放課後の向うがわⅡ-35

 あけみ先生は、手の平を上向けた。
 手の平は宙を滑るように伸び、川上先生の股間に吸いついた。

「どうされたい?」
「やめて……」
「ウソおっしゃい。
 こうされたいくせに」

 あけみ先生の手の平が、股縄を押しあげる。

「やっぱり湿ってる」
「うぅ」
「この手を動かしたら……。
 あなたは、生徒の目の前で浅ましい姿を晒すことになる。
 それは、自分が一番わかってるわよね」
「お願いだから……。
 やめて」
「じゃ、言いなさい。
 あの日。
 そう。
 先生が、この塔への扉をくぐった放課後。
 ここに、もう一人いた女性は誰なの?」
「し、知らないのよ」
「そんなわけないでしょ!」
「ほんとです。
 ほんとなの」
「あなた方は、知らない女の前で裸になるの?
 知らない女に縛られて、ヒーヒー言うの?
 そんなことが信じられるもんですか!
 ほら、言いなさい。
 動かしてあげるから」

 あけみ先生の手の平が、小刻みに動き始めた。

「あひぃ。
 やめてぇ」
「ほら、音まで立て始めた。
 早く言わないと……。
 白目剥いてイクところ、生徒に見られちゃうわよ。
 ほらほらほら」
「あか、か、か」

 あけみ先生の二の腕に、腱の筋が走った。
 手の平が反るほど、股縄が押しあげられてる。
 そしてその縄は、間違いなくクリを揉み潰してる。
 わたしは内腿を絞った。
 見てる方が切なくなりそうだった。

「言いなさいってば。
 言わないの?
 じゃ、やめちゃう」

 あけみ先生の手の平が、股間を外れた。

「あぁっ」

 川上先生の声は、手の平を失った嘆きのように聞こえた。

「どうしたの?
 眉根に皺なんか寄せちゃって。
 もっとしてほしいんでしょ?」

 川上先生はかぶりを振った。
 懸命に、何かを振り払おうとしてるように見えた。

「案外しぶといわね。
 そうだ、美里。
 カメラ。
 持ってきて、早く」

 わたしが入口脇の机から、カメラを持ち帰ると……。
 あけみ先生は、再び股縄を擦り始めてた。

「あぁぁ。
 止めて、止めてぇ」
「美里。
 カメラ、構えて」
「撮らないで!」
「なら言いなさい。
 あの日の女性は、誰なの?」
「ほんとに知らないの。
 ほんとよぉ。
 突然現れたの。
 鍵で閉ざされた塔の中に、突然」
「なるほど。
 ひょっとして、あなたと理事長がなさってるとき……。
 現れたのね。
 ふふ。
 顔見ればわかるわよ。
 そうか。
 最も無防備な状況で、不可解な力を見せられれば……。
 一瞬で、精神的に支配されたっておかしくない。
 もちろん、その人の持ってるカリスマ的な力が大きかったんだろうけど。
 そんなことが出来るのは、わたしが知ってる限り、ひとりだけだわ。
 その人は、何て名乗ったの?」

 川上先生は、かぶりを振った。

「ヒーヒー言ってて、聞き漏らしたんじゃないの?
 思い出しなさいよ。
 ほら」
「あひぃ。
 弄らないでぇ」
「ともみ!
 ともみって言ったんじゃないの!」
「あひあひあひ」
「あなたまさか、生徒の前でイクつもり?」
「ゆ、許して」
「誰がイカせるもんですか」

 あけみ先生が、手の平を外した。

「あぁ」

 川上先生が、四肢を跳ね上げる。
 全身で、イヤイヤをしてるように見えた。

「美里、この眼見てごらん。
 さっきと違うでしょ。
 トロンとしてきた。
 この人、トランス状態になりやすいタイプね。
 こういう人は、たやすく、他人にコントロールされるものよ。
 ともみさんに心を掴まれたら、ひとたまりもないわ」




 あけみ先生は、股縄から外した手の平を、わたしに開いて見せた。
 指は、電球の明かりを映してた。
 明らかに濡れてたってこと。
 わたしの顔を見て、にやりと笑うと……。
 先生の手の平は、踊りの仕草みたいに舞いながら、川上先生の元に帰った。
 でも、戻ったのは、股間じゃなかった。
 乳房。
 優雅に伸びてた指先が、その位置で猛禽の爪に変貌した。
 爪が、乳首を挟みこむ。

「大した女ね。
 こんな状況で気持よくなれるんだから。
 そういうのをね……。
 変態って云うのよ。
 変態さんは、気持ちいいのも好きなんでしょうけど……。
 ひょっとして、痛いのはもっとお好きかしら?
 こんなふうに!」

 乳首を摘んだまま、手の甲が反転した。

「い、痛いぃぃ」
「お目覚め?
 まだ、大事な話が済んでませんのよ」

 捻りあげられた乳輪には、渦巻きみたいな皺が走ってた。

「それじゃ、質問を続けます。
 うかつな先生は、あの人の名前も聞かなかったって言うわけよね。
 それじゃ……。
 なぜ、あなた方の元に現れたのか、そのくらい聞いたでしょ?」

 川上先生は、歪めた顔を横振った。

「言いなさい」

 あけみ先生が、さらに手を持ち上げた。
 乳房が、生クリームの絞り袋のように変形した。
 乳首は、千切れそうなほど伸びてる。

「ひぃぃぃ。
 止めて止めて止めて。
 ほんとに知らないの。
 ほんとです!」
「ウソおっしゃい。
 言いなさいよ。
 ともみさんが、あなた方の元に現れた訳を。
 どうして?
 どうして、わたしのところじゃないの?
 どうして、あなたたちなの?
 言いなさいって!」
「わひぃぃぃ。
 乳首が乳首が、千切れるぅぅぅ」
「乳首くらい、何でもないでしょ!
 心が千切れるよりは!」
「あぶぶぶぶ」

 川上先生は、瞳を迫り上がらせ、口の端から泡を噴き始めた。

「ゆうちゃん!
 ゆうちゃん、大丈夫!」

 理事長の声だった。
 芋虫みたいに縛られたまま、懸命に顔を持ちあげてる。

「あら。
 あちらの方は、すっかり素に戻ってるようね。
 そうか。
 バイブ、止めてきちゃったもんね」
「岩城先生、お願いです。
 川上先生を下ろしてあげて。
 ほんとなのよ。
 ほんとにわたしたち、何も知らないの。
 あの人がどこの誰かも知らない。
 あの人は突然現れて、わたしたちに君臨した。
 名前も名乗らず、理由も告げず……。
 一瞬にして、わたしたちの女王になったの」
「そんなたわごと、誰が信じられるものですか。
 素面になると、ますます嘘つきになるようね。
 泡を噴きながらじゃないと、ほんとのことが言えないのかしら?
 美里、スイッチ入れてきて。
 バイブのスイッチよ。
 早く!」

 有無を言わさない眼光だった。
 あけみ先生は、理事長の方に顎を振った。
 わたしは、命じられた犬みたいに、理事長の足元に身を移した。
 電池ボックスを拾い上げる。

「お願い。
 美里さん、お願い。
 動かさないで。
 それを、動かされると……。
 動かされると……。
 わたし、ダメになっちゃう」
「美里!
 何もたもたしてんの。
 早くしなさい!
 スイッチ、わかるでしょ?
 そう。
 それをスライドさせれば、無断階に強さが調節できるわ。
 もちろん、目一杯まで動かしてちょうだい」

 駆動音が立ち上がった。
 おもちゃのロボットが動き出したみたいだった。
 音は、さっきよりも高かった。
 スライドを、最大限まで引き上げたから。

「あうぅ」

 理事長の顎が天を向いた。
 背中が持ちあがり、上体がアーチを描く。

「ふふ。
 いい反応ですこと。
 美里、クリも弄ってあげて。
 どうしたの?
 出来ない?
 ま、いいか。
 その状態でクリ揉まれたら、あっという間にイッちゃうもんね。
 じゃ、バイブだけ、抜けないように持っててよ」

 理事長の腹筋に渓谷が走り、腰が浮きあがった。
 クリトリスが、包皮から覗いてた。
 怒張してるのが、はっきりとわかった。
 これを、皮の上から揉み潰したら、どんなにいいか……。
 わたしは、立て膝をした脚の付根を内側に絞った。
 お汁が染み出すのがわかった。

「ほーら。
 川上先生。
 理事長、また勝手に気持ちよくなってますよ。
 どう?
 うらやましい?
 でも、残念だわ。
 そんな縄のおフンドシ締めてたら……。
 バイブなんか、入れられませんもの。
 今度やってあげますね。
 どこでしてあげようか?
 そうだ。
 保健の授業の続きでやりましょう」



本作品のモデルの掲載原稿は以下にて公開中です。
「川上ゆう」 「結」 「岩城あけみ」

《説明》
杉浦則夫の作品からインスピレーションされ作られた文章作品で、長編連載小説のご投稿がありました。(投稿者 Mikiko様)
本作品は毎週日曜日に公開される予定となっておりますので、どうぞお楽しみに。
前作を凌ぐ淫靡と過酷な百合緊縛!「川上ゆう」さん、「YUI」さん登場予定作品です。
時を越え、再び出会った美里とあけみ。現在に戻った美里は、さらなる花虐へと誘われていく…。


放課後の向うがわⅡ-34

 あけみ先生の手首が、ゆっくりと前後し始めた。
 さっきまでの乱暴な所作じゃ無かった。
 でも、優しさとも違う。
 そう。
 獲物を嬲るような、無慈悲な悦びを孕んでた。
 でも、理事長の反応は、明らかにさっきまでとは違ってきた。

「はぁぁぁ」
「まぁ、いいお声。
 ほら、ここはいかが?」
「く、く」

 理事長は、電球の明かりから逃れるように、顔を倒した。
 あけみ先生の視線から、自らの表情を隠そうとしてるみたいだった。
 理事長の顔は、わたしの方を向いてたから……。
 電球の作る影が半分覆ってたけど、わたしにはその表情がよく見えた。
 口が開き、白い歯が零れてる。
 視線が、怯えたように揺れてた。
 それは、あけみ先生への怖れではなく……。
 自らの内奥へのおののきに見えた。


「どうしたの?
 ほら。
 いいんでしょ。
 これが。
 これよね」
「はぅぅ」

 理事長の顎が上向いた。
 電球の明かりに、表情を晒した。
 下腹を絞りあげられるように感じた。
 理事長は、それまでのわたしの人生で、まだ見たことの無い女性の表情をしてた。
 無防備に身を任せながら、内奥の悦楽を貪ってる顔。
 今なら、そうわかるけど……。
 そのときは、見てはいけない顔に思え、その場から逃げ出したかった。
 わたしの気配に、あけみ先生は気づいたようだった。

「美里。
 よく見なさい。
 これが、雌の顔よ。
 どんな偉い学者でも、教育者でも、閨ではこの顔になるの。


 理事長?
 いかがですか?
 何とか言ったらどうなの。
 人にこれだけサービスさせておいて。
 ほら、言ってごらん。
 まんこにバイブ入れられて、気持ちいいですって」

「あぅぅ」
「オットセイじゃ無いんだからさ。
 ちゃんとしゃべりなさいよ。
 言う事聞かないんなら……。
 今の理事長に一番つらいお仕置きをしますよ。
 どうなの?
 そう。
 いいのね。
 それじゃ……。
 スイッチ、オフ」

 バイブの音が消え、理事会室に静寂が戻った。
 裸電球のフィラメントが灼ける、儚い音まで聞こえそうだった。
 あけみ先生は口角を上げ、理事長の顔を見下ろしてる。
 舌なめずりする蛇のようだった。

「あぁ」

 理事長の表情が崩れた。
 あけみ先生の口角が、さらに切れあがった。

「どうしたの?」

 理事長は、唇を噛んでた。

「うぅ」

 理事長の口から嗚咽が漏れると、腹筋が波立った。
 不自由な姿勢のまま、腰が蠢いてた。
 下腹部が、バイブを慕うように持ちあがる。
 あけみ先生は、微笑みを貼りつけたまま、無慈悲に腕を引いた。

「イヤぁ」
「何がイヤなの?
 言いなさいって」

 理事長は、壊れた扇風機みたいに顔を横振った。
 髪の毛が、左右の畳を叩く。
 腰が前後に動き始めた。

「どうしてほしいの?
 もう止めてほしい?」

 理事長の首が、いっそう強く振られた。

「じゃぁ、続けてほしいの?
 もう一度、スイッチを入れてほしい?」

 理事長の首が持ちあがった。
 自らの股間を覗きこむように、首が大きく縦に振られた。

「そう。
 それじゃ、ちょっとだけサービス」

 バイブの駆動音が立った。

「あひゃぁ」

 理事長が奇声をあげた。
 頭が再び落ち、髪がモップみたいに畳を掃き始める。

「はい、おしまい」

 駆動音が消えた。

「いやいやいやぁぁぁぁぁぁぁ」

 理事長は、赤ん坊のように泣きじゃくった。
 その顔を、あけみ先生が覗きこむ。
 口角は上がったままだったけど、目は笑ってなかった。
 まるで、微笑みの仮面を被ってるみたい。

「動かしてほしい?」

 理事長の首が、がっくがっくと縦振られた。

「それじゃ、言いなさい。
 こないだ、ここに来てた女性は誰なの?
 この部屋で、あなたに蝋燭垂らしてた女性よ。
 言わないと、ずっと生殺しよ」
「知らない。
 知らないのよ」
「ウソおっしゃい。
 知らない人の前で素っ裸になって、蝋燭垂らされましたって?
 そんなバカな話、通じると思ってるの?」
「ほ、ほんとなの。
 お姉さまは、突然現れるのよ。
 この部屋にだけ」
「お姉さま、ね。
 あの人、いくつ?」
「知らないわ」
「確かに、理事長と同じくらいに見えましたわね。
 でもあの人、わたしたちより、ずっと年下なんですのよ。
 今ごろはまだ、どこかの中学生かな?
 ふふ。
 何言ってるか、わからない?
 そんな顔ね。
 ま、説明は止めとくわ。
 しゃべってると、バカバカしくなるような話だから。
 でも、名前くらい名乗りませんでした?」
「わからない……」
「ともみ。
 ともみって言ったんじゃないの?
 ともみよ!」

「ほんとに知らないの」
「うかつな女ね。
 あなたは、名前も知らない女の前でヨガるわけ?
 とんでもない変態だわ。
 そうそう。
 変態はもう一人いたんだった」

 あけみ先生は、バイブを置き去りにしたまま起ちあがった。

「あぁ。
 動かして。
 これ、動かして」
「はしたない女ね。
 おあずけよ」

 投げつけるように言い捨て、あけみ先生は理事長に背を向けた。
 向かった先は、川上先生だった。

「さっきから、バカに静かね。
 どういうつもり?」

 あけみ先生は、川上先生の顔を覗きこんだ。
 川上先生は、眉根に皺を寄せ、顔を歪めた。

「ははぁ。
 理事長のヤラシイ顔見てて、気分出しちゃったのね。
 あなたも弄ってほしいの?」

 川上先生は、目を伏せたまま顔を横振った。

「ウソおっしゃい。
 こーんなに乳首、起ててるくせに。
 美里、こっち来てごらん。
 ほら見て、この乳首。
 起ってるわよね?」

 川上先生の平常時の乳首なんて、もちろん見たことないから……。
 今の乳首が、普段と違ってるかどうかはわからない。
 でも、これが通常の乳首だったら、ブラに擦れたりして大変なんじゃないか……。
 そう思わせるほど、乳首は突き出て見えた。

「恥ずかしくありません?
 生徒の前で、乳首なんか起てて。
 それでも教育者なの?」
「た、起ててません」
「まーだ、そんなこと言うのかしら。
 とんでもない嘘つき女だわ。
 こんなになってるくせに。
 弄ってほしいんでしょ?」

 川上先生は、連獅子のように髪を打ち振った。

「ちょっとだけ触ってあげる」

 あけみ先生の片手が上がった。
 でも、その手は、乳首を摘む形では無かった。
 影絵の狐を作る形に似てるけど、少し違う。
 親指の腹に、丸まった中指の爪が押さえられてる。
 残りの指は、宙に向けてピンと立ってる。
 そう。
 そういう遊びがある。
 矯めた中指を開放し、額を弾くやつ。
 いわゆる、デコピンね。
 あけみ先生の作る狐が、川上先生の乳房に近づいた。

「悪い子にお仕置き。
 そーれ。
 ピーン」
「あひぃっ」

 川上先生は、顔を仰け反らせた。
 白いノド首が、石筍のように立ちあがる。


「すっごい感度。
 ヤラシイ女」
「言わないで……」
「じゃ、自分で言いなさい。
 わたしは、生徒の前で乳首を起てる、イヤらしい教師ですって」
「……」
「言ったら、弄ってあげるわよ」
「言えません」
「素直じゃない口ね。
 身体は、こーんなに素直なのに。
 ほら、見てごらん、美里。
 股縄の隙間から、お汁、漏らしてる」
「ウソ!
 ウソよ」
「ウソじゃないもんねー。
 美里ちゃん、よーく見て。
 絶対これ、本気汁よね」

 確かに……。
 飴色の縄が、そこだけ色を濃くしてるように見えた。
 わたしは、思わず顔を近づけた。

「見ないでぇ」
「よく見なさい、美里。
 教師の流す、本気汁よ」
「うぅ」
「あー、泣いちゃった。
 かわいそー。
 誰に苛められたの?
 まさか、わたし?
 ふふ。
 じゃ、ちょっとだけ慰めてあげるね」


本作品のモデルの掲載原稿は以下にて公開中です。
「川上ゆう」 「結」 「岩城あけみ」

《説明》
杉浦則夫の作品からインスピレーションされ作られた文章作品で、長編連載小説のご投稿がありました。(投稿者 Mikiko様)
本作品は毎週日曜日に公開される予定となっておりますので、どうぞお楽しみに。
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時を越え、再び出会った美里とあけみ。現在に戻った美里は、さらなる花虐へと誘われていく…。


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