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「わたしだけ残して、イッちゃうなんて……。
ひどいぃ」
あけみちゃんは、腰をくねらせてた。
股間が堪らなくなってたんだと思う。
でも、後ろ手に戒められた姿では、自らを慰めることも出来ない。
あけみちゃんは唇を噛むと、上体を起こした。
視線は、ともみさんの股間を真っ直ぐに貫いてた。
ともみさんのスカートは捲れたままで、人形みたいな下半身が剥き出しになってた。
わたしの位置からは見えなかったけど……。
あけみちゃんの眼前には、イッた後のおまんこが、ぱっくりと開いてたはず。
あけみちゃんの視線は、そこに縫いつけられてる。
あけみちゃんの身体が、ゆっくりと上下動を始めた。
最初は、何してるんだろうって思った。
でも、すぐにわかった。
あけみちゃんは、括りつけられた階段柱に、お尻を擦り付けてるのよ。
視線と、お尻からの刺激だけで、ともみさんの後を追うつもりなんだとわかると……。
こっちの股間も切なくなった。
指先が、他人の手みたいに太腿を這いあがった。
ショーツの股ぐりから滑りこむ。
もう、中はぐちょぐちょだった。
よっぽど溜まってたんだね。
だってさ……。
転校してから、一度もオナニーしてなかったんだよ。
寄宿舎だったから、落ち着いて出来る場所も無いし。
もっとも、新しい環境に慣れるのに必死で、そんなことしてる余裕もなかったけどね。
でも、やっぱり溜まってたんだね。
ぐちょぐちょの陰毛が指先に絡むと、もう止められなかった。
大陰唇を押すと、お汁が沁み出すんじゃないかってほど。
あけみちゃんは唇を食いしばり、懸命にお尻を振ってる。
胸前に垂れた髪が、跳ねるように揺れてた。
わたしはあけみちゃんのお尻を凝視しながら、指先をシンクロさせた。
でも、こっちは直接クリに触ってるわけだから、あっという間に追い詰められた。
内履きの中の足指を、懸命に折りたたんでブレーキかけたんだけど……。
止められそうになかった。
もうダメ、イク……。
って思った瞬間。
「誰、あなた」
はっきりした声が、わたしの頬を打った。
わたしは、一瞬で凍りついた。
目だけ動かして、声の出処を見た。
ともみさんだった。
仰向いた顔が、真っ直ぐにこっちを向いてた。
さっきまで真っ白だった目蓋の間には、ダイスの目みたいに瞳が戻ってた。
あけみちゃんのお尻を凝視しようとして、廊下の角から身を乗り出しちゃってたんだね。
ともみさんの位置からは、わたしの姿が丸見えだった。
ともみさんは、糸に引かれる人形みたいに、ゆっくりと身を起こした。
「まさか、観客がいたとはね」
起ちあがったともみさんは、スカートの埃を叩いた。
もちろん、逃げようとしたんだけど……。
情けないことに、ずっとしゃがんでたから、脚が痺れちゃってて。
踏み出そうとしたら、廊下に這いつくばっってた。
「動かないで」
ともみさんに決めつけられると、もう体を持ち上げられなかった。
「メガネさん。
あなた、何年生?
ま、1年以外、あり得ないだろうけど。
どう見ても、中学生だからね。
あけみと同じ制服着てなかったら……。
へたすりゃ、小学生に見えるよ」
ともみさんは、あけみちゃんを振り返った。
「この子、知ってる?」
わたしを見つめるあけみちゃんの首が、左右に振れた。
「どういうこと?
まさか、1年じゃないの?」
「て、転校して来たばっかりで……」
「なんだ。
転校生。
それで、こんなとこに迷いこんだの?」
わたしは、懸命に頷いた。
「そうよね。
そんな体型で、1年以外のわけないわ。
でも……。
お股の方は、もう立派なオトナってことよね。
わたしたちのこと見ながら、オナってたんだから。
ふふ。
さっき、イク寸前だったでしょ。
小学生みたいな顔で、小鼻膨らませてさ。
すっごく、ヤラしかった。
あなたも、立派なお仲間ってことね。
わたしたち、変態人間の。
さ、こっちおいで。
今さら逃げられないわよ。
わたし、陸上部だもん。
ほら、起って。
ちょっと、手伝ってもらいたいことがあるんだ」
ともみさんの声に応えて、わたしは起ちあがってた。
オナニーしてるとこ、まともに見られて……。
どんな言い逃れも出来ないってこともあったけど……。
きっと、人に声かけてもらえたことが嬉しかったんだね。
一生懸命、ひとりで頑張ってたけど……。
やっぱ、寂しかったんだよ。
わたしは、痺れた脚を引きずりながら、木橋の前に立った。
土間コンクリートの川に架かる橋は……。
まるで、この世とあの世を隔てる橋みたいに見えた。
そう、橋の向こうは“彼岸”。
おばあちゃんが言ってた、あの世の岸ね。
わたしは、ともみさんとあけみちゃんの目を交互に見ながら、その橋を渡った。
「あなたに、やってもらいたいことがあるんだ」
そう言ってともみさんは膝まづき、床の鞄を開いた。
取り出したのは、厚めの本っていうか、お弁当箱みたいなものだった。
「これ、何だと思う?」
そう言いながらともみさんは、箱をかちゃかちゃ操作した。
箱は、たちまち立体的なフォルムに変形した。
「まだわからない?
骨董品だからね。
これは、カメラよ。
ポラロイドカメラって云うの」
組みあがった前面には、確かにカメラの形が張り出してた。
「さっき、陸上部なんて言ったけど……。
大嘘。
ほんとはね……。
写真部。
部長なのよ、これでも。
だからわたしは3年生で、あなたやあけみより、2学年上ってこと。
入学以来……。
みっちり顧問の先生に鍛えられたおかげで……。
コンクールにも入賞したわ。
風景写真だけど。
でもね……。
わたしがほんとに撮りたいのは……。
女性。
それも、特殊な状況下に置かれた女性。
今の、あけみみたいにね」
そう言ってともみさんは、あけみちゃんにカメラを向けた。
あけみちゃんの視線は、一瞬でカメラのレンズに定まった。
ともみさんの視線も、ファインダー越しにあけみちゃんを見つめてるはず。
2人は見つめあったまま、凍りついたように動きを止めていた。
もう動かないんじゃないかと思ったころ……。
ようやく、シャッター音が響いた。
シャッター音っていうか、機械が駆動するようなウィーンって音ね。
ともみさんは、胸前に下ろしたカメラを見つめてる。
すぐに、カメラから厚い印画紙が出てきた。
ともみさんは、出てきた紙をじっと見つめてる。
頬に、微笑みを浮かべながら。
まるで、母親が赤ん坊の顔を覗きこむようにね。
時間が止まったみたいに思えたころ……。
ようやく、ともみさんの顔が上がった。
「ほら、よく撮れてるでしょ?」
あけみちゃんが、真っ直ぐこっちを見てる写真だった。
不思議な質感の写真。
デジカメで撮ったのとは、雰囲気がぜんぜん違う。
レトロっていうかさ……。
今撮ったばっかりなのに、昔の写真みたいなの。
第七話へ続く
文章 Mikiko
写真 杉浦則夫
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