せない絶叫が、黒々と穿たれた尿道口から噴きだした。
奔流が、挿出される男根を直撃し……。
扇形に開いた飛沫に、孔雀の羽のような虹が掛かる。
『イ、イク!』
まんこに突っこんでる男性が、声を裏返す。
挿出がさらに速まり、腰の輪郭が消える。
『あぁ、あっ。
あっ。
あっ』
男性は、塑像のように凝固した。
尻たぶだけが、激しく収縮してる。
弾丸みたいな激しい射精が、理事長の子宮に撃ちこまれる。
何発も。
『うぉぉ』
肛門に突っこんでた男性も、うめき声を上げた。
石張りを滑りながら前後してた腰が、理事長の尻に密着して止まる。
甲板みたいに浮きあがった腹筋が、プルプルと震えてる。
もちろん理事長は、腸内に激しい射精を感じてる。
暗黒の洞穴の中で、白い精液が、腸壁を埋め尽くしてく。
『あぉっ』
『あぎゃ』
足裏に、ちんぽを擦りつけてた2人の男性が、奇声とともに暴発した。
両足、同時に。
中空にほとばしる精液が、歌舞伎の蜘蛛の糸のように散華する」
本作品のモデルの掲載原稿は以下にて公開中です。
「結」 「岩城あけみ」
《説明》
杉浦則夫の作品からインスピレーションされ作られた文章作品で、長編連載小説のご投稿がありました。(投稿者 Mikiko様)
本作品は毎週金曜日に公開される予定となっておりますので、どうぞお楽しみに。
前作を凌ぐ淫靡と過酷な百合緊縛!「川上ゆう」さん、「YUI」さん登場予定作品です。
時を越え、再び出会った美里とあけみ。現在に戻った美里は、さらなる花虐へと誘われていく…。