本能=性欲が物欲に負けた日

緊縛新聞をご覧の皆様、お久しぶりです。
気楽に読んでいただけそうな思い出話を書かせていただきます。

私がSMセレクト誌を購入し始めた頃は、まだ学生だったのでお金がなく、年2回発行されていた写真集「秘蔵版緊縛フォト」まで買うことは出来ませんでした。
東京の古書店で大金はたいて購入した、2代目の76年7月号の「秘蔵版緊縛フォト」を見るたびに思い出す、忘れられない事件があります。
まだ20代半ばゆえ、溜まってくると悶々としてきて落ち着きがなくなり、そわそわする日々ばかりの年頃。
ついにはどうにも我慢できなくなり、新しいネタ(もちろん上質の緊縛写真)が欲しくて欲しくて、どうしようもなくなってしまった暑い夏の日でした。
狙いは、その頃住んでいた実家から遠い場所にあった、人のよさそうなおじさんが一人でやっていた古本屋。
そこに買いそびれた、その頃お気に入りだったモデルさんで、後に日活ロマンポルノの女優さんとして活躍することになる水島美奈子さんが載っている、76年7月号の「秘蔵版緊縛フォト」があるのを知っていたので、意を決して買いに行くことにしました。
小説SMセレクト75年4月号グラビア「羞恥に泣く19歳」に月原篠名で、SMセレクト75年12月号グラビア「期末試験」に本田綾子名で掲載されていた、女学生姿で縛られた姿がとても印象的な美人でした。
買いに行く道々では、セレクト誌にあった逆海老足吊りの別カットがあったら、そのページでフィニッシュしよう、などと実用的なことを考えながら、下半身の一部は硬度120パーセント、ひょっとしたらよだれすらたらしていたかもしれません。
他にもSM誌や写真集があったら、買えるだけ買ってやろうとかなりのお金も用意、それほどに買う気満々、そして残液感ゼロの一気放出を目標に出す気も満々で、鼻息荒く店の戸を開けました。
するとそれまではなかった、見慣れないレコード棚にまず目がいったのです。
その店は以前から本のほかに、レコードも置いてあってたのは知っていました。
しかし、店の隅に無造作に平積みにしてあって、レコード自体も私には興味のない、演歌や歌謡曲ばかりだったので、まともに見ることもなかったのでした。
一応ちょっとのぞいてみようと、洋楽のシングルコーナーを見て驚きました。
いきなり当時、レコード収集家としてのキャリアもスタートさせていた、私が捜し求めていた、ずっと欲しかった1枚のシングルが出てきました。
しかも200円と実に安い。
当時すでにプレミアがつき、マニアが血眼になって探しているレコードが、定価の半分でいいやと、適当に決めたとしか思えない安値で目の前に。
これはきちんと全部見たほうがいいと、汗だくになりながらも、はしからはしまでまでチェックを開始。
正直この段階で、あれほど愛おしかった、水島さんの緊縛姿はすでに脳裏から消えていました。
当時大好ファンだったフランスの美人女性歌手のレコードは、はじめて見る初期のものから後期のものまで10数枚ほどもあり、充実の品揃えに大感激。
さらに、これだけシングルを買っていた人なら、必ずLPも買っているに違いないと勘を働かせ、今度はLPの棚をチェック。
我ながらいい勘してました、大事に聞いていたと思われる、きれいなお宝LPも大量に発見。
なんだかんだで、結局シングルを50枚近く、LPも30枚ほどを買うはめになり、持参したお金は全てレコード代に消えてしまいました。
結局、当初の目的だった写真集もSM誌も1冊も買わずじまい。
何よりもレコードを探すことに夢中になりすぎ、店に入ってきた時の勢いはどこへやら、あれほどいきり立っていたものは縮こまってしょぼくれてしまい、悶々としていたやるせない思いまできれいに消え去り、お宝レコードを大量にゲットできた満足感で、すっかりすっきりと上機嫌になってしまったのでした。
意気込んで買いに来たのに、目的の写真集とSM誌の代わりに、大量のレコードを買って帰る羽目になったなんて、全く思っても見なかった結果で、お宝中古レコードの魅力が、SM誌や写真集への欲望に勝ってしまった、ある意味記念すべき日となりました。
実に恐るべきは、人様のものに対する底知れぬ欲の深さ。
まさしく生涯唯一の、本能=性欲(あるいは緊縛写真に対する情熱)が物欲に負けた日でした。
なお、その3日後、一度は収まったと思われた性欲は当然復活、今度は数冊のSM誌や写真集とともに、76年7月号の「秘蔵版緊縛フォト」も購入、帰宅後やっと残液感ゼロ状態といえるほどにすっきり出来たことは言うまでもありません。

キャリア35年様 投稿文