放課後の向うがわⅡ-29

「こんなとこに忘れてったのね。
 危ない危ない。
 まさか、変なことには使って無かったでしょうね」

 その人は、棒を電球に翳した。
 光を浴びて、棒は光沢を見せた。
 竹だった。
 粉を吹いた地肌が光を返し、まるで自ら光を発してるように見えた。
 なぜだか、かぐや姫の物語が頭に浮かんだ。

 その人は、理事長の傍らに身を沈めた。
 さっきから、顔を確かめようとしてるんだけど……。
 出来なかった。
 なぜなら、その人は帽子を目深に被り、つばの作る影が、顔の上半分を隠してたから。

「ほら。
 おネンネの時間は終わりよ」

 その人は、理事長の身体を引き起こした。
 癇癪持ちの子が、人形を扱うような邪険な仕草だった。
 上体を起こされた理事長は、視線を四囲に彷徨わせてる。
 その人は、魔法めいた手際で、理事長の縄を解いた。
 しかし、理事長に自由は与えられなかった。
 理事長の両腕は、再び後頭部で束ねられ、縄打たれた。
 その縄に、竹が通される。
 理事長の頭の後ろを、竹が渡った。
 わたしには、理事長の首を突き抜けたように見えた。
 理事長の瞳が、焦点を結んだ。

「……、お姉さま」
「やっと目が覚めた?
 わたしに無断で、気持ちいいことしてたわね」
「ごめんなさい」
「気までやって。
 ほら、ゆうはまだ、大股拡げて寝てるわ。
 あの子も、筋金入りの変態。
 あんな綺麗な顔に生まれながら、不憫なものよね。
 さてと。
 まずは、あなたのお仕置き。
 どうしようかしら。
 どうされたい?」
「……。
 突いて。
 突いてください。
 あのディルドゥで」
「は?
 馬鹿じゃないの。
 それじゃ、お仕置きにならないでしょ。
 ふざけたこと言ってないで、ほら!」

 その人は起ちあがりながら、理事長の身体を引きあげた。
 理事長は自ら応えて身を起こすと、膝を突いた姿勢で背中を見せた。
 張り出したお尻から、腰への括れが見事だった。
 後頭部で束ねられた両腕には、竹が通っている。
 まるで、竹に射抜かれたビーナスだった。

 その人は、理事長を見下ろすように立ってる。
 高いピンヒールから伸びる脚は、網タイツのガーターストッキングに包まれてた。
 ストッキングが、ガーターだってわかると云うことは……。
 つまり、スカートは穿いてなかったの。
 股間は、かろうじて布地に覆われてたけど。
 その黒いパンティには、真紅の花があしらわれてた。

「これが、ほしいの?」

 その人は……。
 やっぱ、この呼び方って言いづらいな。
 ここからは、女王さまにするね。
 女王さまは、柱のディルドゥを指さした。
 さっき、理事長と川上先生が、舐めてたやつね。


「ください」
「さっきまで、つまみ食いしてたくせに」
「お姉さまに突いてほしい」
「そうかしら。
 ひとりで遊ぶの、大好きなくせに。
 わたしが、お預けを言いつけて置いても……。
 言うこと聞かないじゃない。
 ベッドに仰向けになったまま、腰振り出してさ。
 ガードパイプに燭台で据えたディルドゥを上目で睨めながら……。
 お尻をシーツに擦り始める。


「だって、お姉さまが、あんまり焦らすんですもの」
「甘え声出すんじゃないの。
 焦らさなきゃ、お預けの意味がないでしょ。
 ぜんぜん聞きゃしないんだから。
 勝手に起きあがって、ディルドゥ舐め始める。
 しかも、尻の穴をねぶりながら。


「だって……」
「また、だって?」
「前を弄ること、禁じられてるんですもの」
「“前”なんて曖昧な言い方、止めてちょうだい。
 ちゃんと言いなさい。
 どこをどうすることを禁じてあるの?」

「……。
 おまんこ」
「はっきり!
 おまんこをどうするの?」
「おまんこを、自分で弄ることです」
「そっちのいいつけだけは守ってるって言いたいわけ?
 それでお尻の穴弄ってたら、世話ないわ。
 あげくの果てに、ディルドゥ様を燭台から持ち出してさ。
 床に据え付けて……。
 舐め回すわ、頬ずりするわ。

 浅ましいったらありゃしない。
 わたしに見咎められなければ……。
 あのまま突っこんでたでしょ?」
「そんなこと、しません」
「ウソおっしゃい。
 ディルドゥが溶け出しそうなほど、頬張ってたくせに。
 そういう人は、罰を受けなきゃならないのよ」
「犯して……。
 めちゃめちゃに」
「だから……。
 それはあなたにとって、罰じゃないでしょ。
 考えてみれば……。
 SとMってのは、奉仕する側とされる側なのよね。
 もちろん、奉仕してるのはSの方。
 Mの欲望を満たすため、Sは一生懸命サービスしてるわけ。
 でもね。
 わたしは、そんなのイヤよ。
 わたしが聞きたいのは、ほんとの悲鳴。
 そのために……。
 今日は、おみやげを持ってきたわ」

 女王さまは、薄い上着を羽織ってた。
 胸前ははだけ、ブラが覗いてる。
 黒いカップの上に、パンティとお揃いの花が咲いてる。
 女王さまは、上着の裏から、マジシャンみたいに、あるものを取り出した。
 カップに咲く花よりも赤い、棒のようなもの。
 遠目からでは、よくわからない。

「ほら。
 おっきいでしょ。
 これも突っこみたい?
 でも、残念ながら……。
 あなたの下のお口を満足させるために、持ってきたんじゃないの。
 何に使うか、わかるでしょ。
 SMショーの定番だものね。
 ロウソクショーって云うのよ。
 どう、この色。
 毒々しいまでの赤。
 無残絵の血の色みたい。
 でも、とても懐かしい色。
 子供のころ見た夢に灯ってた色よ」

 女王さまは、赤いロウソクを、理事長の顔前に翳した。
 お寺の本堂にあるような、大きなロウソク。

「この赤い蝋が溶けて……。
 白い肌に落ちると、それはそれは綺麗なの。
 だから、SMショーでは、赤いロウソクが使われるのね。
 でも、ほんとに熱いのよ」

 ロウソクを突きつけられた理事長は、床を後退った。

「ゆ、許して」

 目が本気で怯えてた。
 無理もないわ。
 あんな太いロウソクを目の前にしたら……。
 誰だって、恐怖の方が先に立つ。

「ダーメ。
 どうやら、縛り直した方がよさそうね。
 ほら、おとなしくしなさい」

 女王さまは、理事長の腕から竹の棒を抜き取った。
 床に放られた竹が、楽器めいた音を立てる。
 その竹がまだ静まらないうちに、理事長の縄は解かれた。
 でも、自由を得たのはほんの一瞬。
 女王さまは、理事長の両腕を背中で束ねた。
 再び縄が打たれる。
 もちろん、本気で抵抗すれば逃げられたはず。
 でも、理事長はそうしなかった。
 顔は半泣きに歪んでたけど。
 恐怖と、嫌われたくないという思いが、せめぎ合ってるように見えた。
 その間にも、縄は重ねられていく。
 瞬く間に、理事長の上体は、縄で区画された。
 乳房の膨らみが縄で潰され、乳首が上を向いてた。

「はい、出来上がり。
 綺麗になったわよ。
 どんな衣装より、あなたには飴色の縄が似合うわ。
 そして、それに合わせるのは……。
 このロウソクの赤」

 女王さまの上着から、小さな金色が生まれた。
 指先が金色の肌を弾くと、軽やかな金属音とともに、金色は2つに割れた。
 ライターだった。
 微かな擦過音が立ち、炎が生まれた。
 2本束ねたロウソクを傾け、ライターに近づける。
 口づけをするみたいに、炎が移った。
 赤いロウソクに、柑子色の火が灯った。

「ほら。
 綺麗でしょ」

 女王さまは、理事長の前に、2本のロウソクを翳した。
 理事長の瞳が、怯えたように逃げる。

「まず、どこからいこうかしら?
 そうね。
 やっぱり、ツンとお澄ましした、そのおっぱいかしら。
 どうなの?」
「許して……」
「ダメよ。
 そんなこと言いながら……。
 乳首、起ててるくせに」
「言わないで……」
「言いなさい。
 蝋のお情けが欲しくて、乳首起ててますって」
「お姉さまに見られてるから」
「可愛いこと言ってもダメよ。
 見られて起てるなんて、変態だわ」
「あぁ」
「ほら。
 言葉で嬲られるだけで、そんな顔して。
 立派な変態。
 ちょっとだけ弄ってあげましょうか」

 女王さまは、理事長の背後に回った。
 束ねた指先が理事長の体側を回りこみ、乳首を摘んだ。

「ひ」
「まだ何もしてないでしょ。
 もう鼻の穴膨らませて。
 言ってごらん。
 ゆいは変態ですって」
「……」
「言えないの?
 止めちゃおうかな」
「変態です」
「主語が無い!」
「ゆいは……。
 ゆいは変態です!
 だから……。
 だから、弄ってぇぇ」

 指先が、獲物を捕らえたイカの脚みたいに蠢き出した。

「わひぃ」
「気持ちいいの?」

 理事長は、がっくがっくと頷いた。
 頷きながら、お尻を床にスライドさせ始めた。


本作品のモデルの掲載原稿は以下にて公開中です。
「川上ゆう」 「結」 「岩城あけみ」

《説明》
杉浦則夫の作品からインスピレーションされ作られた文章作品で、長編連載小説のご投稿がありました。(投稿者 Mikiko様)
本作品は毎週日曜日に公開される予定となっておりますので、どうぞお楽しみに。
前作を凌ぐ淫靡と過酷な百合緊縛!「川上ゆう」さん、「YUI」さん登場予定作品です。
時を越え、再び出会った美里とあけみ。現在に戻った美里は、さらなる花虐へと誘われていく…。


放課後の向うがわⅡ-28

 理事長は、歯を食いしばった表情のまま、後退った。
 半身に折った背中越しに、お尻が迫り上がった。

「ゆう。
 ゆう。
 見て」
「こんなに近くで見てる」
「後ろ。
 後ろから見て。
 ゆいのおまんこに、肉棒が突き刺さるとこを……。
 見てぇぇぇぇぇ」

 理事長は、きりりと眉を上げ……。
 そのまま後ろに、身を煽った。
 眼球が、引き上げられた深海魚みたいに膨れた。

「あぎゃぁ」

 表情が、弾けるように崩れた。
 首をうねらせ、空中を舐め回す。

「あぐぅ。
 ゆうちゃん……。
 見てる?」
「……」
「言って。
 どうなってるか言って」
「奥まで刺さってる」
「見える?」
「お尻に隠れて、よく見えない」

 理事長は顔を持ちあげ、再び表情を整えた。
 力んだ眉が、阿修羅像みたいだった。

「はぅ」

 理事長は、深淵を覗くように、身を前傾させた。

「見えた。
 見えたよ」
「言って。
 どうなってるか、言って」
「咥えこんでる」
「やらしい?」
「ゆいのおまんこ、動いてる。
 焼き網に載せられたアワビみたい」
「じっとしてると、肉棒を呑みこもうとするの」
「あ、お汁が零れた」
「あぁ……。
 焦れったい。
 がんがん突いて欲しいのに」
「無理よ。
 柱にそんなこと言っても」
「それなら、わたしが動くわ。
 こうやって。
 はぅっ」

 理事長が、身を畳んだまま後ろに跳ねた。
 外敵から逃れるエビのようだった。
 尻が柱を叩き、鈍い音を立てた。

「そんなにしたら、子宮が破けちゃう」
「奥がいいの。
 いいのぉぉ」

 理事長は再び前傾すると、すぐさま身を煽った。
 柱が揺れた。

「はぅぅ」

 理事長は、たちまち往復するピストン機関となった。
 尻が、高速で柱を打ち始める。
 柱は、アフリカの打楽器のように鳴り始めた。

「もう、速すぎて見えない」
「前に、前に来て。
 おまんこ、見せて」

 川上先生が、理事長の前に回った。
 理事長の顔が、川上先生の身体に隠れる。
 この状態なら、わたしへの視線は来ない。
 鏡の裏から片目で覗いてたわたしは、鏡から顔を出した。
 川上先生の肉付きのいい後ろ姿が、目の前にあった。
 みっしりと、隙間も見せず揃った太腿。
 曲線を描いて張り出したお尻。
 そして、腰骨の上で翳を孕む、天使のえくぼ。
 妄想したとおりの裸だった。

「はぅっ。
 はぅっ。
 ゆうちゃん……。
 開いて。
 開いて見せて」

 川上先生の太腿が別れた。
 両膝を外側に割り、腰を落とす。
 いわゆる、がに股の姿勢。
 尻たぶが、羽二重を押したように窪んだ。

「おまんこも開いて」
「できないわ。
 縛られてるんですもの」
「力を入れて。
 ぐっと。
 そう。
 見えた。
 見えたわ。
 ゆうちゃんのハラワタ」
「あぁぁ。
 弄りたい。
 弄りたいよぉ」

 川上先生は、がに股のまま身をくねらせた。

「そんな格好で、オナニーしたいの?」
「したい……」
「したことあるのね」
「……」
「どこで?」
「学校の、おトイレ」
「まぁ、はしたない」
「だって、理事長先生……。
 じゃなくて、ゆいとの夜を考えたら……。
 待ちきれなかったんですもの」
「可愛いわぁ。
 おトイレで、立ったままやったのね」
「思い切り」
「声が出ちゃうでしょうに」
「パンティを咥えて」
「ショーツ脱いじゃってたの?」
「全部脱いでた」
「全裸で?
 変態ね」
「あぁ。
 言って。
 もっと言って」
「変態!
 ゆうの変態!」
「あひぃ」
「でも、ゆうだけじゃないわ。
 ゆいも変態。
 だから2人は、変態姉妹。
 畜生の姉妹よ」
「あぁぁぁ」

 川上先生は、夜の桃みたいに重そうなお尻を、ゆらゆらと揺らし始めた。
 “天使のえくぼ”が翳を孕み、顔のように見えた。

「もうたまらないのね。
 もっと近くに来て。
 わたしが、お口でしてあげる」

 川上先生が、尻たぶを窪ませながら、にじり寄る。
 その尻たぶが跳ねた。

「わひぃ」

 ピストンを止めようとしない理事長の顔が、川上先生の股間を叩いたのだ。
 川上先生は、一瞬砕けかけた腰を立て直すと、理事長の顔を迎えに行った。
 理事長の顔が繰り出されるのに合わせ、腰を煽る。
 わたしからは見えなかったけど……。
 理事長の顔と川上先生の股間が、空中で衝突してるのが、はっきりとわかった。

 理事長のピストンが速まった。
 纏めてた髪が解けた。
 理事長は、散らし髪を振り立てながら、川上先生の股間を抉る。
 川上先生の腰も、輪郭を消し始めた。

「イ、イク。
 イク」

 川上先生が、声を裏返したそのときだった。

「何してるの、あんたたち!」

 叩きつけるような声が、間近から聞こえた。
 わたしは、新たな人物の登場に動転し、その場に身を縮めるしかなかった。
 その人物は、まさに忽然と現れたとしか思えなかった。
 いくら2人の痴態に見入ってたとしても、近づく靴音くらいは聞こえたっていいはずだ。
 身を縮めたわたしに、初めてその靴音が聞こえた。

「おとなしく待ってなさいって、言ったでしょ」

 靴音は少し遠ざかり、その人が舞台中央に進んだのがわかった。

「あぁ」

 川上先生の、嘆きに似た裏声と共に、重そうな響きが床を伝わった。

「はしたない子ね。
 腰抜かしたりして。
 呆れ返ったわ。
 人の顔使ってオナニーするなんて。
 それでも教師なの。
 あらあら。
 もう、何を言っても聞こえないみたいね。
 白目剥いちゃって」

 再び、靴音が響いた。

「でも、こっちはもっと悪いわね。
 仮にも理事長でしょ。
 学校法人の。
 それが、柱に括りつけたディルドゥを、下の口に咥えこむなんて……。
 はしたないにも程があるわ。
 上のお口で舐めてなさいって言ったでしょ。
 まだ、咥えこんでる気?
 抜きなさいって」

 床を、柔らかい音が打った。
 理事長の身体が崩れたに違いない。

「悪い子たちには……。
 お仕置きが必要ね」

 靴音が微かに近づいたけど、逆に声は遠くなった。
 その人は、こちらに背を向けたに違いない。
 音楽やってると、そういう音の気配が感じられるのよ。
 ここまで来て、わたしは我慢が出来なくなった。
 見届けたかった。
 学園の理事長と教師を、自在に蹂躙できるその人物を。

 わたしは、伏せていた身から、ヘビのように首を持ちあげた。
 もし見つかったとしても、縛られてる床の2人は戦力にならない。
 それなら、女同士の1対1だ。
 声の発せられる高さからして、それほど大柄な女性じゃない。
 逃げるチャンスは、十分あるはず。
 そう自分に言い聞かせながら、鏡の裏から顔を覗かせた。

「呆れた人たち。
 2人して気をやっちゃうなんて」

 その人は、仰向いた理事長の枕元に腰を下ろし、顔を覗きこんでた。
 理事長は、白目こそ剥いてなかったけど……。
 視線はあらぬ方を指してて、意識の焦点は結ばれてないようだった。

「ほんとに気持ちよさそうにイッちゃって。
 どうなの、この顔」

 その人の手が、理事長の顎を掬い取った。
 理事長の顔が横を向き、視線がこちらに流れた。
 思わず、首を引っこめそうになったけど……。
 その両目が何も見てないことは、すぐに解った。


「死に顔みたい。
 こんな顔で死ねたら、幸せよね。


 魂を失った抜け殻って、どうしてこんなに美しいのかしら。
 このまま、わたしの魂が身投げしたら……。
 この美しい身体に入れるんじゃないかしら。
 なんてね。
 いくらわたしでも、そこまでの能力は無いわ。
 ほら、いつまで寝てるの!
 起きなさい」

 その人は、理事長を邪険に突き放し、その場に起ちあがった。

「まだ起きないつもり?
 もう気持ちのいい時間は終わりよ。
 先にいい目を見ちゃった子には……。
 たっぷりと痛みを味わってもらうわ。
 どうしてやろうかしら」

 その人は、顎を指先で支え、思案を巡らせてるようだった。

「あら」

 軽やかにヒールを響かせながら、その人は部屋の隅に屈みこんだ。
 再び身を起こすと、手には細長い棒のようなものを持ってた。


本作品のモデルの掲載原稿は以下にて公開中です。
「川上ゆう」 「結」 「岩城あけみ」

《説明》
杉浦則夫の作品からインスピレーションされ作られた文章作品で、長編連載小説のご投稿がありました。(投稿者 Mikiko様)
本作品は毎週日曜日に公開される予定となっておりますので、どうぞお楽しみに。
前作を凌ぐ淫靡と過酷な百合緊縛!「川上ゆう」さん、「YUI」さん登場予定作品です。
時を越え、再び出会った美里とあけみ。現在に戻った美里は、さらなる花虐へと誘われていく…。


放課後の向うがわⅡ-27

 縄を纏った女が2人。
 床には、畳が敷いてあった。
 2人は、その畳に座りこんでる。
 2人の間には柱が立ってて、その柱を挟むように向かい合ってる。
 ひとりの顔は、正面から見えた。
 思ったとおり、川上先生だった。
 想像だけしてた裸が、目の前にあった。
 思ってた以上のボリュームに驚いた。
 お腹の肉が括れを作ってる。
 もう1人の身体は、見事なほど引き締まってた。
 ときおりうねる背中に、筋肉が浮きあがる。
 アップにまとめた髪から、解れた髪がうなじに流れてる。
 同僚の教師に、こんな体型の持ち主は思い当たらない。
 と言って、生徒では絶対ない。
 成熟しきった大人の身体だった。
 誰なのか確かめたい。
 わたしは、危険も忘れて身を乗り出した。
 刹那……。
 川上先生が、高い声で鳴きながら、仰け反った。
 それに応えるように、もう1人が顔を傾けた。
 見えた。
 知ってる顔だった。

 考えてみれば……。
 もう1人が塔の主だってことは、ごく当然のことだったのよね。
 川上先生が、塔への鍵を持ってたわけも、これでわかった。
 でも、理事長には命令されることしか無かったせいか……。
 自分と同じ人間だって意識を、持ってなかったのかも。
 だから、裸を想像したこともなかった。
 これまで、天上から見下ろされてた人が、今、わたしの眼の前にいる。
 性欲を剥き出しにした、1人の雌として。
 激しい興奮が、わたしの脊髄を貫いた。
 下腹が捻られる。
 思わず、スカートの股間に拳を押しあてた。

 2人は、何かささやき交わしてた。
 でも、弦を引くような高音に、くぐもった鼻濁音が混じって、よく聞き取れない。
 もどかしかった。
 2人は、畳にひざまずき……。
 柱に取り付けられた何かを、両側から挟むように向き合ってる。
 柱を中心線にした鏡像みたいな格好ね。
 その柱に取り付けられた何かが、よく見えない。
 最近、近視が進んで、コンタクトが合わなくなってるの。
 声を聞きたいし、2人の姿をもっと近くで見たい。
 我慢できなかった。
 身を移せる場所は、さっきから目に入ってた。
 大きな姿見が、立ててあったの。
 そう。
 ここにある、この鏡よ。

 この姿見が、2人の方を向いて置かれてあったの。
 まるで、2人の舞台を見る観客席みたいに。
 あの裏側なら、隠れられる。
 そうは思ったけど……。
 なかなか踏み出せなかった。
 でも、とうとう好奇心が勝った。

 天上から下がる裸電球は、わざとワット数の小さい電球を使ってるとしか思えなかった。
 2人の舞台をほんのりと浮かびあがらせるだけで、壁際までは届いてない。
 わたしは、手に持ったパンプスを、幕の外に置いた。
 暗がりに揃えられたパンプスは……。
 なんだか、身投げする人が残したみたいに見えた。
 でも、そう思ったら、逆に度胸が座った。
 そう。
 この幕を抜けて、わたしは彼岸に渡るんだ。
 別の自分に変わるんだって。

 もう一度、2人の様子を確認する。
 声はすでにうわ言に近く、忘我の境地って感じだった。
 おそらく、お互いの目の中しか見えてないはず。
 わたしは、幕の裾から這い出した。
 そのまま、壁際に沿って移動する。
 2人と鏡を結ぶ線上の位置で止まり、90度方向を変える。
 鏡が作る死角に身を縮め、這い寄っていく。
 おそらく、こちらを注視されたら、身を隠し切れてはいないはず。
 でも、見られる心配は薄いようだった。
 2人は、眼球を鎖で繋がれたように見つめ合ってたから。

 ようやく、鏡の真裏に身を寄せた。
 大振りな鏡は、おそらくわたしの全身を隠してくれてる。
 わたしは、鏡の縁から、そっと顔を覗かせた。
 2人の姿が、間近に見えた。

 柱から突き出てるものの正体が、ようやくわかった。
 それは、わたしの想像を超えた、最低に下品な代物だった。

 張り型だったのよ。
 わかる?
 勃起した陰茎を象った作り物。
 安っぽい肌色の質感が、よけいに淫猥に見えた。
 バイブみたいな棒型じゃなくて、陰嚢を模した平らな基部を持ってる。
 立てておけるのね。
 その基部が柱に密着し、陰茎は水平におっ勃ってる。
 もちろん、柱に括りつけられてるわけ。
 それがまた、白い布でね。
 まるで、褌を絞めたみたい。
 褌の脇から、ちんぽを突き出した変態男。
 その陰茎を、一生懸命2人で舐めてるの。

 理事長は、張り型に舌先を這わせてる。
 陰茎の肌には、誇張された血管が巡ってる。
 浮き出た血管を舌が乗り越えるたび、舌体がビラビラと震える。
 陰唇みたい。
 女の口が性器だってことが、まざまざとわかる。
 川上先生は、舌先で亀頭をなぞってる。
 張り出したカリ首を、愛おしむように。
 わたしはエラの張ったカリが好きなんですって、一生懸命舌が言ってた。


 ここまで近づくと、2人の声もはっきり聞こえた。
 はしたなくて、イヤらしい雌同士の会話。

「理事長先生……。
 頬張りたい。
 お口いっぱいに」
「ダメよ……。
 お預けって言われてるでしょ。
 舐めるだけって」
「欲しいの……。
 ノドの奥まで」
「あぁ……。
 そんなこと言わないで。
 わたしも欲しくなっちゃう。
 このカリで、おまんこの襞を研ぎ下ろされたら……。
 どんなにいいでしょう」

 聞いてるほうが、おかしくなりそうだった。
 わたしは、スカートの上から、拳を股間に押し当てた。
 太腿に力を籠めると、お汁が滲むのがわかった。

「理事長先生、もう我慢出来ない。
 お口に欲しいの」


「ダメダメ。
 叱られるわ」
「ちょっとだけ。
 だって、ほったらかしにするあの方が悪いのよ」
「もうすぐよ。
 もうすぐ戻ってらして、お預けを解いてくださるわ」

 この会話で、わたしは総身に水を浴びたように震えあがった。
 どうして気づかなかったんだろう。
 目の前の2人は、どちらも後ろ手に縛られてる。
 ひとりがもうひとりを縛ることは出来ても……。
 残された1人は、自分自身を縛れない。
 つまり、もう1人いたのよ。
 この2人を縛った誰かが。
 わたしは床に突っ伏し、身を縮めた。
 その誰かに、真後ろから襲われそうな気がした。

 ここから、逃げなければ。
 もう一度、2人の視線を確かめる。
 陰茎を舐めあがった理事長も、舌先を亀頭に這わせてた。
 2人の女は向かい合い、舌先を炎のようにちらつかせてる。

 こっちは見えてない。
 身を翻すタイミングを図る。

「まだなの?
 まだお姉さまはお戻りにならないの?」
「ほんとに遅いわねぇ」

 わたしは、反転しかけた身を止めた。
 お姉さま?
 ということは、第3の人物は女性だ。
 しかも、“あの方”という言葉を使うからには、それもひとり。
 そうであれば、さほど恐れることはないではないか。
 ここにいる2人は、後ろ手に縛られ、戦力にはならない。
 もうひとり現れたとしても、実際には一対一だ。
 逃げる隙はあるはず。
 それに……。
 この2人を縛った“女性”を、どうしても見届けたかった。
 わたしは、反転させかけた身を戻し、再び鏡の後ろにうずくまった。

「ゆうちゃんにちょうだい。
 このおちんちん、ちょうだい。
 ゆうちゃん、お口一杯に頬張りたいの」
「またそんな赤ちゃん言葉使って。
 ずるい子ね。
 その甘ったれ声で、お姉さまに気に入られようとしてるのね」
「そんなことしてません。
 どうしてそんなこと言うの?
 おかしいわ」
「そうなの。
 あの方が現れてから……。
 頭の中が、大混乱。
 ゆうちゃんが、ハーネスを付けたあの方に犯されてるとこ見ると……。
 悲しくて切なくて、涙がボロボロ出るのに……。
 下のお口からも、お汁がどんどん溢れてくる。
 わかる?
 この気持」
「すごくわかる」
「うそうそ」
「わかるもん」
「じゃ、今日は、わたしがお姉さまに犯されてもいい?」
「いや。
 理事長先生のそんな姿、見たくない」
「“理事長先生”は、やめて。
 そんな偉そうな肩書きで崇められる日常が、ほんとは好きじゃなかった。
 あの方が現れてから、それがはっきりわかったの」

「あの方に命令されると、嬉しくて仕方ないの。
 ご褒美に、足の指をしゃぶらせていただくのが、至福のとき」
「理事長先生……」
「だから、それはやめて。
 名前で呼んで。
 結(ゆい)って」
「ゆい?」
「そうよ。
 ゆうとゆい。
 まるで、双子の姉妹みたい」
「双子?」
「そう。
 2人は、羊水の中にいるときから、裸で寄り添ってたの」
「そして今も?」
「そうよ。
 だから今も、2人とも裸」
「でも、ゆうは、威厳のある理事長先生が好きなのに」
「2人だけのときは、これからもそうしてあげる。
 でも、あの方の前では、双子の姉妹にさせて」
「ゆいとゆう?」
「そう。
 ゆうとゆい」
「わかった」
「じゃ、いいでしょ?
 今日は、わたしが犯される番。
 ゆうに見つめられながら……。
 欲しいままに犯されたいの。
 あぁ。
 まだかしら。
 もう、我慢出来ないわ」
「どうする気?」
「このディルドゥを、あの方がハーネスに装着するまで待てないの。
 今、欲しいの」

 理事長は、その場に起ちあがった。
 後ろ手に縛られた身体が、よろめいた。
 脚が痺れたというより……。
 ささやき交わした睦言のせいで、腰が抜けそうなほど興奮してるのがわかった。
 股間から垂れ零した液体で、ナメクジが這ったような筋が、太腿を伝っていた。

「見て。
 ゆいが後ろから犯されるとこ」

 理事長は、腰をかがめながら顔をひねり、川上先生を見上げた。

「ダメよ。
 叱られるわ」
「叱られてもいいの。
 いいえ。
 叱られたいの。
 罰されたいの」


本作品のモデルの掲載原稿は以下にて公開中です。
「川上ゆう」 「結」 「岩城あけみ」

《説明》
杉浦則夫の作品からインスピレーションされ作られた文章作品で、長編連載小説のご投稿がありました。(投稿者 Mikiko様)
本作品は毎週日曜日に公開される予定となっておりますので、どうぞお楽しみに。
前作を凌ぐ淫靡と過酷な百合緊縛!「川上ゆう」さん、「YUI」さん登場予定作品です。
時を越え、再び出会った美里とあけみ。現在に戻った美里は、さらなる花虐へと誘われていく…。