放課後のむこうがわ 3

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放課後のむこうがわ 3

「ふふ。
 待ちきれないって顔ね。
 それじゃ……。
 わたしの質問に、ちゃーんと正直に答えたら……。
 ご褒美をあげるわ。
 いい?」

 あけみちゃんの頚が、上下に振れた。
 肩先を包む髪が、大きく戦いだ。

「それでは、第一問。
 夕べは……。
 わたしのことを思いながら……。
 オナニーしましたか?」
「……」
「しましたか?」
「……、はい」
「声が小さい!」
「しました」
「何を?」
「……、オナニー」
「ちゃんと続けて言って。
 小学生じゃないんだから」
「オナニー、しました」
「よろしい。
 それでは、第二問。
 どこでしましたか?」
「お部屋のベッドで」
「ふーん。
 いまいち、つまんないわね。
 ま、一番集中できるとこではあるけど。
 それじゃ、第三問。
 どうやってしましたか?」
「指で……、しました」
「指で、どうしましたか?」
「触りました」
「どこを?」
「あそこです」
「あそこじゃわかりません」
「クリ……、ちゃん」
「あんなヤらしいとこに、ちゃんづけしてどうすんの。
 あれはね、陰核っていうの。
 ほら、もう一回言って。
 どこを触りましたか?」
「……陰核」
「そのときは、裸でしたか?」
「パジャマの上は、着てました」
「ということは、下は?」
「裸です」
「パンティも?」
「脱いでました」
「どんな格好でしましたか?」
「ベッドに正座して……」
「ふふ。
 こないだ言ってた格好ね。
 正座したまま、上体だけ前に倒して……。
 顔を布団に埋めるっていう?」
「はい」
「どうして、そんな格好でするようになったの?」
「声が……」
「あ、そうか。
 部屋の外に聞こえるほどの……。
 はしたなーい声が出ちゃうわけね。
 それで、顔を布団に埋めて堪えてる。
 それでも漏れちゃうでしょ?」
「お布団、口いっぱいに頬張って……」
「ありゃりゃ。
 終わった後は、布団ぐちょぐちょ?」
「はい」
「あー、ヤらしい子。
 それでは、そんなヤらしいちゃんに、質問を続けます。
 その格好で、どうやっていじるんですか?」
「手を、身体の下から伸ばして」
「股ぐらをいじくるわけね」
「はい」
「お尻丸出しで?」
「はい」
「ほんとは、その格好……。
 誰かに見られたいんじゃないの?
 お尻の穴まで晒してる姿を」
「み、見られたいです」
「誰に?」
「ともみさん」
「よろしい。
 じっくり見てあげるね。
 でも、その前に……。
 わたしのを先に見てもらおうかな。
 すっかり気分出ちゃった」

 そう言ってともみさんは、タータンチェックのスカートをたくし上げた。
 純白のショーツにくるまれた、丸々としたお尻が見えた。
 何かスポーツでもやっているのか、筋肉みたいなお尻だった。
 両手が、布地を捲り下ろした。
 お尻の割れ目が、一瞬だけ見えた。
 でも、スカートの裾が落ちて、すぐにお尻は隠れた。
 ともみさんは上体を折ると、片足ずつ上げて、足首からショーツを抜いた。
 再び直立したともみさんは、小さく丸まったショーツを、指先でぶら下げた。
 あけみちゃんの目の高さまで上げたショーツを、風鈴みたいに振った。

「ほしい?」
「ちょうだい!」
「だめー。
 この前みたいに、口の中に押しこまれたら……。
 穿いて帰れなくなっちゃうもん。
 グチョグチョで。
 今日は、匂いだけね」

 ともみさんが、腕を真っ直ぐに伸ばした。
 あけみちゃんは懸命に顔を突き出し、布地の匂いを嗅ごうとしてた。

「はいおしまい」
「あぁっ」

 ともみさんは、床に置いた鞄の上にショーツを落とした。
 鞄に、白い花が咲いたみたいだった。

「今日は、おあずけ責めにしてあげようか?
 ふふ。
 切なそうな顔して……。
 可愛い。
 それじゃ……。
 もっと切なくなってもらいましょう」

 ともみさんは足幅を開くと、スカートの裾を持ち上げた。
 胸前に、扇のように広げてる。
 後ろからだと、お尻も隠れてるけど……。
 前から見たら、下半身全開よね。
 あけみちゃんの目は、扇の要に釘付けだった。

「どう?」
「……、綺麗」
「また剃られちゃったのよ。
 変態先生に」
「いや!」
「何が?」
「ほかの人のことは、言わないで」
「ふふ。
 可愛い子。
 ほんと、苛めたくなっちゃう。
 実は、わたしさ。
 ほんとにツルツルだった子供のころ……。
 男の人に、こんなふうに見せられたことがあるんだ。

第四話へ続く

文章 Mikiko
写真 杉浦則夫
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食虫花 ~美少女・内山遙~8

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第八話【処女開発】

さて、筆者としては、内山遙さんの物語を書くにあたり、本作執筆中ずっと、パソコンの壁紙として彼女を飾らせて頂いた。彼女の性格や、家族・交友関係などを設定し、なるべく感情移入を心がけたつもりである。
もともと、見るからに愛らしいく、透明感のある方だったので、程なく彼女の魅力に取り込まれてしまった。だから処女喪失の場面は、出来れば美しい描写にしたいと願ったが、鬼畜教師・林田の邪悪な願望に、強く押される形で物語は進行していく。

教室の空気は淀み始めていた。
締め切った教室。少しずつ、温度が上昇している。高まる興奮に比例する中年男の発汗。そして、あの嫌な体臭が空気を汚染し始めていた。遙の呼吸に乱れがある。
死ぬほど恥ずかしいM字開脚の格好で、椅子に縛り付けられた少女は、その姿勢以上に息苦しさを味わっていただろう。
無防備に開けられた股間を、林田は目を細めて覗き込んでいた。

「どうせ男とハメまくりなんだろ」
「し、知りません!そんな事!」
「とぼけてもダメだぞ、今からココを調べてやるからな」
遙の相手は大学生だ。どれほどの期間付き合っているかは知らないが、こんな美少女の体に手を出さなどという事は、エロ教師には考えられない。純愛であるはずが無かった。だから、彼女が処女か非処女かに関しては、“ハズレ”であると諦めている。花弁を割り、子房の口を眼前に晒すまでは。

(ひょっとして、本当に処女なのか?)
綺麗なピンク色をした肉襞である。ごくりと唾を飲み込む。
指を差し込むと、遙は全身を緊張させた。硬い。膣の浅い部分で処女膜が、彼女の貞操を守っているのが分かった。紛れも無く処女である。「今時」と言えばそれまでだが、これまで対象とした“目立たず、交友関係も狭い”はずの少女達でも、処女でない者が多く含まれていた。(何にも知らないような顔をして、やる事はやってやがる!)自分の事は棚に置き、怒りに似た感情を覚えた。これほど“環境”に恵まれた強姦魔であっても、処女に当たる事は至難の時代になっている。

「おまえ、彼氏に大事にされていたんだな」
くくくっ。自然と笑いが込み上げてきた。恋人よりも先に、お前が馬鹿にし、蔑んでいる中年男に、これから処女を奪われる気分はどうだ。
悔しい…こんな奴に。そんな遙の表情に、林田は益々加虐心を煽られる。

彼には、一度やってみたい事があった。
保管されていた棚の中に医療用の綿棒を見つける。教え子の陰部をネットリと嘗め回し、自身の唾液で浸す。まだ誰にも見られた事の無い大切な場所を暴く。そして唾液で滑った綿棒を差し込むと、処女膜を少しずつ広げていった。襞状の器官が、ヒクヒクと開閉する。遙の貞操はその向こうにあった。

頃合を見て指を一本差し入れる。ヌルリと入った。肉壷の奥で徐々に愛液が染み出してきたのが分かった。唾液と愛液が交じり合う。さらに丹念に、磨き上げるように扉をなぞり、徐々にこじ開けていく。少女は細い声で、「い、いや…やめて…いやぁ」と虚空にSOSを打ち続けた。
遙は、自身の股間に、これまでにない熱を感じている。指の数が二本になり、三本になる頃には、臀部へ垂れ出した愛液が四筋五筋と濡れ光っていた。

第九話へ続く

文章 やみげん
写真 杉浦則夫
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放課後のむこうがわ 2

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放課後のむこうがわ 2

 で、やっぱり……。
 その後の展開が気になるじゃない?
 好奇心が抑えられなくてさ。
 2人の後を追って、校舎の角から覗いてみた。
 でも、もう2人の姿は見えなかった。
 角を曲がりこむと……。
 木造校舎の表側だった。
 生徒玄関みたいな、広い入口が見えた。
 どうやら2人は、そこから中に入ってしまったみたい。
 どうしようかと思ったけど……。
 よく考えたら、遠慮することなんか無いのよね。
 自分の学校なんだからさ。
 もし、見つかって咎められたって……。
 転校したばっかりで迷いました、で済むじゃない。

 入口まで駆け寄ると、そっと中を覗いてみた。
 誰もいなかった。
 ていうか、人の気配がしないの。
 平日の校内とは思えない。
 やっぱりそこは生徒玄関らしくて、大きな木製の下駄箱が並んでた。
 でも、靴が無いのよ。
 古びた内履きは、ところどころに入ってるんだけど……。
 外履きがひとつも無い。
 ってことは、生徒はひとりも中にいないってこと?
 まだ、部活が行われてる時間なのに。
 そこで、ようやく気づいた。
 この校舎は、今は使われて無いんじゃないかって。
 だって、生徒が出入りしている校舎なら、下駄箱が空っぽなんてはず無いんだもの。
 生徒が中にいる区画には、外履き。
 下校した生徒の区画には、内履き。
 どちらかの靴で、下駄箱は満たされてるはず。
 でも、あの2人の靴さえ無いのは不思議よね。
 ここから入ったってのは、思い違いなんだろうか……。

 生徒玄関は、広い廊下に面していた。
 廊下を隔てた正面の窓からは、中庭が見えた。
 樹々が鬱蒼と繁って、ほしいままに枝を伸ばしてる。
 窓から差す光が廊下に落ちて、窓枠の影を映してた。
 廊下は、すっかり色の抜けた飴色。
 床板に凹凸があるのか、そこここに光が浮いてた。
 かすかに、油の匂いがした。

 わたしは、思い切って廊下に上がった。
 内履きのままここまで来ちゃったから……。
 履き替える必要も無いし。
 歩いた後ろを振り返ると、少しゴム底の跡が着いてたけどね。

 廊下は、玄関前から左右に伸びてた。
 向かって左手の先は、校長室や教員室が並んでそうな雰囲気だった。
 廊下の突きあたりには、塗装の剥げた金属ラックに、掃除道具が下がってた。
 そこから廊下は、中庭を囲むように折れてるらしい。
 折れた先にはたぶん、教室が連なってたと思う。
 わたしはそっち方向は選ばず、右手の廊下を目指した。
 だって、教員室なんかのありそうな方には、行きたくないものね。
 あの2人だって、きっと一緒よ。

 向かって右手の先も、中庭を囲むように曲がりこんでるみたいだった。
 でも、曲がり角の手前で、足が止まった。

 声が聞こえたのよ。
 間違いなくさっきの声。
 ともみさんって呼ばれてた、他校の子。

「あけみ。
 ほんとに似合ってる。
 会うたびに、ますます似あってくるわ。
 馴染んでくるっていうのかしら?」

 わたしは、そっと角から覗いてみた。
 驚いたわ。
 手ぶらだったからいいけど、何か持ってたら落っことしてたかも知れない。

 廊下の先は、ちょっと不思議な構造だった。
 廊下の右手はずっと、下駄箱のあるコンクリート土間に面してるわけだけど……。
 その土間が、廊下の突きあたりから、左に折れてるの。
 つまり廊下は、中庭に曲がる手前で途切れてるわけ。
 でもね、そこには木橋が掛かってたの。
 コンクリートの川にかかる橋みたいな感じね。

 橋を渡った先は……。
 舞台みたいに見えた。
 灰色の冷たい川が、客席と舞台を隔ててる。
 2つの世界を繋ぐのは、花道みたいな木橋。

 舞台の設定は、2階に続く広い階段だった。
 ともみさんは、その階段の下で、背中を見せて立ってた。
 あけみちゃんは、階段の手すりを支える柱の前で俯いてた。
 両腕を、後ろに回してね。
 制服の上腕から胸は、太いロープに戒められてた。

 一瞬、何が起こったのかわからなかったわ。
 あの親密そうに見えた2人の、ひとりが縛られてるんだもんね。
 でも、その場の雰囲気からして、縛ったのはともみさんとしか思えない。
 ともみさんは、ロープの張り具合を確かめるように、あけみちゃんの前を左右に歩き始めた。
 ともみさんの背中越しに、階段脇が見通せた。
 階段脇からずっと、中庭に面して土間コンクリートが続いてて……。
 行き止まりは通用口みたいだった。
 通用口は開いてた。
 裏山の緑が、すぐそこに見えたわ。

 ともみさんの靴音が、床板を鳴らしてた。
 そこで、初めて気がついたの。
 この2人の靴が、生徒玄関に無かったわけ。
 2人とも、外履きのまま上がってたのよ。
 どうやら、使われてない校舎って予感は、あたってたみたい。
 人のいる気配が無かったしね。
 空気が動いてない感じ。

「あけみ。
 顔あげて」

 ともみさんの声に、あけみちゃんの顎が上がった。
 縋るような瞳が、ともみさんを見あげた。

「またそんな顔して。
 ヤらしい顔。
 すっかり気分出ちゃってるみたいね。
 ちょっと縛っただけで、そんなになるんだから……。
 驚いちゃうわ。
 そういうのって……。
 マゾって言うんだよ」

 あけみちゃんの胸が、小刻みに起伏し始めた。
 あけみちゃんの胸には、乳房を挟むように、ロープが上下に渡ってた。
 紺ブレに、深い皺が寄ってた。
 おそらく、あけみちゃんの腕には、縄目がついてたと思う。
 はた目から見ても、きつい縛り方だった。

「どうしてほしいの?」

 あけみちゃんは、小鼻を細かく震えさた。
 泣き出す寸前みたいだった。
 でも、戦慄いてるように見えた唇からは、思いがけない言葉が零れた。

「もっと……。
 もっと縛って。
 もっと……、もっときつく」

 訴えるような言葉とともに、あけみちゃんの瞳から、涙が零れた。

「相変わらず変態ちゃんだね。
 でも、ほんとに綺麗な顔。
 涙が似合う顔よね。
 男の子が見たら、イチコロじゃないの?
 でも……。
 そんな顔しながら、下の口からも涙を流してるなんて知ったら……。
 きっと、人生に絶望しちゃうよ?
 さぁて、今日は……。
 どうしてやろうかな?」

 そう言いながらともみさんは、再び歩き始めた。
 あけみちゃんを見据えながら、右に左に。
 あけみちゃんの目が、子犬のようにともみさんを追っていた。

第三話へ続く

文章 Mikiko
写真 杉浦則夫
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食虫花 ~美少女・内山遙~7

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第七話【尋問】

麻縄を手にしてからの林田の行動は、素早かった。何度もシミュレートしたのだ、抜かりは無い。遙の腕を取り、後手にしたかと思うと、見る間に縄を掛けていく。想像を超えた、担任の異様な行動。彼女は混乱し、どう反応してよいものか戸惑っている。
やや小振りの乳房を挟んで、きつく掛けられる縄が少女の胸を圧迫していった。

「変態教師…最低」
乱れた髪の奥から、キッと刺す目は怒りに満ちていたが、内心は、牙を剥いた担任教師に恐れおののいている。泣き出しそうな自分が居た。遙はそれを悟られまいと、目一杯の虚勢を張る。
「早く!縄、解いて!大声出すわよ!人を呼ぶわよ!破滅させてやる!」
ふん。出せるものなら出してみろ。男には余裕があった。
初動で暴れるなり、悲鳴を上げるなりしなかったのを見て、(助けを呼ぶタイミングを逸したな)と、ほくそ笑んだに違いない。教育者としては甚だ不適格であったが、思春期から青年期へ移行途中の、少女達の複雑な心理を熟知している。どれほど毛嫌いしようと、対峙しているのは、顔見知りの教師なのだ。遙が、校舎の外に届くほどの大声を出すには、よほどの勇気が伴うはずであった。一見、大胆に見えても、教え子凌辱計画は、彼なりの理屈で緻密に組み立てられたものだった。
万一、騒がれても良い。今朝、中庭をはさんだ別校舎の職員室で、数人の同僚を見かけたが、おそらくこちらの校舎の中には二人きりだ。隣の校舎、職員室の在る一階では、ここ四階で起こっている異変に気付くのは、至難であろう。

それでも彼女が、とっさに悲鳴を上げ、助けを求めていれば、あるいは違った展開になっていたかも知れない。なぜならこの時、ちょうどバレー部の練習が休憩に入り、何人かが体育館の外で、たむろしていたからである。体育館は、四階から見下ろせる位置にあった。
「自分で何とかしてみせる」そんな遙の負けず嫌いの性格が、災いしていた。

「そうか、破滅させるのか…」
助けを呼べるものなら呼んで見ろ。教師はいきなり教え子のブルマを摺り降ろした。「ヒッ!」呑んだ息が、辛うじて小さな悲鳴となる。
「こんな格好で先生と二人きりと知れたら、お友達はどう思うかな?どう見てもSMプレイだな」
噂に尾鰭が付いて、学校に居られなくなるぞ。奴らは面白おかしければ何でも良いのだ。俺も破滅だが、お前も道連れにしてやる。
「それに…お前」
大学生と付き合ってるそうじゃないか。自分の彼女が中年男とSMプレイとは。恋人もきっと悲しむと思うぞ。(そんな事、何で知ってるの?)それまで強気だった、遙の顔が曇る。
「そいつとは、今まで何回SEXしたんだ?」
「あんたに関係ないでしょ!」
無礼な言葉遣い。自分の置かれた立場が理解できていないのか。まぁ良い。じっくり教えてやるさ。
「どこの大学かは知らんが、女子高生を喰うとはとんでもない奴だ!それこそ淫行条例違反だな」
「彼とは一度もそう言う事はありません!」
「嘘を吐け!」
そんなやり取りが数分続いた。

「本当の事を言え!」「ネタは上がってるんだ!」「バカにしてるのか!ああん?」
遙が卑猥な質問を拒絶する度に、床を打つ竹棒の音が教室に響く。
それに合わせ、威勢とは裏腹に、ビクッビクッと反応する教え子の姿が、担任教師には、たまらなく愉快であった。
元々、この男はそういった“嗜好”なのだ。単に女を抱くだけでは満足しない。相手の抵抗が大きければ大きいほど、支配の過程を楽しめる。かといって、自立した成人女性を標的にするわけでもなく、矛先は弱い女生徒達に向けられた。そこに林田の屈折がある。そういった意味で遙は、男の欲望を満たす条件が揃った、まさに格好の獲物と言えた。

(そうだ、これだ!求めていたのはこの感じなのだ)

第八話へ続く

文章 やみげん
写真 杉浦則夫
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放課後のむこうがわ 1

杉浦則夫の作品からインスピレーションされ作られた文章作品で、
全20話の長編小説のご投稿がありました。(投稿者 Mikiko様)
本作品は毎週火曜日に公開される予定となっておりますので、どうぞお楽しみに!

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■放課後のむこうがわ1

「わたしが転校した学校の話、したことあったっけ?」

 美里の問いに、美弥子は首を横振った。

「噂とか、聞いてた?」
「寄宿舎のある学校ってくらい」
「そう。
 寄宿舎!
 今どきねー。
 でも、あの姉から逃れるためには、そんなとこに逃げこむしかなかったのよ」

 そう言って美里は、口元のカップを傾けた。
 細い喉首を、紅茶が降りていくのが見えるようだった。
 美里は両肘をテーブルに付き、両手でカップを抱えていた。
 口元から離したカップを鼻先に掲げ、ゆっくりと揺らす。
 揺れる紅茶の中から、遠い記憶が湯気となって立ち上がるように……。
 美里は、紅茶を見つめたまま話し始めた。

―――――――――――――――

 学校はね、兵庫県の山の中にあったんだよ。
 刺激的なものは、周りになんにも無いとこ。
 同じ敷地に、学校と寄宿舎が並んで建ってる。
 外部との接触は、ほとんど無し。
 そこで、純粋培養のお嬢様が養成されるわけ。

 わたしが転校したのは、2学期の途中だったでしょ。
 そんな閉鎖的な環境だから、友達関係とかが、もう完璧に固まってるわけ。
 転校生なんて、静かな水面に投げ入れられた小石よ。
 平穏な日々を乱す異分子って感じかな。
 あからさまに虐められはしなかったけどさ。
 どのグループもテリトリーを固く閉ざして、わたしを迎え入れようとはしなかった。

 でもね。
 わたしには、むしろありがたかったの。
 友達が欲しかったわけじゃないし。
 放って置かれるのは、逆に気楽なものよ。
 何するにしても、ひとりで気ままに動けるしね。

 でも、学校はそれで良かったけど……。
 寄宿舎では、やっぱり困った。
 3人部屋なのよね。
 各学年、1人ずつの。
 わたしの入ることになった部屋は……。
 新入生の数が、足りなかったみたいで……。
 1学期から、2年生と3年生の2人だけだったらしいの。
 一目見ただけで、この2人、出来てるって感じたよ。
 部屋が、桃色の靄に包まれてるみたいな感じ。
 わたしは、完璧に邪魔者扱いよね。
 新婚夫婦の部屋に、赤の他人が同居するようになったみたいじゃない?
 口では直接言われなかったけどさ。
 邪険な仕草を隠そうともしなかった。
 学校と違って狭い空間だから、ほんとに息が詰まった。

 で、学校が終わっても、寄宿舎には帰りたくなかったの。
 と言って、部活動なんて、もっと嫌だし……。
 仕方なく、校内を探検してた。
 特別教室とかわからなくても、教えてくれる子なんていなかったからね。
 まごまごしないためには、自分で覚えるしかなかったの。

 校舎は、比較的新しかったわ。
 何の変哲もない、鉄筋コンクリート。
 10何年か前、建て替えられたみたい。
 図書館には、卒業アルバムがずらっと並んでて……。
 ヒマだから、お昼休みにそれ眺めてたりしてたの。
 建て替えられる前のアルバムには、木造校舎が写ってた。
 田舎の小学校みたいな感じだったな。
 こんな校舎の学校に、1年の最初から入って……。
 平穏に過ごしたかったって、つくずく思ったものよ。

 そんなある日のこと。
 その日の放課後も、校内めぐりをしてたんだ。
 1階の、体育館に続く廊下の脇に……。
 見慣れない通用口を見つけた。
 その廊下は、何度も通ってたはずなんだけど……。
 通用口なんか、見た記憶が無いのよ。
 不思議に思って、引き戸に手をかけると……。
 鍵も掛かってなくて、するすると開いた。
 生暖かい風が、顔を打ったわ。
 なんか、空気が違うのよ。
 10月の空気とはさ。
 乾いた地面には、雑草がちらほら生えて……。
 みずみずしい緑を見せてた。
 ヘンに心惹かれてね。
 通用口の外に出てみた。
 内履きのままだったから、ヤバいかなと思ったけど……。
 地面も乾いてるみたいだし、いいかって。
 その学校、内外の区別が妙に厳しかったのよね。

 廊下に顔だけ入れて、誰もいないことを確かめると……。
 引き戸を閉じた。
 その瞬間、背中からふわって風を感じてね。
 振り返って驚いた。
 雑草の生えた地面の向こうに……。
 木造校舎が建ってたの。
 卒業アルバムで見た校舎と同んなじ。
 古い小学校みたいな校舎ね。
 まだ取り壊されてなかったんだって、感激したよ。
 ひと気も無いし……。
 いいとこ見つけたって思った。
 ここなら、放課後の時間つぶしに打ってつけだもの。

 校舎に近づくと、なんか懐かしい匂いがするの。
 胸がちょっと痛くなるような……。
 “学校”の匂いね。
 建物は、瓦屋根の載った2階建て。
 建物の外壁には、色の褪せた横板が、何段にも貼りめぐらされてた。
 顔より高い位置には、大きな窓。
 もちろん、窓枠も木製。
 でも、窓には磨りガラスが入ってて……。
 伸び上がって覗いても、中が見えなかった。

 どこかから入れないかなって、建物を回りこんでみた。
 もし入れたら、それこそ絶好の隠れ家だもんね。
 でも……。
 建物の角を、裏側に折れたところで足が止まったわ。

 人がいたのよ。
 女の子がひとり、外壁の横板に背中を預けてた。
 わたしと同じ制服。
 紺ブレに、グレーのプリーツスカート。
 紺のハイソックス。
 でも、見かけたことの無い顔だった。
 もちろん、転校して間がないわけだから……。
 生徒全員の顔を、知ってるわけじゃなかったけどね。
 でも、同じ学年なら、見かけたことくらいあると思うんだ。
 と言って、上級生にしては、顔立ちが幼いし。
 入学したばっかりみたいな雰囲気なのよ。
 スカートの前で、真新しい鞄を両手で下げてて。
 少しうつむいて、ストレートの長い髪が、肩を包んでた。
 可愛い髪型だったわ。
 左サイドの一部が、三つ編みになって下がってた。

 声を掛けようかって思った。
 独りぼっちで立ってるその子が、自分と同じに見えたのかもね。
 なんだかんだ言って、やっぱり寂しかったんだよ。
 その子は、見るからに人待ち顔だったから……。
 ひょっとして、わたしを待っててくれたのかも、なんてね。
 そんなはずないんだけどさ。

 思い切って歩き出してすぐに、自分の馬鹿な思い違いに気がついた。
 その子の顔が、ぱっと輝いたんだけど、目線はわたしの方を見てなかった。
 目線の先には、もうひとりの女子高生がいたの。
 女子高生は口元をほころばせ、柔らかい声で呼びかけた。

「お待たせ、あけみ」

 あけみと呼ばれた子は、寄りかかった外壁から背中を離した。
 満面の笑みで、目線の先の女子高生を迎える。
 2人は校舎前で向き合い、互いの目を覗きこみながら、微笑を交わした。

 でもね……。
 あとから来た女子高生は、うちの生徒じゃなかったの。
 制服が違ってた。
 紺のスクールベストで、上着は着てなかったけど……。
 スカートは、グリーンとネイビーのタータンチェック。
 あと脚元も、白のショートソックスだった。

 部活なんかで、よその高校と交流することはあるから……。
 他校の生徒が校内にいたって、おかしいことはないんだけどさ。
 でも、ひとりだけで行動するってのは、まず無いんじゃないかな。

「ずっと待ってたよ。
 ともみさん」

 まぶしそうに見上げるあけみちゃんに、ともみと呼ばれた子は小さく頷いてみせた。
 内巻きのボブが、肩の上で揺れてた。

「ふふ。
 いい子ね。
 じゃ、行こうか」

 そう言って、ともみさんは、校舎の方へ歩き出した。
 あけみちゃんは、寄り添うように肩を寄せた。
 2人の姿は、校舎の角を曲がって消えた。

 後をつける気なんか、最初は無かったんだけどさ。
 なんとなく、2人の雰囲気が気になってね。
 普通の友達同士、って感じじゃないのよ。
 そういう雰囲気の2人連れは、校内でもときどき見かけた。
 友達とは違う、親密な気配を感じさせる2人。
 早い話、カップルよね。

第二話へ続く

文章 Mikiko
写真 杉浦則夫
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