管野しずか「杉浦則夫緊縛桟敷」にて掲載開始。
私が女の裸を覗き見たのは小学生の夏休み、営団住宅の親戚の家に遊びに行っているおりでした、隣の家は小さな庭越しに開け放った部屋がすっかり見えるような作りでした、私は夏の朝の爽やかな光を窓越しに隣家の窓を見つめていると突然裸の成熟した女が窓を開けて朝陽を身体に塗り込むような仕草で佇んだ、キラキラと輝く乳房、小麦色の肌、胴回りのくびれの真ん中にある臍、初めて見る女の裸の美しさ見せたのは隣家に遊びにきていた婦人の妹さん。
そんな記憶をもとに下着を着替える女から撮り出してみました、覗きの楽しみは視姦者の熱い眼差しが開放された日常生活にある女に透明人間のごとく絶対にきずかれることなく女の仕草と同調しながら興奮を高めるところにある、そんなシーンを管野は艶めかしく創ってくれた、彼方を見つめる寂しげな横顔の美しさをみせてこれから始まるドラマの用意をつくる。
厳しく縄とめされた腕の血流は徐々にとまりなをも重なる責め縄の痛みが美しい顔に苦しみの波紋をひろげる、身体の奥深くからはく海女の口笛の如き音色の一つ一つに美しき顔はくずれ被虐の美が深まる
管野しずかの美しさははかない蜻蛉(かげろう)の美だ、だが被虐に堕ちるしずかは真っ赤な夕陽が水平線に堕ちる神々しさ表す、最後の光を水平線に落す哀しげな旋律、愛の意味を哀しさに封じた女、痛みを性的服従にする女、ここに写る股間のほとばしりはなによりの証。
管野しずか「杉浦則夫緊縛桟敷」にて掲載開始。
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放課後のむこうがわ 20
本作品のモデル「岩城あけみ」の緊縛画像作品はこちらからご購入可能です。
「姉妹で、同じ名前のわけないでしょ?
もちろん、親子でもね。
それならもう、答えはひとつよね。
あのあけみは……。
わたしなの」
「そんな……」
「まだ、信じられない?
それじゃ……。
これを見たら、どうかしら」
先生は、教室の隅に据えられた教卓に身を移した。
スーツのポケットから鍵を取り出すと、引き出しを開けた。
引き出しから出てきたのは、木製の箱だった。
先生は少しおどけた仕草で、小箱を捧げ持っちながら戻った。
ピアノの上に、小箱をそっと載せると、蓋を開いた。
「これ、あなたに返すわね」
先生の華奢な指が、箱から布地のようなものを摘みあげた。
わたしの目の前に、布地がぶら下げられた。
「見覚えあるでしょ?」
先生の指先が開き、布地がわたしの膝に落下した。
わたしの身体は、爆弾を渡されたように跳ねあがった。
布地は、スカートの上で丸まってた。
広げるまでもなく……。
それが何なのかわかった。
あの校舎に、わたしが置いてきたショーツ。
でも、鮮やかなレモンイエローだったショーツは……。
すっかり色がさめてた。
「ふふ。
あれから……。
14年経つのよ
ほんとに長かった。
棚橋さん。
わたしの話、聞いてもらえるかしら?」
先生はグランドピアノに片手を掛け、窓の外を遠い目で見ながら、話し始めた。
「わたしも、この学園の卒業生なの。
入学したのは、14年前。
この鉄筋校舎に建て替えられる前の、最後の世代ね。
わたしは、あの木造校舎が大好きでね。
思い出すのよ。
小学校の校舎を。
うちの家庭は、ちょっといろいろあって……。
小学校のころ、田舎のおばあちゃんに預けられてたの。
小学校も、そこで通った。
木造校舎でね。
裏がすぐ山だった。
放課後は、その山の中を、薄暗くなるまで友達と駆けまわったものよ。
でも、中学に入ると親に引き取られて……。
神戸に移った。
田舎に帰りたくてしょうがなかった。
両親とも馴染めなかったし。
親も、好きで引き取ったんじゃないって態度、隠そうともしなかったから。
で、中学終えたら、家を出て働きたかったんだけど……。
見栄っ張りの両親は、そんなこと許してくれそうもなかった。
そんなとき……。
歯医者さんの待合室で手に取った雑誌に、この学校のことが載ってたの。
写ってる木造校舎に、ひと目で引きつけられた。
でも、写真の説明書きには、その校舎は近々取り壊されるって書いてあった。
同じ兵庫県の学校だし、壊される前に見に行こうと思った。
で、記事を詳しく読んでみたら……。
その学校が全寮制だってことがわかったの。
校舎が壊されるのは、翌年の夏休み。
入学すれば、一学期だけだけど、この木造校舎に通える。
もう、迷いは無かった。
歯医者さんの受付で、雑誌を貸してもらえないかって頼むと……。
次月号がもう出るから、差し上げますよって。
その夜、思い切って両親に相談した。
雑誌を見せたら、両親はあっさりと認めてくれたのよ。
その学校が、偏差値の高いお嬢様学校だってことは……。
後からわかった。
ここなら、両親の見栄も満足できたってわけね。
おかげで、試験勉強には苦労させられたけど。
入学したときにはもう、この鉄筋校舎が出来てたわ。
授業なんかは、こっちで行われたの。
でも、木造校舎は残ってたのよ。
母親も卒業生だって子が言うには……。
OGから、取り壊し反対の声があがってたんですって。
思い出の校舎なんだから、当然よね。
でも、グランドが狭くて、とてもここでの存続は無理だった。
移築話も、いくつか持ち上がったみたいだけど……。
まとまらなかったみたい。
で、結局……。
夏休み前の創立記念日に、旧校舎への感謝祭を行った後……。
取り壊されることになったの。
それまでは、OGたちが名残を惜しむ期間にしたわけ。
で、使われない教卓にも、毎朝花が飾られ……。
黒板の文字も、そのままにされてた。
別れを告げに来るOGのためにね。
旧校舎への生徒の立ち入りは、いちおう禁止されてたけど……。
特に、バリケードとかしてあったわけじゃないしね。
普通に入れたわ。
やっと再会できた木造校舎と、すぐにお別れになるんですもの。
残りの時間を噛み締めるみたいに、何度も足を運んだわ。
そんなときよ。
ともみさんと出会ったのは。
彼女は、わたしと会うなり、鞄からロープを取り出したの。
『お待たせ』って言ってね。
わけがわからないままに、わたしはうなずいてた。
あとは、あなたの見たとおり。
放課後の校舎には、訪ねてくるOGもいなかった。
その校舎で……。
幾度も逢瀬を重ねた。
逢瀬の度にともみさんに縛られた。
ともみさんには、何度も尋ねたわ。
どこの学校?、って。
近くでは見かけない制服だったからね。
でも、彼女は答えてくれなかった。
しつこく聞いたときには、猿轡を噛まされることもあった。
そんな2人の逢瀬の日々は、創立記念日を境に断ち切られた。
旧校舎への感謝祭が行われた翌日、もう校舎はバリケードで囲まれてたの。
分厚い鉄板みたいな壁で覆われて、どこからも入りこめなかった。
ともみさんとの連絡手段を持ってないことに、改めて気づいた。
無理に聞くと、2人の世界が壊れるような気がして、ずっと聞けないでいた。
今さらながら後悔したけど、ほんとにもう、後の祭りってこと。
あの制服が、どこの学校なのか……。
京都や大阪まで調べた。
でも、どこにも無かったの。
やがて旧校舎の跡地は整地され、テニスコートになった。
もちろん、ともみさんは帰って来なかった。
でも、ともみさんのことを、どうしても忘れられなかったの。
卒業して、大学に進んでからもね。
で、この学校にいさえすれば、いつかともみさんが訪ねて来るんじゃないかって思った。
ともみさんとわたしを繋いでるのは、この学校しかないんだからね。
教職の資格を取ると、わたしはこの学校に戻って来た。
この学校の音楽教師になって、もう8年になるわ。
でもともみさんは、一度も訪ねて来てはくれなかった。
ともみさんは……。
わたしの胸の中にだけ棲んでるんだって、近頃やっと思えるようになった。
そんなときよ。
転校して来たあなたに出会ったのは。
背筋が凍るようだった。
あの時……。
あの校舎に一緒にいた子だって、ひと目でわかった。
でも……。
そんなことあるわけないのよね。
あれから、14年も経つんだから。
あの時の子が、同じ姿のまま現れるなんて、ぜったいにあり得ない。
他人の空似だって……。
自分に言い聞かせた。
でも、そうじゃないってことが、つい最近わかったのよ。
うちの学校ね、来年度から制服がリニューアルされることになったの。
まだ、生徒には告知されてないけどね。
こないだ、新しいデザインが、教師にだけ披露された。
息が止まったわ。
新しいスカートは……。
グリーンとネイビーのタータンチェック。
そう。
手触りも全く同じ。
ともみさんが履いてたスカートよ。
わかったでしょ?
つまりともみさんは、これから入学してくるのよ。
この学校にね。
でも、残念ながら……。
もうちょっと先かな。
だって、ともみさんはあなたのこと、知らなかったもの。
あなたもそうだったでしょ?
たぶんともみさんの入学は、あなたが卒業した後ね。
ふふ。
信じられない?
でも、間違いないことなの。
やっと理解できたのよ。
ずっと不思議に思ってたことがね。
高校生のともみさんが……。
どうして、あんなに上手に縄を使えたのかってこと。
あれはね……。
わたしが教えるからよ。
そう、これから……。
みっちりとね。」
そう言って、あけみ先生は……。
スカートを両手で摘み、裾を吊りあげていった。
ストッキングは、太ももで途切れてた。
ガーターベルトの無い、オーバーニーストッキング。
やがてスカートの裾が、股間を越えた。
そこには、あるべきものが無かった。
先生は、ショーツを穿いてなかったの。
剥き出しになった下腹部には、黒い翳りも無かった。
陰毛が、痛々しいまでに剃り上げられてたわ。
先生はスカートを、おヘソの上まで捲りあげた。
股間を中心とした腰回りが、すべて曝された。
先生が言った「わたしが教えたの」って意味は、すぐにわかった。
先生の股間には、二重に回された縄が、T字型に喰い込んでたの。
性器にあたる部分には、大きな結び目が作られてた。
縄の脇から捲れ出たラビアが、その結び目を咥えてた。
そう。
まるで……。
傷口に盛り上がる……。
樹木の……。
肉瘤のように。
おわり
文章 Mikiko
写真 杉浦則夫
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杉浦則夫プライベート緊縛写真
先日の奈加あきら縛師の縄の会に呼ばれ最後のおつかれ懇談のさい、参加者の人から
「今月発売のマニア倶楽部に掲載された杉浦さんの写真は本当に二人だけで写真を撮っているのか?というのはあなたにあのような縛の技術があるとは思えなく今われわれのマニアの間で大変な議論になっていますから本当のところを教えて下さい。」との質問がありました。
掲載写真はおもに新宿の歌舞伎町のはずれにあるラブホで二人で撮り始めて1年あまりになる写真の一部です。
マニア倶楽部の掲載写真にはおとぎ話のようなキャプションがありましたが、せっかくドキュメンタリーに撮ったものをあのような文章を添付されてはまったく迷惑である。
この写真は私としては初めての試みでありまだ制作途中にあり、美帆の随想記をくわえて4月頃に桟敷の電子ブックとして発売したく今後も撮影をすすめていきます。
今の時期に美帆は伊藤晴雨がとったような雪中の写真を撮りたいとわたしを困らせている、どなたか関東で民家の軒下で雪のあるロケーションを貸してくださいませんか?
放課後のむこうがわ 19
本作品のモデル「岩城あけみ」の緊縛画像作品はこちらからご購入可能です。
わたしが夢から醒めたときには……。
もう、窓からの光が、だいぶ傾いてた。
一瞬、自分がどこにいるのかわからなかったけど……。
剥き出しの下半身が、すべてを思い出させてくれた。
裸のお尻に、鳥肌が立ってた。
教室を見回しても、ともみさんもあけみちゃんもいなかった。
今度こそ、置いてかれたみたい。
誰もいない教室で、下半身裸でいることが、いたたまれなかった。
誰かに見つかるんじゃないかって、恐ろしくなった。
わたしは、隠しようもない下腹部を晒したまま階段を駆け降りた。
「あぁ」
安堵の溜息が、声になって零れた。
1階の床には、わたしのスカートと鞄が落ちてたの。
わたしが戻るのを待ってくれてたみたいに。
鞄はともかく、スカートが無ければ、校舎を出ることさえ出来ないんだからね。
ほんとにホッとした。
ショーツは見当たらなかったけど。
スカートを着けてあたりを見回した。
でも、あの2人の姿はもちろん……。
あの2人の持ち物も、何ひとつ残ってなかった。
わたしを置いて、2人で行っちゃったのかと思うと、切なかった。
でも、スカートや鞄を置いてってくれた気持ちが、すごく嬉しかった。
わたし、小学校のころ、虐められてた時期があってさ。
よく、持ち物隠されたんだよね。
鞄を抱えて木造校舎を出ると、体育館脇の通用口から新校舎に戻った。
鍵が掛かってるんじゃないかって心配したけど、大丈夫だった。
人影のほとんど無い新校舎を駆け抜け、寄宿舎まで一直線。
その晩は、なかなか寝付けなかった。
疲れてたはずなのにね。
ともみさんとあけみちゃん、2人と知り合えた興奮が収まらなかったんだ。
新しい友だちが出来たっていうより……。
わたしにとっては、肉親に出会えたみたいなもの。
そう、“変態”という血を分けた、かけがえのない肉親なんだよ。
翌日は、放課後が待ち遠しかった。
もちろん、また2人に会いに行こうと思ってさ。
終礼のチャイムが鳴ると、真っ直ぐに体育館脇に向かった。
人通りの絶えたタイミングをはかり、通用口を抜ける。
踏み段から駆け出したわたしの脚が……。
止まった。
無かったのよ。
木造校舎が。
確かにきのう、木造校舎のあった場所は、テニスコートになってた。
わたしは、ふらふらとコートまで歩いた。
確かに、ここだったはず。
でも、何度見回しても、何もない。
まだ部活が始まってないらしく、コートには誰もいなかった。
テニスボールがひとつ、赤土の上に転がってた。
いくら何でも……。
たった一晩で校舎が取り壊されて、テニスコートに変わるわけがない。
場所を間違えて覚えてたんだって思った。
記憶が混乱してるんだって。
それから、校内を探しまわった。
隅から隅まで探した。
でも……。
木造校舎なんて、どこにも無かったの。
小さなものを探してるわけじゃないんだよ。
校舎なんだからね。
見つからないわけ、無いじゃない。
もちろん、諦めきれなかった。
翌日も探した。
その翌日も。
でも見つからない。
勇気を出して、新しいクラスメイトにも聞いてみた。
木造校舎への行き方。
答えはひとつだった。
そんなもの知らないって。
みんなして口裏合わせて、わたしに教えないんじゃないかって思った。
やっぱり、わたしの友達は、あの2人しかいないんだ。
探すうちに、どんどんそう思いこんでいった。
絶対見つけてやるって……。
意地になった。
何日探したろう。
その日の放課後も、木造校舎への入口を探して、校内を歩きまわってた。
そしたら、体育館脇の通用口あたりで、音楽の先生と鉢合わせしたの。
ていうか、その先生、わたしのこと待ってたみたいなのよね。
転校して間もなかったから、音楽の授業を受けたのは、まだ数えるほどだった。
でも、初めての授業のときから、ヘンな気がしてたんだ。
わたしのこと、じっと見るの。
転校生だから、気にかけてくれてるのかなとも思ったんだけど……。
なんか、粘り着くみたいな視線を感じてね。
で、わたしは一礼して擦れ違おうとしたんだけど……。
先生に声をかけられた。
「棚橋さん?
だったわよね」
「はい」
「何かお探し?」
「い、いいえ。
別に」
「それじゃ、少しいいかしら?
お話ししたいことがあるの。
音楽室に来てくれない?」
気が進まなかったけどね。
転校早々、教師に楯突くわけにもいかないし……。
渋々、後をついて行った。
音楽室の扉を開けると、中は真っ暗だった。
窓に緞帳が下がってたの。
暑かった。
「今開けるわね」
先生は、教壇に近い緞帳を、一面だけ開けた。
窓の外から西日が射して、床材の木目に伸びた。
新しい鉄筋校舎だったけど……。
音楽室だけは、床も壁も、木製だったんだよ。
先生は、窓も少しだけ開けた。
「あんまり、風入らないわね。
少し暑いけど、我慢して。
寮に帰ったら、お風呂入れるでしょ?
あ、そこ座って」
先生は、ピアノ椅子を指差した。
グランドピアノの前に据えられた椅子。
一瞬、試験でもさせられるのかと思った。
でも違った。
「部活とか、決まった?」
「いいえ」
「よかったら、写真部に入らない?
わたしが顧問をしてるの」
「はぁ」
「どうやら……。
わたしのこと、覚えてないようね」
わけもわからず、先生を見上げた。
「それじゃ、これならどうかしら?」
先生の両手が、顔の脇まで上がると……。
メガネのセルフレームに添えられた。
フォックス型の黒セルだった。
先生は、メガネをゆっくりと外した。
「あ!」
「やっと、気がついてくれたみたいね」
メガネフレームの外れた顔は、つるんとした卵みたいだった。
そう、その顔はまさしく、あの「あけみちゃん」にそっくりだったの。
でも、木造校舎で見た「あけみちゃん」は、間違いなく同年代の子だった。
それに対し、目の前の先生は、どう見ても二十代後半……。
ひょっとしたら、もっといってたかも。
「会ったでしょ、この顔に?
木造校舎で」
わたしは、うなずくしか無かった。
「もっとも、年齢は違うけどね。
あの子、誰だと思う?」
「妹さん、ですか?」
「ハズレ。
あの子の名前、覚えてる?」
「あけみ……、ちゃん」
「そう。
そしてわたしの名前は……」
先生は、扉の脇を指差した。
そこには、火元責任者を表示するプレートが掛かっていた。
プレートに書かれた名前は……。
第二十話へ続く
文章 Mikiko
写真 杉浦則夫
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