放課後の向うがわⅡ-36

 川上先生は、生徒たちに遠巻きにされながら、机に座らされてる。
 椅子じゃなくて、机よ。
 田の字形にくっつけられた4つの机が、先生の舞台。
 もちろん、衣装は縄だけ。
 飴色の縄目が、白い肌を、お餅みたいに括ってる。




 お臍の下の肉が、羽二重のような膨らみを見せてる。
 本人が何と思おうと、このぷっくりしたお腹が、川上先生の最大のチャームポイントよ。

「さ、先生。
 そのまま、机の上に寝てください。
 ゆっくりでいいのよ。
 そうそう。
 よく出来ました。
 それじゃみなさん、授業を続けますよ。
 ほら、遠巻きにしてないで、こっち来て。
 あ、日本史の先生、踏まないようにね。
 はい。
 みなさん、集まりましたか。
 どう?
 川上先生。
 素敵よね。
 みんなの憧れの先生だもんね。
 その先生が、素っ裸で、みなさんのためにモデルを務めてくださってるの。
 男子生徒だったら、感激のあまり、きっともう射精しちゃってるわね。

 さてと。
 それじゃ、川上先生に注目。
 って、すでにガン見してますね。
 いいですか。
 これが、成人女性の身体です。
 自分や友達の裸とは、ちょーっと違うでしょ。
 お母さんの裸は……。
 最近見ないか?
 もう、お風呂別々よね。
 小さいころの記憶を思い出してみて。
 やっぱり、どこか違うでしょ。
 お母さんだから、当然、経産婦だもんね。
 子供を産んでない成人女性の裸を見るのは、初めて?
 最近は、銭湯とか行かないものね。
 どう?
 綺麗なものでしょ。
 これが、精子が入るのを待ってる身体よ。
 川上先生?
 そんな切なそうな顔されたら……。
 男は、入れる前に出しちゃいますよ。




 あら、山下さん。
 どうしたの?
 もう、自分の弄ってるの?
 困った人ね。
 若い子は、一旦タガが外れると怖いわ。
 それじゃ、そのままでもいいから……。
 とにかく、川上先生に注目。
 どう、この顔?
 自己犠牲に殉じる、敬虔な信者みたいよね。
 でも、ほんとは悦んでやってるのよ。
 ほら、その証拠に……。
 ごらんなさい、この乳首。
 ビンビン。




 こんなのに吸いついたら……。
 赤ちゃんでも、射精しちゃいそう。
 はい。
 誰か、吸いたい人?」
「はいはいはい」
「まぁ、誰かと思ったら、日本史の先生。
 もう生き返りましたの?」
「ゾンビみたいに言わないでください。
 心身ともに復活しました。
 見てください、この暴れん棒。
 背筋運動のように反り返ってます。
 準備、オッケーです」
「何の準備ですか?
 呆れた先生ですわ」
「ここからは、わたしが授業させてもらっていいですか?
 さて、諸君。
 さっきから君たちの注目を浴びてる、この生殖器官。
 男根と云います。
 この棒の部分は、陰茎。
 先っちょの剥き出しのところが、亀頭。
 わかるね?
 男女の交合って云うのは……。
 早い話、この男根を女性器に挿しこんで、男性が射精することです。
 よく見てごらん。
 亀頭の更に先端に、黒い穴が開いてます。
 ここから精液が出るんです。
 精液を生産するのは、ここ。
 わかるね?
 これを、金玉と云います。
 ゴールデンボール。
 非常に重要な器官です。
 2つあります。
 片方が損傷しても、もう一方で役目が果たせるようにという、神の配慮です。
 両方元気なときは……。
 一ヶ月交代で勤務します。
 町奉行所みたいですね。
 もし金玉が3つあったら、どうなるでしょう?
 三ヶ月ごとにお勤めが回ってくるわけだ。
 これを、三金交代と云います。
 って、君たち、冗談だよ。
 真面目にメモ取ってどうするの。
 普段の授業じゃ、ノートも取らないくせに」
「先生、巻いてください」
「すみません。
 それじゃ、突っこませていただきます」
「誰がそんなことしていいって言いました?
 そもそも先生は、前戯もなさいませんの?」

「前戯は……。
 よほど余裕のあるときに限られます」
「どういうときですか?」
「結婚してから、余裕があったことは一度もありません」
「まぁ。
 じゃぁ、奥様には一度も前戯無しに?」
「はい」
「はい、って……。
 それじゃ奥様、痛いでしょうに」
「とんでもない。
 いつも濡れ濡れです。
 家に帰るときは……。
 数分前にメールするんです。
 アパートのドアを開けると……。
 上がり框で、妻が四つん這いで待ってます。
 もちろん、全裸です。
 あそこは、波間の海藻みたいに濡れてますよ。
 もちろん、そのまま突っこみます。
 玄関に入る前から、ちんちんは出してありますから」
「夫婦揃って変態と云うことですね」
「否定できません。
 最近は、野外での行為に目覚めてしまい……。
 自分でも恐ろしくなります。
 聞きたいですか?」
「結構です」
「少しだけ聞いてくださいよ。
 駅のトイレなんです」
「またトイレですか?
 たしか、国語の先生とも……」
「トイレというのは、排泄行為を行う場所です。
 そこで精液を排出したくなるのは、自然な反応なんじゃないでしょうか?
 むしろ、おしっこだけして出てくるのが、もったいなくてしょうがありません。
 駅のトイレなんか、ときどき掃除のおばちゃんが入ってることがありますが……。
 あの人のでもいいから、ちょいの間、貸してほしいと思いますよ。
 あ、これはもちろん妄想だけです。
 教師がそんなことしたら、大変な不祥事ですからね」
「今の先生も、十分に不祥事の対象だと思いますが」
「かたじけない。
 話を続けます。
 駅のトイレです。
 わたしの使う駅は、そこそこ大きい駅ですが……。
 もっと山の方に行くと、夜間、無人になる駅があるんですよ。
 と言っても、入口が閉じられるわけじゃない。
 改札も抜けられます。
 妻と2人で、夜中、その駅に行くわけです。

 もちろん、電車は終わってますから、車を使います。
 2人とも、コートを羽織ってますが……。
 下は全裸です。
 あ、妻は普通のトレンチコートですが、わたしは違いますよ。
 トレンチコートに裸の脛じゃ、まごうかたなき変質者ですからね。
 わたしは、くるぶしまで丈のあるベンチコートです。

 もう、興奮しっぱなしで、そこらに車止めてヤリたいくらいなんですが……。
 必死で我慢します。
 で、駅に着くと……。
 入場券を買って、自動改札を通ります。
 トイレは、改札の中にあるんですよ。
 改札は、ゲートが閉じるタイプではないので……。
 素通りも可能ですが、もちろん、真面目な教師がそんなことはしません。

 そこまで来ると、もう我慢の限界です。
 2人して手を取って、トイレに駆けこみます。
 バリアフリーのトイレなんで、中は広々としてます。
 もう、コートのボタンを引きちぎりながら脱ぎますね。
 駅のトイレで、2人して全裸になってることで、脳漿が沸騰するほど興奮します。
 便器のフタに手をついた妻を、思い切り後ろから犯します。
 尻を叩いてやると、狂ったように悦ぶんです。
 打楽器みたいに乱打します。
 わたしの腰と手の平、そして妻の尻肉。
 互いの肉体によるジャズセッションです。
 それに、妻の嬌声とわたしの咆哮が加わる。
 誕生したころの人類に戻るんです。
 アフリカの大地が見えますよ。

 家で、一発ヤッて来てますけど……。
 シチュエーションに興奮してるから、すぐに追い詰められます。
 本日、最高のフィナーレが近づいてる。
 このまま出してしまうのでは、もったいない。
 便器を抱えてへたりこんでる妻を、後ろから抱え……。
 持ち上げます。
 もちろん、繋がったままです。
 で、トイレの鍵を開けるんです。
 重たいラッチ音が響くと、妻の性器が陰茎を締めあげてきます。
 このまま外に出ることを察し、悦びを抑えきれないんです。
 もちろん、口ではそんなことは言いませんがね。

 扉は、ラッチを外すと自動的に開きます。
 出来た隙間は、異界への通路です。
 ここを通ったとき、わたしたち夫婦は、人とは別の生き物に変わる。
 そう。
 変態という、哀しい生き物に。
 でも、もう止められません。
 2人は、繋がったまま、結界を踏み越え、扉を抜けます。
 2匹の変態の誕生です。
 その姿を映したい。
 この目で見たい。
 繋がったまま、二人羽織のように妻を操り、通路を抜けて構内に出ます。
 昼間は、大勢の利用客が足早に交錯するパブリックスペースです。
 そこに、全裸で……。
 しかも、妻と性器を結合させて立ってる。
 もう限界です。
 肛門を引き絞り、歯を食いしばって耐えます。

 妻を抱えたまま、待合室に向かいます。
 待合室は、夜間、施錠されてて入れません。
 なぜそこに向かったかと云うと……。
 構内と待合室の間仕切りが、ガラスなんですよ。
 つまり、わたしたちの姿を、すべて映してくれるんです。
 妻が、ガラスに両手を付くと同時に、わたしは腰を振り立てます。
 もう、堪えるつもりはありません。
 妻の突っ張った腕はすぐに崩れ、顔面がガラスに貼りつきます。
 整った容貌の妻が、ガラスでひしゃげた顔を無防備に見せてる。
 愛しさ一杯です。
 わたしは、喉も裂けよとばかりに咆哮しながら……。
 思い切り精を放ちます。
 妻も、大口を開けて絶頂を歌いあげます。
 のどちんこまで見せながら、並んで口を開ける姿は……。
 まるで、産卵する鮭のつがいのようです。
 生命の務めを果たす悦び。
 あの絶頂は、まさに神の寿ぎです。
 そう、思いませんか?
 あの感覚を思い出したら、もう我慢できません。
 川上先生、入れてもいいですか?」
「呆れた先生ですわ。
 長々と夫婦の変態話を語った挙句、そんなことが許されると思ってますの?」
「妄想では、すべてが許されるのです」
「あら、そうでしたわね。
 それなら、これはわたしの妄想ですから……。
 わたしの思い通りなんだわ。
 ちちんぷいぷい」
「先生、ずいぶん古典的な呪文ですな。
 歳がバレますよ。
 せめて、テクマクマヤコンにしてください。
 あ、あなたいったい何をなさったんですか!
 足が、足が動かない。
 ていうか、足の指が、床に潜りこんでる!」



本作品のモデルの掲載原稿は以下にて公開中です。
「川上ゆう」 「結」 「岩城あけみ」

《説明》
杉浦則夫の作品からインスピレーションされ作られた文章作品で、長編連載小説のご投稿がありました。(投稿者 Mikiko様)
本作品は毎週日曜日に公開される予定となっておりますので、どうぞお楽しみに。
前作を凌ぐ淫靡と過酷な百合緊縛!「川上ゆう」さん、「YUI」さん登場予定作品です。
時を越え、再び出会った美里とあけみ。現在に戻った美里は、さらなる花虐へと誘われていく…。


放課後の向うがわⅡ-35

 あけみ先生は、手の平を上向けた。
 手の平は宙を滑るように伸び、川上先生の股間に吸いついた。

「どうされたい?」
「やめて……」
「ウソおっしゃい。
 こうされたいくせに」

 あけみ先生の手の平が、股縄を押しあげる。

「やっぱり湿ってる」
「うぅ」
「この手を動かしたら……。
 あなたは、生徒の目の前で浅ましい姿を晒すことになる。
 それは、自分が一番わかってるわよね」
「お願いだから……。
 やめて」
「じゃ、言いなさい。
 あの日。
 そう。
 先生が、この塔への扉をくぐった放課後。
 ここに、もう一人いた女性は誰なの?」
「し、知らないのよ」
「そんなわけないでしょ!」
「ほんとです。
 ほんとなの」
「あなた方は、知らない女の前で裸になるの?
 知らない女に縛られて、ヒーヒー言うの?
 そんなことが信じられるもんですか!
 ほら、言いなさい。
 動かしてあげるから」

 あけみ先生の手の平が、小刻みに動き始めた。

「あひぃ。
 やめてぇ」
「ほら、音まで立て始めた。
 早く言わないと……。
 白目剥いてイクところ、生徒に見られちゃうわよ。
 ほらほらほら」
「あか、か、か」

 あけみ先生の二の腕に、腱の筋が走った。
 手の平が反るほど、股縄が押しあげられてる。
 そしてその縄は、間違いなくクリを揉み潰してる。
 わたしは内腿を絞った。
 見てる方が切なくなりそうだった。

「言いなさいってば。
 言わないの?
 じゃ、やめちゃう」

 あけみ先生の手の平が、股間を外れた。

「あぁっ」

 川上先生の声は、手の平を失った嘆きのように聞こえた。

「どうしたの?
 眉根に皺なんか寄せちゃって。
 もっとしてほしいんでしょ?」

 川上先生はかぶりを振った。
 懸命に、何かを振り払おうとしてるように見えた。

「案外しぶといわね。
 そうだ、美里。
 カメラ。
 持ってきて、早く」

 わたしが入口脇の机から、カメラを持ち帰ると……。
 あけみ先生は、再び股縄を擦り始めてた。

「あぁぁ。
 止めて、止めてぇ」
「美里。
 カメラ、構えて」
「撮らないで!」
「なら言いなさい。
 あの日の女性は、誰なの?」
「ほんとに知らないの。
 ほんとよぉ。
 突然現れたの。
 鍵で閉ざされた塔の中に、突然」
「なるほど。
 ひょっとして、あなたと理事長がなさってるとき……。
 現れたのね。
 ふふ。
 顔見ればわかるわよ。
 そうか。
 最も無防備な状況で、不可解な力を見せられれば……。
 一瞬で、精神的に支配されたっておかしくない。
 もちろん、その人の持ってるカリスマ的な力が大きかったんだろうけど。
 そんなことが出来るのは、わたしが知ってる限り、ひとりだけだわ。
 その人は、何て名乗ったの?」

 川上先生は、かぶりを振った。

「ヒーヒー言ってて、聞き漏らしたんじゃないの?
 思い出しなさいよ。
 ほら」
「あひぃ。
 弄らないでぇ」
「ともみ!
 ともみって言ったんじゃないの!」
「あひあひあひ」
「あなたまさか、生徒の前でイクつもり?」
「ゆ、許して」
「誰がイカせるもんですか」

 あけみ先生が、手の平を外した。

「あぁ」

 川上先生が、四肢を跳ね上げる。
 全身で、イヤイヤをしてるように見えた。

「美里、この眼見てごらん。
 さっきと違うでしょ。
 トロンとしてきた。
 この人、トランス状態になりやすいタイプね。
 こういう人は、たやすく、他人にコントロールされるものよ。
 ともみさんに心を掴まれたら、ひとたまりもないわ」




 あけみ先生は、股縄から外した手の平を、わたしに開いて見せた。
 指は、電球の明かりを映してた。
 明らかに濡れてたってこと。
 わたしの顔を見て、にやりと笑うと……。
 先生の手の平は、踊りの仕草みたいに舞いながら、川上先生の元に帰った。
 でも、戻ったのは、股間じゃなかった。
 乳房。
 優雅に伸びてた指先が、その位置で猛禽の爪に変貌した。
 爪が、乳首を挟みこむ。

「大した女ね。
 こんな状況で気持よくなれるんだから。
 そういうのをね……。
 変態って云うのよ。
 変態さんは、気持ちいいのも好きなんでしょうけど……。
 ひょっとして、痛いのはもっとお好きかしら?
 こんなふうに!」

 乳首を摘んだまま、手の甲が反転した。

「い、痛いぃぃ」
「お目覚め?
 まだ、大事な話が済んでませんのよ」

 捻りあげられた乳輪には、渦巻きみたいな皺が走ってた。

「それじゃ、質問を続けます。
 うかつな先生は、あの人の名前も聞かなかったって言うわけよね。
 それじゃ……。
 なぜ、あなた方の元に現れたのか、そのくらい聞いたでしょ?」

 川上先生は、歪めた顔を横振った。

「言いなさい」

 あけみ先生が、さらに手を持ち上げた。
 乳房が、生クリームの絞り袋のように変形した。
 乳首は、千切れそうなほど伸びてる。

「ひぃぃぃ。
 止めて止めて止めて。
 ほんとに知らないの。
 ほんとです!」
「ウソおっしゃい。
 言いなさいよ。
 ともみさんが、あなた方の元に現れた訳を。
 どうして?
 どうして、わたしのところじゃないの?
 どうして、あなたたちなの?
 言いなさいって!」
「わひぃぃぃ。
 乳首が乳首が、千切れるぅぅぅ」
「乳首くらい、何でもないでしょ!
 心が千切れるよりは!」
「あぶぶぶぶ」

 川上先生は、瞳を迫り上がらせ、口の端から泡を噴き始めた。

「ゆうちゃん!
 ゆうちゃん、大丈夫!」

 理事長の声だった。
 芋虫みたいに縛られたまま、懸命に顔を持ちあげてる。

「あら。
 あちらの方は、すっかり素に戻ってるようね。
 そうか。
 バイブ、止めてきちゃったもんね」
「岩城先生、お願いです。
 川上先生を下ろしてあげて。
 ほんとなのよ。
 ほんとにわたしたち、何も知らないの。
 あの人がどこの誰かも知らない。
 あの人は突然現れて、わたしたちに君臨した。
 名前も名乗らず、理由も告げず……。
 一瞬にして、わたしたちの女王になったの」
「そんなたわごと、誰が信じられるものですか。
 素面になると、ますます嘘つきになるようね。
 泡を噴きながらじゃないと、ほんとのことが言えないのかしら?
 美里、スイッチ入れてきて。
 バイブのスイッチよ。
 早く!」

 有無を言わさない眼光だった。
 あけみ先生は、理事長の方に顎を振った。
 わたしは、命じられた犬みたいに、理事長の足元に身を移した。
 電池ボックスを拾い上げる。

「お願い。
 美里さん、お願い。
 動かさないで。
 それを、動かされると……。
 動かされると……。
 わたし、ダメになっちゃう」
「美里!
 何もたもたしてんの。
 早くしなさい!
 スイッチ、わかるでしょ?
 そう。
 それをスライドさせれば、無断階に強さが調節できるわ。
 もちろん、目一杯まで動かしてちょうだい」

 駆動音が立ち上がった。
 おもちゃのロボットが動き出したみたいだった。
 音は、さっきよりも高かった。
 スライドを、最大限まで引き上げたから。

「あうぅ」

 理事長の顎が天を向いた。
 背中が持ちあがり、上体がアーチを描く。

「ふふ。
 いい反応ですこと。
 美里、クリも弄ってあげて。
 どうしたの?
 出来ない?
 ま、いいか。
 その状態でクリ揉まれたら、あっという間にイッちゃうもんね。
 じゃ、バイブだけ、抜けないように持っててよ」

 理事長の腹筋に渓谷が走り、腰が浮きあがった。
 クリトリスが、包皮から覗いてた。
 怒張してるのが、はっきりとわかった。
 これを、皮の上から揉み潰したら、どんなにいいか……。
 わたしは、立て膝をした脚の付根を内側に絞った。
 お汁が染み出すのがわかった。

「ほーら。
 川上先生。
 理事長、また勝手に気持ちよくなってますよ。
 どう?
 うらやましい?
 でも、残念だわ。
 そんな縄のおフンドシ締めてたら……。
 バイブなんか、入れられませんもの。
 今度やってあげますね。
 どこでしてあげようか?
 そうだ。
 保健の授業の続きでやりましょう」



本作品のモデルの掲載原稿は以下にて公開中です。
「川上ゆう」 「結」 「岩城あけみ」

《説明》
杉浦則夫の作品からインスピレーションされ作られた文章作品で、長編連載小説のご投稿がありました。(投稿者 Mikiko様)
本作品は毎週日曜日に公開される予定となっておりますので、どうぞお楽しみに。
前作を凌ぐ淫靡と過酷な百合緊縛!「川上ゆう」さん、「YUI」さん登場予定作品です。
時を越え、再び出会った美里とあけみ。現在に戻った美里は、さらなる花虐へと誘われていく…。


放課後の向うがわⅡ-34

 あけみ先生の手首が、ゆっくりと前後し始めた。
 さっきまでの乱暴な所作じゃ無かった。
 でも、優しさとも違う。
 そう。
 獲物を嬲るような、無慈悲な悦びを孕んでた。
 でも、理事長の反応は、明らかにさっきまでとは違ってきた。

「はぁぁぁ」
「まぁ、いいお声。
 ほら、ここはいかが?」
「く、く」

 理事長は、電球の明かりから逃れるように、顔を倒した。
 あけみ先生の視線から、自らの表情を隠そうとしてるみたいだった。
 理事長の顔は、わたしの方を向いてたから……。
 電球の作る影が半分覆ってたけど、わたしにはその表情がよく見えた。
 口が開き、白い歯が零れてる。
 視線が、怯えたように揺れてた。
 それは、あけみ先生への怖れではなく……。
 自らの内奥へのおののきに見えた。


「どうしたの?
 ほら。
 いいんでしょ。
 これが。
 これよね」
「はぅぅ」

 理事長の顎が上向いた。
 電球の明かりに、表情を晒した。
 下腹を絞りあげられるように感じた。
 理事長は、それまでのわたしの人生で、まだ見たことの無い女性の表情をしてた。
 無防備に身を任せながら、内奥の悦楽を貪ってる顔。
 今なら、そうわかるけど……。
 そのときは、見てはいけない顔に思え、その場から逃げ出したかった。
 わたしの気配に、あけみ先生は気づいたようだった。

「美里。
 よく見なさい。
 これが、雌の顔よ。
 どんな偉い学者でも、教育者でも、閨ではこの顔になるの。


 理事長?
 いかがですか?
 何とか言ったらどうなの。
 人にこれだけサービスさせておいて。
 ほら、言ってごらん。
 まんこにバイブ入れられて、気持ちいいですって」

「あぅぅ」
「オットセイじゃ無いんだからさ。
 ちゃんとしゃべりなさいよ。
 言う事聞かないんなら……。
 今の理事長に一番つらいお仕置きをしますよ。
 どうなの?
 そう。
 いいのね。
 それじゃ……。
 スイッチ、オフ」

 バイブの音が消え、理事会室に静寂が戻った。
 裸電球のフィラメントが灼ける、儚い音まで聞こえそうだった。
 あけみ先生は口角を上げ、理事長の顔を見下ろしてる。
 舌なめずりする蛇のようだった。

「あぁ」

 理事長の表情が崩れた。
 あけみ先生の口角が、さらに切れあがった。

「どうしたの?」

 理事長は、唇を噛んでた。

「うぅ」

 理事長の口から嗚咽が漏れると、腹筋が波立った。
 不自由な姿勢のまま、腰が蠢いてた。
 下腹部が、バイブを慕うように持ちあがる。
 あけみ先生は、微笑みを貼りつけたまま、無慈悲に腕を引いた。

「イヤぁ」
「何がイヤなの?
 言いなさいって」

 理事長は、壊れた扇風機みたいに顔を横振った。
 髪の毛が、左右の畳を叩く。
 腰が前後に動き始めた。

「どうしてほしいの?
 もう止めてほしい?」

 理事長の首が、いっそう強く振られた。

「じゃぁ、続けてほしいの?
 もう一度、スイッチを入れてほしい?」

 理事長の首が持ちあがった。
 自らの股間を覗きこむように、首が大きく縦に振られた。

「そう。
 それじゃ、ちょっとだけサービス」

 バイブの駆動音が立った。

「あひゃぁ」

 理事長が奇声をあげた。
 頭が再び落ち、髪がモップみたいに畳を掃き始める。

「はい、おしまい」

 駆動音が消えた。

「いやいやいやぁぁぁぁぁぁぁ」

 理事長は、赤ん坊のように泣きじゃくった。
 その顔を、あけみ先生が覗きこむ。
 口角は上がったままだったけど、目は笑ってなかった。
 まるで、微笑みの仮面を被ってるみたい。

「動かしてほしい?」

 理事長の首が、がっくがっくと縦振られた。

「それじゃ、言いなさい。
 こないだ、ここに来てた女性は誰なの?
 この部屋で、あなたに蝋燭垂らしてた女性よ。
 言わないと、ずっと生殺しよ」
「知らない。
 知らないのよ」
「ウソおっしゃい。
 知らない人の前で素っ裸になって、蝋燭垂らされましたって?
 そんなバカな話、通じると思ってるの?」
「ほ、ほんとなの。
 お姉さまは、突然現れるのよ。
 この部屋にだけ」
「お姉さま、ね。
 あの人、いくつ?」
「知らないわ」
「確かに、理事長と同じくらいに見えましたわね。
 でもあの人、わたしたちより、ずっと年下なんですのよ。
 今ごろはまだ、どこかの中学生かな?
 ふふ。
 何言ってるか、わからない?
 そんな顔ね。
 ま、説明は止めとくわ。
 しゃべってると、バカバカしくなるような話だから。
 でも、名前くらい名乗りませんでした?」
「わからない……」
「ともみ。
 ともみって言ったんじゃないの?
 ともみよ!」

「ほんとに知らないの」
「うかつな女ね。
 あなたは、名前も知らない女の前でヨガるわけ?
 とんでもない変態だわ。
 そうそう。
 変態はもう一人いたんだった」

 あけみ先生は、バイブを置き去りにしたまま起ちあがった。

「あぁ。
 動かして。
 これ、動かして」
「はしたない女ね。
 おあずけよ」

 投げつけるように言い捨て、あけみ先生は理事長に背を向けた。
 向かった先は、川上先生だった。

「さっきから、バカに静かね。
 どういうつもり?」

 あけみ先生は、川上先生の顔を覗きこんだ。
 川上先生は、眉根に皺を寄せ、顔を歪めた。

「ははぁ。
 理事長のヤラシイ顔見てて、気分出しちゃったのね。
 あなたも弄ってほしいの?」

 川上先生は、目を伏せたまま顔を横振った。

「ウソおっしゃい。
 こーんなに乳首、起ててるくせに。
 美里、こっち来てごらん。
 ほら見て、この乳首。
 起ってるわよね?」

 川上先生の平常時の乳首なんて、もちろん見たことないから……。
 今の乳首が、普段と違ってるかどうかはわからない。
 でも、これが通常の乳首だったら、ブラに擦れたりして大変なんじゃないか……。
 そう思わせるほど、乳首は突き出て見えた。

「恥ずかしくありません?
 生徒の前で、乳首なんか起てて。
 それでも教育者なの?」
「た、起ててません」
「まーだ、そんなこと言うのかしら。
 とんでもない嘘つき女だわ。
 こんなになってるくせに。
 弄ってほしいんでしょ?」

 川上先生は、連獅子のように髪を打ち振った。

「ちょっとだけ触ってあげる」

 あけみ先生の片手が上がった。
 でも、その手は、乳首を摘む形では無かった。
 影絵の狐を作る形に似てるけど、少し違う。
 親指の腹に、丸まった中指の爪が押さえられてる。
 残りの指は、宙に向けてピンと立ってる。
 そう。
 そういう遊びがある。
 矯めた中指を開放し、額を弾くやつ。
 いわゆる、デコピンね。
 あけみ先生の作る狐が、川上先生の乳房に近づいた。

「悪い子にお仕置き。
 そーれ。
 ピーン」
「あひぃっ」

 川上先生は、顔を仰け反らせた。
 白いノド首が、石筍のように立ちあがる。


「すっごい感度。
 ヤラシイ女」
「言わないで……」
「じゃ、自分で言いなさい。
 わたしは、生徒の前で乳首を起てる、イヤらしい教師ですって」
「……」
「言ったら、弄ってあげるわよ」
「言えません」
「素直じゃない口ね。
 身体は、こーんなに素直なのに。
 ほら、見てごらん、美里。
 股縄の隙間から、お汁、漏らしてる」
「ウソ!
 ウソよ」
「ウソじゃないもんねー。
 美里ちゃん、よーく見て。
 絶対これ、本気汁よね」

 確かに……。
 飴色の縄が、そこだけ色を濃くしてるように見えた。
 わたしは、思わず顔を近づけた。

「見ないでぇ」
「よく見なさい、美里。
 教師の流す、本気汁よ」
「うぅ」
「あー、泣いちゃった。
 かわいそー。
 誰に苛められたの?
 まさか、わたし?
 ふふ。
 じゃ、ちょっとだけ慰めてあげるね」


本作品のモデルの掲載原稿は以下にて公開中です。
「川上ゆう」 「結」 「岩城あけみ」

《説明》
杉浦則夫の作品からインスピレーションされ作られた文章作品で、長編連載小説のご投稿がありました。(投稿者 Mikiko様)
本作品は毎週日曜日に公開される予定となっておりますので、どうぞお楽しみに。
前作を凌ぐ淫靡と過酷な百合緊縛!「川上ゆう」さん、「YUI」さん登場予定作品です。
時を越え、再び出会った美里とあけみ。現在に戻った美里は、さらなる花虐へと誘われていく…。


放課後の向うがわⅡ-33

「でもね……。
 あんな場面は、大ウソなのよ。
 ま、ウソというか、ドラマ共通の方便ね。
 『クロロフォルムを染みこませたハンカチで口を覆われると、人は気絶する』ってのは……。
 フィクションの世界だけの約束事。
 実際には、クロロフォルムにそんな作用はないの。
 せいぜい、咳が出たり吐き気がする程度。
 もちろん、大量に吸引すれば気絶するけど……。
 その場合、もう目覚めないわよ。
 腎不全で死んじゃうから。
 ということで、わたしが川上先生に使ったのは、ごくポピュラーな溶剤だけど……。
 青少年にこういう知識を与えちゃマズいから、あなたには内緒ね。
 どう?
 川上先生、バカになってない?
 はは。
 その状態じゃ、わからないか。
 起こしてあげて。
 せっかく、これからいい場面が始まるんだから。
 ダメダメ。
 揺さぶったくらいじゃ起きないわよ。
 ほっぺた、張り飛ばすのよ。
 出来ないの?
 使えない助手ね。
 じゃ、わたしがお手本みせようか」

 先生は、理事長の足元から起ちあがると、わたしの傍らに身を移した。

「これ、持ってて」

 赤いバイブを手渡された。
 こわごわ持ったら落としそうになり、思わず抱きかかえた。

「いい。
 よーく見てなさいよ。
 眠れる美女は……。
 こうやって起こすの」

 先生はわたしに背を見せ、川上先生に正対した。

「両脚を踏ん張る。
 この姿勢よ。
 どう?」

 先生は、両脚をパンタグラフみたいに開いた。
 いわゆる、がに股ってやつ。
 わざとしてるとしか思えなかった。
 わたしに見せつけるために。
 そう。
 だって、先生の下半身は剥き出しなんだもの。
 オーバーブラウスの途切れたウェストの下は、一糸まとわぬ素っ裸。
 肉色のパンタグラフは、この上なく卑猥に見えた。

 先生は、そのまま右手を振りかぶり、宙を薙ぎ払った。
 肉を打つ音と共に、川上先生の顔が真横を向いた。

「先生。
 お目覚めの時間ですわよ」
「ぐ……」
「寝起きが悪い子ね。
 もう一発、モーニングコールお見舞いしましょうか?」

 川上先生の首が、ようやく自力で起ちあがった。

「岩城先生。
 下ろして……。
 お願い」
「ダメー」
「下ろして。
 下ろして!
 下ろしてぇぇぇぇぇ」

 川上先生は、全身をよじりながら絶叫した。


「気が済みました?
 あんまり喚くと、綺麗な声が掠れちゃいますよ。
 さてと。
 やっと観客が起きてくださったから……。
 さっきの続きね」

 あけみ先生は、川上先生に背を向け、わたしに正対した。
 わたしの前に、手の平が差し出される。
 一瞬、何のことかわからなかったけど……。
 ようやく気づいて、抱えてた荷物を手渡した。
 そう。
 真っ赤なバイブ。

「これ、気に入った?
 抱きしめちゃって。
 暖かくなってる。
 こいつにバージン捧げてみる?
 ほほ。
 冗談よ。
 それじゃ、お待ちかねの人の方に、突っこんで差しあげましょうね」

 先生は、わたしの前から身を翻した。
 バイブと電池ボックスを片手ずつに持ち、猫をからかうみたいに背を丸め、理事長の足元に戻った。

「お待たせ!
 理事長、見えるでしょ?
 川上先生が、起きてくださいましたよ」

 あけみ先生は身を開き、理事長の視界を通した。

「ゆうちゃん……」
「そう。
 可愛いゆうちゃんね。
 川上先生も、何かひとことどうぞ」
「理事長先生!
 助けて」
「バカじゃないの?
 こんな格好で、何が出来るっていうの。
 出来ることはね……。
 無様にヨガってるとこを、あなたに見せることくらいよ。
 それじゃ……。
 レーッツ、ショータイム」

 バイブの駆動音が立ちあがった。
 あけみ先生は、真っ赤なバイブを顔の前に翳した。

「やっぱり、長年使ってたから……。
 見ただけで興奮するわ。
 刷りこみってやつかしら。
 ちょっと、摘み食いしちゃお」

 先生の舌が零れ、駆動するバイブを舐め始めた。
 視線は、理事長を見据えたままだった。
 理事長の顔は、恐怖と嫌悪を隠し切れないようだった。
 あけみ先生は、頬肉を上げて笑うと、バイブを咥えた。
 両目を寄せ、困ったような顔をしながら挿出する。
 髪の毛が宙を跳ね踊った。
 顔の輪郭がブレるほどに高まった速度が、しだいに緩やかになり……。
 ようやく先生は、バイブを吐き出した。
 湯気の立つバイブを、ソフトクリームみたいに掲げ、下から見入ってる。

「あー、美味しい。
 羨ましいわ。
 こんな美味しいもの、下のお口で堪能できるんですもの」

 あけみ先生は、掲げたバイブを揺らしながら、理事長に、にじり寄った。

「ひぃぃ。
 助けて」

 理事長は背中をうねらせ、懸命に畳を後退ろうとした。
 腹筋が地形図のように浮き上がり、後頭部が畳の縁から落ちた。

「まぁ。
 器用なことなさるのね。
 でも、こういうの……。
 “無駄な抵抗”って云いますのよ」

 あけみ先生は、理事長の両腿の縄に手を掛けると、自らの体重を後ろに預けた。
 理事長の努力も虚しく、その身体は、畳の中央に引き戻された。

「美里。
 なに突っ立ってるの。
 もっとこっち来なさい。
 見るの初めてじゃない?
 女性器が、男性器を咥えこむとこ。
 しっかり見てるのよ」

 あけみ先生は、トーチを傾げるようにバイブを倒していった。
 聖火台は、理事長の股間だった。

「あひぃ」

 理事長の背中が、持ちあがった。

「あら、敏感。
 触っただけなのに。
 ひょっとして、クリ……。
 もう、勃起してます?」

 あけみ先生は、手元を覗きこみながら、位置を調節してるようだった。

「あぅぅ」
「お、反応が良くなった。
 やっぱりここね。
 クリに直より……。
 ちょっと離して、振動を伝えた方がいいでしょ」
「やめて……。
 しないで」
「どうして?」
「はぅ」
「感じちゃうから?」

 理事長は、頭を幾度も横振った。
 あけみ先生の言葉を否定するというより……。
 内奥から湧きあがる感覚から逃れようとする仕草に見えた。

「ほーら、滲んできた。
 これなら、ローションなんて要らないわ。
 スゴいスゴい。
 アワビが潮吹いてる。
 美里、見てごらん。
 陰唇が捲れて……。
 雛鳥みたいにさえずってる。
 早くちょうだいって」

 理事長の陰唇は、バイブの振動に共鳴して、ゼリーのように細かく震えてた。

「それじゃ、お望みどおり、入れてあげましょうね。
 ほら、もっと股開いて」

 あけみ先生は、片手で理事長の膝を押さえつけた。
 もう一方の手が、持ちあげたバイブを掴み直す。
 短刀を構えるようだった。
 赤い切っ先が、理事長の正中線を灼きながら、再び仰角を下げていく。
 あけみ先生の二の腕に、腱の筋が走った。

「あぎぃ」

 赤い亀頭が、焼き鏝のように押しあてられた。

「はは。
 ごめんなさい。
 クリ、直撃しちゃったわね。
 もちろん、わざとですけど。
 痛かった?
 それじゃ、あんまり焦らしたら可哀想ですので……。
 入れてあげましょうね」

 思わず先生の手元に見入ったとき、後ろで柱の軋む音がした。

「止めてえ!」

 川上先生だった。
 マリオネットみたいに宙で藻掻きながら、懸命に首をもたげてる。
 自らの無様な姿を顧みない、必死な仕草に見えた。

「理事長、観客から掛け声がかかりましたよ。
 ヨガリ甲斐、ありますね。
 それじゃ、いきますよ。
 それっ」

 あけみ先生の腕が、短刀を突き出すように動いた。

「わひぃ」

 理事長の顎が仰け反った。


 バイブが、理事長の股間に埋もれてる。
 わたしは、思わず下腹を押さえてた。

「どうしたの、美里?
 気分出てきた?」

 わたしは、首を横振った。
 その仕草に嘘は無かった。
 あんな棒みたいに太いものが体内に入ってることを思うと、自分の身が突き刺されてるようだった。

「理事長の方は、もうお楽しみよ」


本作品のモデルの掲載原稿は以下にて公開中です。
「川上ゆう」 「結」 「岩城あけみ」

《説明》
杉浦則夫の作品からインスピレーションされ作られた文章作品で、長編連載小説のご投稿がありました。(投稿者 Mikiko様)
本作品は毎週日曜日に公開される予定となっておりますので、どうぞお楽しみに。
前作を凌ぐ淫靡と過酷な百合緊縛!「川上ゆう」さん、「YUI」さん登場予定作品です。
時を越え、再び出会った美里とあけみ。現在に戻った美里は、さらなる花虐へと誘われていく…。


放課後の向うがわⅡ-32

 中を掻き回す気にならなかったので、一番上に載ってた赤いバイブを手に取った。

「それにする?
 ちょっとおとなしめだけど、ま、いいか。
 持ってきて」

 赤いバイブは、本体と電池ボックスが別になってた。
 コードでつながってる。
 両手を伸ばして、捧げるように先生に手渡す。
 間近で見るのが、ちょっと怖かった。

「この子も、だいぶレトロ感が出てきたわね。
 今のバイブは、たいがい本体に電池が内蔵されてるから。
 でも、別になってる方が、軽くて使いやすいのよ」

 先生は、男性器を象った本体に鼻を近づけた。

「おー、臭さっ。
 使いっぱなしだから、強烈に臭うわ。
 あなたも、手に臭いが着いたかもよ」

 わたしは、手のやり場に困った。
 ブラウスで拭く気にもなれないし。

「どっちで持ってた?
 右だっけ?
 嗅いでごらん、手の平。
 汚くないでしょ。
 わたしのなんだから。
 ほら、手の平を鼻に持ってきなさい。
 そう」

 わたしは、近づけた手の平を、思わず遠ざけた。
 唾の乾いたような臭いがした。

「ふふ。
 やっぱ、臭い?
 ちゃんとお手入れしなきゃダメね。
 消毒用エタノールで拭くといいのよ。
 スプレーボトルに入ってるやつがあるから。
 あれをシュッシュとやって、ティッシュで綺麗に拭いてから仕舞いましょうね。
 でも……。
 この臭いが、癖になるのよね。
 あー、いい臭い」

 先生は、バイブを横にして、鼻下に近づけた。
 鼻を左右に滑らせる。
 ハーモニカを吹いてるみたいだった。

「知り合いの男でね。
 中学校のころ、オナニー覚えて……。
 ティッシュで始末しなかったってヤツがいたの。
 出した精液、どうしてたと思う?
 タオルで拭いてたのよ。
 それも、洗濯しないままの同じタオルで。
 なんでそんなことしたのかって云うと……。
 最初のオナニーで出した精液を拭いたのが、そのタオルなんだって。
 そのときは、オナニーしてるつもりなんかなくて……。
 なんとなく、ちんちん弄ってたら……。
 突然ヘンな気分になって、ちんちんから白い液が出た。
 で、慌てて、手近にあったタオルで拭いたんだって。
 以来、オナニーが病みつきになったわけだけど……。
 毎回、そのタオルで拭いた。
 ティッシュで拭こうという考えが、不思議と浮かばなかったんだってさ。
 男性は、最初の女が忘れられないって云うけど……。
 そいつにとっては、タオルがその人だったのかも?
 で、毎回毎回、タオルで拭いて……。
 そのタオルは、ベッドと壁の隙間に隠してた。
 もちろん、洗わないんだから、タオルは悲惨な状態になってく。
 糊で固めたみたいにガビガビだったって。
 白かった生地にも、ベージュや薄茶の染みが広がってく。
 何より強烈だったのが、臭いだそうよ。
 でもね。
 オナニーするとき、その臭いを嗅がずにはいられなくなったんだって。
 で、毎回、ガビガビのタオルに顔を埋めながら……。
 オナるようになったそうな。

 はは。
 わたし、何が言いたかったんだろ?
 とにかく、臭いってのは、記憶に灼きつくものなのよ。
 それも、深い部分にね。
 このバイブも一緒。
 この臭いを嗅いでるとね……。
 うんこ漏らしそうなほど興奮するの」

 先生の片手は、いつの間にか自分の股間に回ってた。

「あぁ。
 やっぱり、立ちオナっていいわよね。
 精神的に昂まって。
 たった一度だったけど……。
 このバイブ持って、夜の公園に行ったことがある。
 まだ、若くて可愛かったころよ。
 素っ裸にワンピだけ着て。
 で、茂みの中でバイブを取り出し、立ったまま突っこむ。
 めちゃめちゃ興奮したわ」

「途中から、もうどうなってもいい気がして……。
 ワンピも脱いだ。
 素っ裸。
 ガニ股で、声まで出してお尻振ってると……。
 あっという間にイっちゃった。
 遠くに見える水銀灯の明かりが、人魂みたいに揺れて見えた。
 わたしの記憶に残る、青春の1シーンね。
 あー、思い出してきた」

 先生は、その場にしゃがみこんだ。
 和式便器を使う姿勢から、さらに両膝を開いた。

「見て」

 先生は、股間を覆ってた手の平を、肌を滑らせながら引きあげた。
 陰唇が、しゃぶしゃぶの肉みたいに湯気を立ててる。
 その上には、剥き出しのクリトリスが、一つ目小僧のようにわたしを睨んでた。

「どう?
 可愛い子が見えてる?
 どんな憎たらしい女でも……。
 クリだけ見てると、不思議と愛しさが湧いてくるものよ。
 でも、今この子を苛めたら、あっという間にイッちゃいそう。
 がまんがまん」

 先生は、包皮を引き上げてた手の平を外した。
 クリトリスは、柔らかい皮の帽子を被った。
 写真でしか見たことないけど……。
 なぜだか、雪の中で咲くザゼンソウを思い出した。

「でも、理事長のが十分湿ってないと、痛いかも知れないわね。
 だから……。
 わたしのお汁でヌメヌメさせてあげましょうね」

 先生は、バイブを逆手に持った。
 時代劇の女性が、自害する所作にも見えた。
 切っ先が、陰唇をなぞる。
 陰唇の襞が、茹で肉のように震える。

「はぅ」

 紅色の刃が、あらかじめ穿たれた傷に潜りこんだ。

「あぁ、いぃ。
 やっぱり馴染みの子は、襞の数まで覚えてるわ」

 先生は、幾度もバイブを突き立てた。
 紅色の刀身は、静脈血を噴き出してるようにも見えた。

「おっと、危ない。
 危うく夢中になるとこだった。
 一緒にクリ弄ってたら、止められなかったわ」

 先生は、名残を惜しむみたいに視線を泳がせながら、バイブを引き抜いた。
 体内から、紅色の抜き身が現れる。

「ほら。
 湯気が立ってる」

 そのまま、丸い亀頭部を鼻先に翳した。

「臭いぃ」

 先生は、ブラウスの胸を起伏させながら、激しい呼吸をし始めた。

「美里も嗅いでみる?
 たまらないわよ。
 イヤじゃないでしょ?
 わたしの臭いなんだから。
 はは。
 こんなことしてたら、また乾いちゃうわね。
 こちらに、お待ちかねの人がいるのに」

 先生は、しゃがんだままのアヒル歩きで、理事長の元に身を移した。

「理事長。
 ほら、ぼーっとしないで。
 あの薬、2度効きするみたいね。
 大丈夫ですかー」

 先生は、ハムのように括られた太腿を、ペタペタと叩いた。

「反応なし?
 ふて寝かしら。
 それとも、頭打って、ほんとにバカになっちゃった?
 面白くないわね。
 まだ大事な質問が残ってるのに。
 嫌でも答えてもらいますからね」

 先生は、理事長の足元ににじり寄ると、バイブを構えた。
 亀頭を模した丸みが、無残に開かれた股間を覗いてる。

「ほら、頭が入っちゃうわよ。
 あ、スイッチ入れた方がいいか」

 先生が手元の電池ボックスを操作すると、騒々しい駆動音が立ち上がった。
 ブリキのロボットが動き出したような音だった。

「昔のオモチャは、この音が弱点よね。
 公園でしたときも、さすがにスイッチ入れる勇気は無かったわ。
 でもここなら、どんな音立てても、誰に聞こえるわけもないし。
 ほら、理事長。
 なんなら、声も出していいんですよ」

 先生は、生きもののように蠢き始めたバイブを、理事長の股間に翳した。
 亀頭がゆっくりと切っ先を下げ、恥丘に着地する。
 バイブに添えた指が反り、力が加わった。


「ほら、早く目を醒まさないと……。
 クリが擦り切れちゃいますよ」

 理事長の首が、大きく振れた。

「やっと起きたみたいね。
 理事長ー。
 何されてるかわかりますかー?」
「あ……、あぅ」
「いきなり喘ぎ声?
 その前に、感想いってちょうだいよ」
「や、止めて……」
「ウソおっしゃい。
 もっとしてもらいたいくせに。
 あ、ちょっとタンマ。
 もう一人の主演女優、バカに静かね」

 あけみ先生は、理事長にバイブを押しあてながら、川上先生を振り向いた。
 川上先生は、梁を背にぶら下がったままだった。
 完全に眠りこんではいないようだけど……。
 意識レベルが、かなり後退してるみたいだった。

「寝ちゃってる?
 中毒かしら?
 嗅がせすぎたかな。
 美里、ちょっと近くにいってみて。
 息してるわよね?
 下の方、漏らしてない?
 そう。
 そんなら大丈夫ね。
 余談だけど……。
 2時間ドラマなんかで、人を気絶させるシーンってあるでしょ?
 ハンカチで口を覆ってさ。
 どういう薬使ってることになってる?
 そうそう。
 クロロフォルムよ」


本作品のモデルの掲載原稿は以下にて公開中です。
「川上ゆう」 「結」 「岩城あけみ」

《説明》
杉浦則夫の作品からインスピレーションされ作られた文章作品で、長編連載小説のご投稿がありました。(投稿者 Mikiko様)
本作品は毎週日曜日に公開される予定となっておりますので、どうぞお楽しみに。
前作を凌ぐ淫靡と過酷な百合緊縛!「川上ゆう」さん、「YUI」さん登場予定作品です。
時を越え、再び出会った美里とあけみ。現在に戻った美里は、さらなる花虐へと誘われていく…。