理事長は、歯を食いしばった表情のまま、後退った。
半身に折った背中越しに、お尻が迫り上がった。
「ゆう。
ゆう。
見て」
「こんなに近くで見てる」
「後ろ。
後ろから見て。
ゆいのおまんこに、肉棒が突き刺さるとこを……。
見てぇぇぇぇぇ」
理事長は、きりりと眉を上げ……。
そのまま後ろに、身を煽った。
眼球が、引き上げられた深海魚みたいに膨れた。
「あぎゃぁ」
表情が、弾けるように崩れた。
首をうねらせ、空中を舐め回す。
「あぐぅ。
ゆうちゃん……。
見てる?」
「……」
「言って。
どうなってるか言って」
「奥まで刺さってる」
「見える?」
「お尻に隠れて、よく見えない」
理事長は顔を持ちあげ、再び表情を整えた。
力んだ眉が、阿修羅像みたいだった。
「はぅ」
理事長は、深淵を覗くように、身を前傾させた。
「見えた。
見えたよ」
「言って。
どうなってるか、言って」
「咥えこんでる」
「やらしい?」
「ゆいのおまんこ、動いてる。
焼き網に載せられたアワビみたい」
「じっとしてると、肉棒を呑みこもうとするの」
「あ、お汁が零れた」
「あぁ……。
焦れったい。
がんがん突いて欲しいのに」
「無理よ。
柱にそんなこと言っても」
「それなら、わたしが動くわ。
こうやって。
はぅっ」
理事長が、身を畳んだまま後ろに跳ねた。
外敵から逃れるエビのようだった。
尻が柱を叩き、鈍い音を立てた。
「そんなにしたら、子宮が破けちゃう」
「奥がいいの。
いいのぉぉ」
理事長は再び前傾すると、すぐさま身を煽った。
柱が揺れた。
「はぅぅ」
理事長は、たちまち往復するピストン機関となった。
尻が、高速で柱を打ち始める。
柱は、アフリカの打楽器のように鳴り始めた。
「もう、速すぎて見えない」
「前に、前に来て。
おまんこ、見せて」
川上先生が、理事長の前に回った。
理事長の顔が、川上先生の身体に隠れる。
この状態なら、わたしへの視線は来ない。
鏡の裏から片目で覗いてたわたしは、鏡から顔を出した。
川上先生の肉付きのいい後ろ姿が、目の前にあった。
みっしりと、隙間も見せず揃った太腿。
曲線を描いて張り出したお尻。
そして、腰骨の上で翳を孕む、天使のえくぼ。
妄想したとおりの裸だった。
「はぅっ。
はぅっ。
ゆうちゃん……。
開いて。
開いて見せて」
川上先生の太腿が別れた。
両膝を外側に割り、腰を落とす。
いわゆる、がに股の姿勢。
尻たぶが、羽二重を押したように窪んだ。
「おまんこも開いて」
「できないわ。
縛られてるんですもの」
「力を入れて。
ぐっと。
そう。
見えた。
見えたわ。
ゆうちゃんのハラワタ」
「あぁぁ。
弄りたい。
弄りたいよぉ」
川上先生は、がに股のまま身をくねらせた。
「そんな格好で、オナニーしたいの?」
「したい……」
「したことあるのね」
「……」
「どこで?」
「学校の、おトイレ」
「まぁ、はしたない」
「だって、理事長先生……。
じゃなくて、ゆいとの夜を考えたら……。
待ちきれなかったんですもの」
「可愛いわぁ。
おトイレで、立ったままやったのね」
「思い切り」
「声が出ちゃうでしょうに」
「パンティを咥えて」
「ショーツ脱いじゃってたの?」
「全部脱いでた」
「全裸で?
変態ね」
「あぁ。
言って。
もっと言って」
「変態!
ゆうの変態!」
「あひぃ」
「でも、ゆうだけじゃないわ。
ゆいも変態。
だから2人は、変態姉妹。
畜生の姉妹よ」
「あぁぁぁ」
川上先生は、夜の桃みたいに重そうなお尻を、ゆらゆらと揺らし始めた。
“天使のえくぼ”が翳を孕み、顔のように見えた。
「もうたまらないのね。
もっと近くに来て。
わたしが、お口でしてあげる」
川上先生が、尻たぶを窪ませながら、にじり寄る。
その尻たぶが跳ねた。
「わひぃ」
ピストンを止めようとしない理事長の顔が、川上先生の股間を叩いたのだ。
川上先生は、一瞬砕けかけた腰を立て直すと、理事長の顔を迎えに行った。
理事長の顔が繰り出されるのに合わせ、腰を煽る。
わたしからは見えなかったけど……。
理事長の顔と川上先生の股間が、空中で衝突してるのが、はっきりとわかった。
理事長のピストンが速まった。
纏めてた髪が解けた。
理事長は、散らし髪を振り立てながら、川上先生の股間を抉る。
川上先生の腰も、輪郭を消し始めた。
「イ、イク。
イク」
川上先生が、声を裏返したそのときだった。
「何してるの、あんたたち!」
叩きつけるような声が、間近から聞こえた。
わたしは、新たな人物の登場に動転し、その場に身を縮めるしかなかった。
その人物は、まさに忽然と現れたとしか思えなかった。
いくら2人の痴態に見入ってたとしても、近づく靴音くらいは聞こえたっていいはずだ。
身を縮めたわたしに、初めてその靴音が聞こえた。
「おとなしく待ってなさいって、言ったでしょ」
靴音は少し遠ざかり、その人が舞台中央に進んだのがわかった。
「あぁ」
川上先生の、嘆きに似た裏声と共に、重そうな響きが床を伝わった。
「はしたない子ね。
腰抜かしたりして。
呆れ返ったわ。
人の顔使ってオナニーするなんて。
それでも教師なの。
あらあら。
もう、何を言っても聞こえないみたいね。
白目剥いちゃって」
再び、靴音が響いた。
「でも、こっちはもっと悪いわね。
仮にも理事長でしょ。
学校法人の。
それが、柱に括りつけたディルドゥを、下の口に咥えこむなんて……。
はしたないにも程があるわ。
上のお口で舐めてなさいって言ったでしょ。
まだ、咥えこんでる気?
抜きなさいって」
床を、柔らかい音が打った。
理事長の身体が崩れたに違いない。
「悪い子たちには……。
お仕置きが必要ね」
靴音が微かに近づいたけど、逆に声は遠くなった。
その人は、こちらに背を向けたに違いない。
音楽やってると、そういう音の気配が感じられるのよ。
ここまで来て、わたしは我慢が出来なくなった。
見届けたかった。
学園の理事長と教師を、自在に蹂躙できるその人物を。
わたしは、伏せていた身から、ヘビのように首を持ちあげた。
もし見つかったとしても、縛られてる床の2人は戦力にならない。
それなら、女同士の1対1だ。
声の発せられる高さからして、それほど大柄な女性じゃない。
逃げるチャンスは、十分あるはず。
そう自分に言い聞かせながら、鏡の裏から顔を覗かせた。
「呆れた人たち。
2人して気をやっちゃうなんて」
その人は、仰向いた理事長の枕元に腰を下ろし、顔を覗きこんでた。
理事長は、白目こそ剥いてなかったけど……。
視線はあらぬ方を指してて、意識の焦点は結ばれてないようだった。
「ほんとに気持ちよさそうにイッちゃって。
どうなの、この顔」
その人の手が、理事長の顎を掬い取った。
理事長の顔が横を向き、視線がこちらに流れた。
思わず、首を引っこめそうになったけど……。
その両目が何も見てないことは、すぐに解った。
「死に顔みたい。
こんな顔で死ねたら、幸せよね。
魂を失った抜け殻って、どうしてこんなに美しいのかしら。
このまま、わたしの魂が身投げしたら……。
この美しい身体に入れるんじゃないかしら。
なんてね。
いくらわたしでも、そこまでの能力は無いわ。
ほら、いつまで寝てるの!
起きなさい」
その人は、理事長を邪険に突き放し、その場に起ちあがった。
「まだ起きないつもり?
もう気持ちのいい時間は終わりよ。
先にいい目を見ちゃった子には……。
たっぷりと痛みを味わってもらうわ。
どうしてやろうかしら」
その人は、顎を指先で支え、思案を巡らせてるようだった。
「あら」
軽やかにヒールを響かせながら、その人は部屋の隅に屈みこんだ。
再び身を起こすと、手には細長い棒のようなものを持ってた。
本作品のモデルの掲載原稿は以下にて公開中です。
「川上ゆう」 「結」 「岩城あけみ」
《説明》
杉浦則夫の作品からインスピレーションされ作られた文章作品で、長編連載小説のご投稿がありました。(投稿者 Mikiko様)
本作品は毎週日曜日に公開される予定となっておりますので、どうぞお楽しみに。
前作を凌ぐ淫靡と過酷な百合緊縛!「川上ゆう」さん、「YUI」さん登場予定作品です。
時を越え、再び出会った美里とあけみ。現在に戻った美里は、さらなる花虐へと誘われていく…。