愛に嫉妬はにがい毒の味でそれなしでは愛もあじけないものだがひとたびこの魔物がのさばりはじめると猜疑心と妄想が愛を暗黒の奈落へとじこめ緑色の苦汁の毒をはく。俺はそんな経験を幾度もくりかえしたなかでも記憶に残るものはそんなどん底での、ちわ喧嘩で怒りのあまり目から青い光が飛んだ、おおげさと思われるかもしれませんがボワーと濡れた目から青い光を発したのです。夜の街なかであった、俺は空洞とした体をひるがえしそこを去った、それでなかったら俺は犯罪者に落ちていたであろう二度としたくない恋、と思いながら三つ子の魂の芽はふつふつと芽生えてしまう瘋癲老人の域にある。
このような物語を作りました。年始あいさつに社長宅を訪れた事務員あんりはあらぬ疑いをかけられて局の入れた眠り薬の入ったお茶を飲まされて眠りに落ちているところを形相恐ろしくした神田つばき奥方の縄めにかかり縛り上げられて折檻を受けるのだある、この女史所有欲が強くわが財産のびびたる物も人手に渡るのを悔しがり事務員あんりの鞄をあさりこれもこれもわが夫の貢ぎ物と凄まじい声をはりあげて責めるのである、身におぼえの無いあんりははらはらと涙をこぼし釈明するのであるが嫉妬に狂う局にその声はとどくはずがない、嫉妬の毒牙にかかりしあんりの身。